392列車 体育の授業
グランドを走り終ると、ウチはトラックの内側で座り込んだ。持久走で走っている分、足がパンパンになってしまっている。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
「お疲れ。」
キラがそう言い、ウチの顔を覗き込んだ。
「ああ。今は話す体力もほとんど残ってないかな。」
「ハハ・・・。光は体育系じゃないからな。」
キラはそう言った。ま、ウチが体育系である必要はどこにもないからな・・・。昔ちょっとスイミングスクールに行っている以外、運動部に入ったり、放課後スポーツをしてたことはないからな。そのスイミングスクールも1年やって行かなくなったけどね。
「持久走はもう終わったのに、なんで今も続けてるのかな。」
「さぁ。」
ウチはそう言い、まだ走っている人を見た。2クラスの男子を集めてやっているから全体で30人ぐらい入るのかな。もう走り終わっている人が多く、まだ走っているのはあと7人。
結構、足遅いんだね・・・知ってるけど。
遠くでは別れて授業を受けている女子の姿を見る。ソフトテニスでもしているのかな・・・。時折、フェンスを越えてくるボールがトラックの真ん中の方へと転がってくる。
「そう言えば、光の姉ちゃんって基本スポーツ万能だよな・・・。」
「えっ、ああ。運動神経の良さはほとんど智萌に持ってかれたからなぁ・・・。」
そう聞けば、こう答えるのがウチの定型文だ。智萌はスポーツだけなら何をやらせても、うまくこなすからなぁ。
「そうかい。お前ももうちょっと運動が出来れば、今頃女の子からキャーキャー言われてるのかもなぁ。」
「・・・興味ないね。」
「密会できる女の子がいる人は違うねぇ。」
「おい。」
ゴールの近くには最後のランナーが来ていた。そろそろ集合をかけるか・・・。そう思いながら、立ち上がった。
「今日の授業はこれで終ります。」
「ありがとうございました。」
号令をかけて、休み時間となった。まぁ、その時間は皆さんも経験する通り10分だけ。この短い休みの間に次の授業がある理科室まで行かなきゃならない。体操服のまま過ごせる学校じゃないからなぁ。移動教室が次に控えた体育の授業との間の休み時間はかなりきつい。
「次って実験とかかなぁ。」
キラはそう聞いてきたが、ウチは
「さぁね。」
と答えるだけにした。




