411列車 図書室
「・・・。」
俺の前には真っ白なノートが広がっていた。さっき勉強を初めて見たが、何も進まない。未だにノートに文字がないのはそのためだ。
「おい。」
小さい声で俺を呼ぶ声がした。ふと顔を上げると中百舌鳥さんだ。
「どうしたの。全然進んでないみたいだけど。」
そうだよなぁ・・・。普段なら「わかんねぇなぁ。」とか言いながらも進めているところだからなぁ。進まないのが気になるんだろう。中百舌鳥さんにはそこまで見られる心の余裕でもあるんだろう。俺には全然そんなものはないが。
「ああ。」
「集中できないなら、リフレッシュしたら。私だって毎日ここに来るわけじゃないし。進まないときに無理に詰め込んでも、身につくことはないわよ。」
俺のこと心配していってくれているんだろう。でも、俺の心の中にあるもやもやはリフレッシュぐらいじゃあ取れることはないだろうな。
「ありがとう。」
「・・・。」
「中百舌鳥さんって東京の高校とか行こうって思ってる。」
そう口が開いていた。
「えっ、東京。さすがに東京には行けないよ。」
「だよなぁ・・・。」
「何々。長宗我部君は東京の高校行こうと思い始めたって事。だとしたら、すごい。」
「すごくないよ。」
思わず大きい声で言ってしまった。図書室の中にいた上級生の目線が一斉に自分に集まった気がした。中には目が「うるさい」「出てけ」と言っている。それが自分の耳に入ってくる。
「悪い。俺今日は帰るわ。」
もう図書室に入れないなぁ。そう思うと自分から荷物をまとめて、図書室を出ていた。
図書室から昇降口に向かって歩いていると前から、光が歩いてきた。少し前の地面を見つめながらほとんど前を向かずに歩く独特の歩行スタイルだ。分かりやすい。ただ、あれで人にぶつからないのだからそれはある意味能力かもしれない。
光は俺には気づかなかったみたいだ。声ぐらいかけてもよかったかなぁ・・・。そんなことを思っていたら、光は図書室に消えていった。
図書室に入ると、モズが座っているのに気づいた。別にモズに用はないけど、目が合ってしまったから無視するのも何だなぁ・・・。
「モズも勉強に来てたんだ。」
そう言い、モズが座っている席を一つ空けて座った。
「さっき長宗我部君とすれ違わなかった。」
「えっ、そうなの。今キラはいないのか。」
「うん、さっきちょっとね。」
「・・・。」
何があったのかは聞かないことにしたが・・・、
「さっき、長宗我部君のこと怒らせちゃったみたいで。」
「何したんだよ。モズが人怒らせるような事しないと思うんだけどなぁ・・・。」
「とにかく、怒らせたみたいなの。」
「分かったよ。キラに会ったら悪いことしたなぁって言ってたって言っとくから。」
「ごめんね。ありがとう。」
ウチはその声を聞いたら、ノートと筆箱を机に上に出した。さてと、
「光君も勉強頑張るのね。」
「ああ、ウチは東京にある高校行こうと思ってるからさ。」
「・・・そうなんだ。」
「ウチ、東京の高校しか行く気しかないから。だから、絶対受かるようにしなきゃね。」
「・・・そうなのね。東京はいろいろ大変だからねぇ・・・。」
その認識はモズも変わらないか。そうならないためにもウチも頑張らなきゃな。




