408列車 驚くことばっか
ウチはキラとともに大阪駅に居た。守山からは新快速でだいたい1時間ぐらいで行ける距離だ。
さて、なぜ大阪に来たのかというとまた亜美に呼ばれたからだ。しかも、今度は武田尾に行くとかそういう用事ではなくて、亜美の家に呼ばれているからだ。しかし、亜美の家がどこなのかは聞かされていない。そのため、大阪で亜美と落ち合うのだ。
「光ちゃん、長宗我部君。こっち、こっち。」
その声がする方を見れば、亜美が居た。わざわざ入場券で入ってホームまで迎えに来ている。
そんな亜美について行き、亜美の家へと向かった。
「・・・。」
家に着くなる、その大きさに圧倒される。ウチの家よりもはるかに大きいのは明らかだが・・・。亜美ってこんな家に住んでいるのか・・・。
「ごめん。びっくりした。まぁ、私も光ちゃんの家見たときはびっくりしたからお互い様ってことにしといて。」
そう言って、家の中へと入っていった。
「どうする、光。」
「どうするって、入らなきゃ仕方ないでしょ。」
とは言ったものの、入るのがだんだん怖くなってくる。おそるおそる足を家の中に踏み入れる。
「二人して、何してるの。変な気起こさないでくれるかしら。何もないし安心して。」
そう言われても、この巨大な家を見せられるとなぁ・・・。
家の中に入っても驚かされる。
「お待ちしておりました。永島様。長宗我部様。」
「あっ、ありがとうございます。」
二人して完全に固まってるなぁ・・・。
「ここが、私の部屋。どうぞ、中に入って。」
そう言い、部屋に通された。中はあまり女の子らしい部屋じゃない。一目見た感想はそれだ。智萌の部屋はイケメン俳優のポスターとかぬいぐるみとかがあったりするのだが、亜美の部屋には一つのポスターもぬいぐるみもない。その代わりに、額縁に入る鉄道の写真がたくさん飾ってある。「青の交響曲」、「TWILIGHT EXPRESS瑞風」、「ななつ星」、「TRAIN SUITE四季島」。有名な列車の写真がたくさんだ。ただ、飾ってある写真の中に新幹線は500系しか無い。それはそれで意外だ。
「どう。全部私が撮った写真って言いたいところだけど、これは全部さっきの召使いが撮ったものよ。」
へぇ、写真の技術じゃかなわないなぁ。
「あっ、崇城さんって切符取ってたりする。」
キラがそう聞いた。
「持ってるわよ。見る。」
「見たい。是非。」
「別に見たいなら見たいだけでいいわよ。私が大きい家住んでるからって変に気を遣ってくれなくてもいいから。それされると私の方が疲れるわ。普段友達と話しているようにしてくれていいのよ。二人とも。」
そう言うと、
「ちょっと本物出すまで、こっちで楽しんでて。」
そう言うと指をパチッと鳴らした。すると部屋は見る見ると暗くなり、部屋の一角だけが明るくなっていった。すると、明るくなった上にマルス券が出てくるではないか。
「すげぇ。」
うん、ほんとにすげぇ・・・。最初に出てきた券は東京~新大阪の特急券だ。それもグリーン特急券ではないか。
「なぁ、光。俺今すげぇもの見てる気がするんだけど。」
「大丈夫。ウチも券のすごさに圧倒されてるから。」
キラはマルス券に手を伸ばしたが、手はマルス券を通り抜ける。「あれ。」そんなことをしているとマルス券は消え、明るかったその場所は暗くなり、部屋の明かりが付いた。
「それはホログラム投影機。触れないからあしからず。でも、ここからは触れるマルス券よ。」
そういい束になったマルス券を出してきた。
束の一番上はさっき見たグリーン特急券。切符を一枚ずつめくっていくといろんな切符が出てくる。名古屋→東京経由:リニアになっている券。東京→札幌のグランクラス券。大阪→小倉を九州一周で回ってくる乗車券。そういう券を見るたびにすげぇと声を上げるばかりだ。
「なぁ、光。さっきから見てて気づいたんだけどさ。」
キラは声を小さくして、
「特急券が全部グリーン特急券しかないんだよ。「スーパーカムイ」とか以外。」
「えっ、それってつまり。」
「ほとんどグリーン車しか乗ってない・・・。」
そういうことになるよなぁ・・・。
「あっ。」
亜美が声を上げた。それに二人してビクッとなる。何もなることないのになぁ・・・。
「そうそう。本題忘れるところだった。」
亜美はそう言うと机の上にあるパンフレットを手に取った。
「二人とも、これ渡したかったの。」
そう言いウチらの前に出してきたのは高校のパンフレットだ。そこにはこう書かれている。岩槻高等学校。
「い・・・岩槻って言うの。」
ウチはそう聞いた。岩の隣にある漢字は高槻の「槻」と同じだから、おそらくそう読むんだろうと思ったからだ。
「そうよ。」
「この高校がどうかしたの。」
「ここって元々鉄道高校だったのよ。」
「だった。」
「もう今は進学校になってるからね。東大とか目指す高校なのよ。でも、元々が元々だから、この高校でしかもらえない求人とかって言うのが今でもあるのよ。どう。私たちにとっては悪い高校じゃ無いと思うんだけど。」
「・・・。」
「でも、東京なんでしょ。」
「そうよ。だから、無理にとは言わないわ。それに私たちはまだ中2にすらなってないのよ。ゆっくりじっくり考えればいいわ。まっ、ゆっくり考えなさい。最終的にその高校に行きたくないなら行きたくないでかまわないから。」
亜美はそう言った。でも、ウチは違うでしょ。出来れば来て欲しい。いや、来てもらいたいはずだよね。
(・・・岩槻かぁ・・・。)




