416列車 ガス抜き
「・・・。」
お父さんとお母さんはソファーの上で寝転がっているウチを見ている。休みの日になると東海道本線か東海道新幹線の沿線に言って電車の写真を撮りに行っているし、外に出ないでもジャーナルか昔のアルバムを引っ張り出してきて、撮った写真を眺めているか勉強をしているかだからなぁ・・・。何もしていないウチって言うのは珍しいかもしれないけどそんなに物珍しそうに見なくてもなぁ・・・。
「何かあったのかな。」
お父さんがお母さんにそう聞くと。
「さぁね。テストで悪い点数取っちゃったとか。」
と答える。会話筒抜けなんだよなぁ・・・。しかも、当たってるし・・・。
「まさか。」
「ナガシィもおんなじでしょ。応用が得意じゃ無いのは。」
うっ・・・。
「僕と光は違うでしょ。読解でもちゃんと点数取れてるし。」
「じゃあ、光の読解力はまだ学校レベルって事だったりして。」
当たっているのがなんか腹立たしい・・・。お母さん、そんなにズバズバ言わないで・・・っていっても聞こえないかぁ。声に出してるわけじゃ無いから。
「読解力ってそんなに変わるものじゃ無いと思うんだけどなぁ・・・。」
いや、読解力って結構テストにより変わると思うんだよね。学校で言う国語のテストはただの復習。塾のテストは初めて読む文章から読み解くわけだから、学校のテストと塾の統一テストを同列で考えることは出来ないでしょう。
「19点とったことあるくせに。」
「ああ・・・それ言わないで・・・。」
100点満点だったらかなり恥ずかしいよなぁ・・・。50点満点なら100点換算したら38・・・。あっどちらにしてもなんともいえない点かぁ。ってそんなことはどうでもいい・・・。もうここでゆっくりするのやめようかな。
「あれ。光どこか行くの。」
「うん、ちょっと野洲川に行ってくる。」
「新幹線なら大希おじさんに会うかもね。いってらっしゃい。」
お母さんがそういうのを聞いて、ウチは家の外に出た。
ふらっと歩いていると亜美とよく落ち合っていた公園まで歩いてきていた。この公園には亜美からタブレットをもらってから来ることは無かったなぁ。ウチにも思うところがあったのかな・・・。何も考えずに出歩いてたつもりだけど・・・。
「光君。」
呼ばれた方を見るとモズがいた。
「光君にしては珍しいね。鉄道関係ない公園にいるって。」
「そんなに珍しいかな。」
「珍しいわよ。」
立って話すのも何だし、二人でベンチに腰掛けた。こうやってると公園にいる他の人は恋人同士って思うんだろうなぁ・・・。
「光君もガス抜き。」
モズはそう聞いてきた。
「えっ。」
「私も勉強疲れたら、こうやって外で歩くの。毎日勉強してるといろいろ疲れるからさ。」
「そうなんだ。ウチ、モズってずっと勉強してるもんだと思ってた。」
「はっ。光君の中でのイメージってそんなガリ勉なの。やめて。」
「・・・悪かったよ。」
「・・・光君、私最近の統一テスト判定悪かったのよ。前よりも判定悪かったからちょっとへこんでるんだ。」
そんな雰囲気どこにも無いのに・・・。
「光君はどうだった。」
「ウチも判定は悪かった。悪すぎたよ・・・。」
「そうなんだ。まぁ、そんなこともあるわよ。私たちの受験はまだまだ先。それまでにゆっくり実力を付けていけばいいんだから。」
「わかってるよ。でも・・・。」
「光君、考えすぎ。テストの実力なんてほんの数日で着くようなものじゃ無いんだから。ゆっくり実力を付けて、自信に変えていけばいいんだから。」
ウチが何か言おうとするとモズはウチにデコピンした。
「光君、焦りすぎ。焦ったら実力なんていつまで経っても付いてこないわよ。」
「・・・そうだね・・・。」
「光君、私みたいに時々外に行ってみたら。ほら、光君なら電車で行ったこと無いところに行ってみるとか。」
モズはそう言ったけどすぐに、
「あっ、光君京阪神は完乗してるんだっけ。」
と言った。
「いいよ。また乗ったら新しい発見あるかもしれないから。」
操作。ウチは気づかないうちに焦っていたのかも。モズの言うとおりこれからはゆっくり実力を付けて自信に変える。それを実践していくだけだ。




