363列車 中百舌鳥
「ていうことをキラに言われたわけだよ。ウチら別に付き合ってるわけじゃないのになぁ。」
そう最初に振った。しかし、当の相手はこの事はあんまりよくは思っていないようだ。
「そう、じゃあなんで私にそう言うこと言うかな。だから、余計デマが広がるんだよ。」
この人こそ、前に言っていたモズである。名前は中百舌鳥あさひである。
「いや、ウチらは話さないことの方が無理だろ。日直なんだしさぁ。」
そう言って手に持っているノートを見た。教科は算数だ。宿題で出ていたものである。提出したものが帰ってきたのだ。クラスの人数は33人。うちとモズで分担して持っているから、持っているのはだいたい16冊ぐらいだろうか・・・。いや、数えてないから数なんてどうでもいいけど。あっ、提出してなかった人もいたからそれを考えるとそれよりちょっと少ないか・・・。
「まぁ、日直をやってる時は話さないわけにもいかないわよねぇ・・・。私も由佐ちゃんとか、君のお姉ちゃんが冷かしてくるから、反論するのに疲れるんだけどね。」
とは言いつつも嬉しそうなのは気のせいなのかな・・・。
「そっちは別にいいんじゃないの。変なのに絡まれるわけじゃないんだから。」
「キラ君変なの呼ばわりなんだ・・・。」
「いや、キラは変な奴じゃないんだって・・・。」
そう言うと、
「何だ。また夫婦喧嘩か。」
「はぁ・・・。」
そういう言葉が聞こえてくる。当然無視だ。あんなのに付き合うだけ疲れる。ああいうのはどう言ったってこじ付けでも言ってくるタイプだからなぁ・・・。その思考力をもっと別なところに使えばいいと思うのだが・・・。
「男子ってよくああいうこと言うねぇ・・・。あの子たちのせいでもあるんじゃない。私達が付き合ってるとかって流れるのは。」
「それしかないでしょ。」
ぶっきら棒に言った。ウチは小6の学年中にあのデマが流れるのはリア充に掴みかかってくるああいうののせいだと思っている。
「ところで、キラ君からそう言う話を聞いたってことはまた電車でも撮りに行ってたの。」
「まぁね。でも、目的の電車は来なかったけどね。」
「よく取りに行くねぇ、光ちゃんも・・・。」
モズはそう言ったあと「あっ」と小さく声を上げた。
「ごめん、光君。」
そう言いなおした。
「あんまりウチの事それで呼ばないでよ。」
「ホントごめん。」
「別に怒ってないから。」
ウチはすたすたと歩いた。
教室まで戻ってきた。ガラガラっとドアを開けて中に入った。教室の中はクラスメイトが話をしたりしている。休み時間だから当然か。だが、黒板は国語の授業のまま残っていた。黒板消し担当の男子は教室の後ろの方で他の男子と話している・・・。
「・・・。」
「黒板見事にそのままだねぇ・・・。」
隣でモズが小さい声で言った。
「ウチらで消すか・・・。それに今だけじゃないだろ、これ。」
話すなとは言わないけど、仕事ぐらいはちゃんとしてほしい。でも、日直をする身からするともう慣れてしまった。黒板を消さないのは今に始まった事じゃないのだ。1学期や2学期に黒板消ししてた輝君の方がよかったのだけどなぁ・・・。何故3学期だけやらなかったのだろう・・・。いや、手を挙げる暇もなかったか・・・。
黒板消しを持った瞬間、
「光。」
と呼ばれた。そっちを見ると姉ちゃんがたっている。
「はぁ、ねぇ光。家庭の教科書ある。持ってき忘れちゃったんだけど。」
「またか・・・。」
ウチはため息をついた。こっちも今に始まったことじゃない・・・。
「残念だったねぇ、、智萌ちゃん。今日はうちのクラス家庭科ないんだ。」
モズが言った。
「えっ、嘘っ。」
「ちゃんと用意しとけよなぁ・・・。それとさっき貸した算数の教科書早く返してよね。撃ち、次使うんだから。」
「あっ、そうだった。ごめん今、すぐ持ってくるから。」
そう言って、智萌は教室から出た。今先生が廊下にいたら、「走るな」って言われるだろうなぁ・・・。
走って戻ってきたと思ったら、すっと算数の教科書が前に来た。
「はい、これで返したよ。」
「何回も言ってるけどさぁ、次は言われる前に返してよね。何回も智萌の教室に行って取りに行くの嫌なんだけど。」
といった。
「本当にごめんなさい。」
「謝るんなら、ちゃんと行動で示しなさい。」
「はーい。」
そう言ってからとも萌は「はぁ、どうしよう」と言ってうちの教室を後にした。
「智萌ちゃんも忘れ物癖も直らないねぇ。」
「あれは直ってほしいんだけどね。」
その様子を遠巻きから見た。
「光君には、中百舌鳥さんに気はないってさ。」
長宗我部がそう言っていたのが頭の中に再生される。
(とは言ってもなぁ・・・。本当のところ怖い。)
また、視線を落とした。
登場人物
双子の姉:永島智萌
日直をよくするコンビ:中百舌鳥あさひ
名前由来
中百舌鳥あさひ:上越新幹線「あさひ」。
永島智萌:以下略。




