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MAIN TRAFFIC4  作者: 浜北の「ひかり」
Hikari Episode:1
17/102

378列車 近くにいるそういう人

「ああ・・・。」

ウチは頭を抱えた。どうしても早くならない。いや、始めたときよりも出来高は減ってきているかな・・・。これじゃあ全く意味をなさない。

(ひかり)。」

「あわわわわっ。」

突然声をかけられたのでびっくりした。鉛筆とかが机の上から落ちそうになるのを必死になって手でつかむ。

「そ・・・そんなにビックリしなくてもいいじゃない。お母さんにまた隠し事でもしようとしてたのかな。隠し事なんてどうせばれる時間が先に延びるだけなんだからやめときなさい。」

「うん・・・。」

そこはお母さんの言う通りだな・・・。まぁ、お母さんに隠し事が通用するとは思ってないけど・・・。智萌(ともえ)以上のエスパーな人だからなぁ・・・。

 と考えていたら、後ろからウチの机を覗き込んでいた。

(ひかり)、なんかすごいのやってるわね。数字がたくさん並んでるけど。」

「クレペリン検査っていうんだって。」

ウチがそう言うとお母さん首をかしげた。クレペリン検査って知らないのかな・・・。

「この検査はねぇ、一ケタの足し算をやってくの。それで答えを数字と数字の間に書き込んでいくんだよ。」

「へぇ。ねね、お母さんにもやらせてよ。」

「えっ・・・。」

ウチはその言葉に驚いた。そして、切り口が智萌(ともえ)っぽい・・・。そんな安易な気持ちでやっていいもの。いや安易にやっていいものではあるが、根気がいるから・・・。それにさっき智萌(ともえ)もやったけど、早いという話はやはり「万が一」であったらしい。出来高はウチと同じぐらいだったことにある意味ほっとした。そんな風に言われても、すごく嫌な予感しかしないんだけど・・・。

「お母さんクレペリン検査知らないんでしょ。出来るの。」

「できるわよ。クレペリン検査知らなくても、一桁の足し算知らない日本人はいないわよ。」

それもそうか、義務教育だし。

「ほらほら、早く鉛筆貸して。一ケタの足し算の答えを数字と数字の間に書き込んでいけばいいんでしょ。」

「そうだよ。」

「よーしっ・・・。」

そう言い、お母さんは最初数字をかき込むところに鉛筆の先を置いた。あっ、そう言えば答えを書き込むって言っても、十の位は書かなくていいってことを言っていなかった。それだけじゃない。ちゃんと計算が終わったら次の弾に飛ばさないようにいくってことも。ああ、その意味でもすごく不安。

「って・・・えっ・・・。」

次の瞬間ウチは驚いていた。いや、お母さんの鉛筆の走るスピードがモズよりも早いのだ。しかも、モズは途中で何度か躓くところがあったが、その躓きもない。カリカリと部屋には鉛筆の音だけが聞こえるようになった。

 最初に各列の一番右端まで来るとお母さんは鉛筆を置いた。

「どう。」

「えっ、すごく早かった。」

ウチは思ったことをそのまま言った。それ以外言う言葉がなかったのだ。

「お父さんがね、(ひかり)の部屋で見つけたのよ。クレペリン検査紙をね。お父さんもお母さんも昔は(ひかり)みたいに遅かったから、結構進歩したんだよ。」

「えっ・・・。」

その言葉に思わず耳を疑う。お母さん、これ知らないんじゃ。

(あっ、さっきまで得意げに教えようとしてたのは何・・・。)

(ひかり)、JR東海に入りたいんだよね。お父さん言ってたよ。今のままじゃ100%落ちるってね。」

「・・・。」

「JR東海もそうだけど、何処の鉄道会社も受かりはしないわね。JRの本州三社なら1000人ぐらいの募集に最大で5万人集まるっていうしね。まっ、お母さんの持っている情報は古すぎて参考にならないかもしれないけど、募集人数と応募人数の差が激しいってことは今も昔も変わらないかな。」

本州三社(JR東日本、東海、西日本)でそれ。ていうかお母さんいきなり何の話を中学生のウチに・・・。

「あっ、そんな話してもぶっ飛び過ぎてて(ひかり)にはまだ実感わかないよね。」

「ああ・・・。うん。」

ウチは素直に首を縦に振った。そんな現実を突きつけられても、うちにはまだ話の内容が重すぎる。

(えっ、待って。亜美(あみ)ってこのこと知ってて言ってる・・・。)

ふとそれがよぎった。いや、それだけじゃない。お母さんさっき一番重要なこと言わなかったか。

「どこの鉄道会社も受かりはしないわね。」

お母さん確かにそう言った。子供にかける言葉としては最悪かもしれないけど、ウチにとってそれは有益な情報以外の何物でもない。ウチは最初から脱落していることになっているからだ。・・・あっ、お母さんもっと言ってるぞ。

「昔は(ひかり)みたいに遅かったから。」

遅かった。遅くて、今こんなに早いなら何か知ってるかも。

「お母さん、どうしてこんなに早くできるようになったの。」

「それはね。・・・計算するんだよ。」

「えっ・・・。」

それに戸惑った。まさかそんな簡単なことで早くなるとでもいうのだろうか。

「ホントにそれだけ。」

「それだけよ。まっ、うちにはその証明が二人もいることだし、疑わなくても済むわよ。」

そう言いお母さんはうちの席から立った。

(ひかり)には夢かなえてもらいたいしね。」

ぽんと肩をたたいて、部屋を出て行った。

「・・・。」


あるあるです。

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