409列車 新快速の車内
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
「・・・。」
亜美の家を出てからウチらは新快速の車内で黙り込んでいた。普段、新快速に乗るときは前面展望を見るため、進行方向の先頭車に乗っているものだが、今回ばかりはその気にはならなかった。
「崇城さんってすごいんだな。」
キラがそう言ったのが初めての会話でもあった。
「ああ。すごかったな・・・。」
ウチはそう答えただけだ。ウチが持っている切符のほとんどが「ひかり」の普通車指定席なのに。
「北海道新幹線もう15回以上乗ってるんだよなぁ・・・。羨ましいよなぁ・・・。」
「・・・。」
内訳は新青森~新函館北斗の往復が12回。新青森~札幌の往復が4回。北海道新幹線が札幌まで伸びてもうそれだけ行っていた。ああ、全部大阪からの往復切符だったなぁ・・・。もうそこまで行くと羨ましいの域を超えているように思えるんだよなぁ・・・。ってそんなことは今関係ない。
「ていうよりも、高校の話されちゃったね。」
「あっ・・・。ああ。いいだろう。まだ中2にすらなってないんだからさ。」
キラの言うことも分からないわけじゃない。
「確かになってないけどさ。亜美の言ってた高校って東京のでしょ。中3の進路決めるときに突然言われても親がどうしようも出来ないと思うんだよなぁ。」
「言うこと違うなぁ・・・。って岩槻行きたいって思ってるって事。」
キラは驚いている。
「行けるんならね。」
「・・・いけるんならね。」
「学力足りるかなぁ・・・。」
(かなり行く気だな・・・。)
「・・・キラは行く気はしないの。亜美も言ってたけど、元々鉄道高校だったって。」
キラはちょっと考えてから、
「あの、そりゃ確かにいい話だよ。でも、東京なんだぜ。」
「東京なんだよなぁ。」
「それに、俺まだ進学とかよく考えてないんだよ。光だってそうだろう。」
「そうだな・・・。真剣にはまだね・・・。」
ウチはそう答える。
(東京かぁ・・・。)
ウチは心の中で言った。一番の問題はそれなんだよなぁ・・・。あっ・・・。
新快速は岸辺を通過した。発車後すぐの321系を高速で追い抜いているとき、ウチは思い出したのだ。




