374列車 永沙3
4月。
「ようやっと新車が入ってきたなぁ・・・。」
そう言うのは車を主に担当する沙留だ。来た車は4代目ト○タラ○シュ。ここにある車はこの最後の1台が来たことで全部が4代目に変わった。全体的に曲線のフォルムは初代から変わっていないが、灯具が一新されたことによって与える印象は大きく違っている。
「これでようやっと12万キロ超えた車が廃車になってくれるんだね。」
納車されてまだ3年経ってません。
「ああ、にしても○1-5○は故障が多かったから変わってくれて助かった。これで夏の心配はないと思いたいなぁ・・・。」
そう言いながらため息をついた。
「まぁ、そう言うなよ。夏になってみなきゃ分からないって。」
僕はそう言った。ここにいる車が壊れるのはよくあることだ。人でさえやらない24時間労働をここの車はやっているのだからなぁ・・・。そりゃ普段使ってる車にはない故障が起きて当然だろう。僕の持ってる○バルの「レヴォちゃん」ことレヴォー○は結構長い間乗ってるけど、まず壊れてないしなぁ・・・中古だけど。ああ、壊れないでいえば淳兄ちゃんの持ってる「インプ○ッサ」もしぶといなぁ・・・。あっ、だから家庭で使ってるのと比べるなってね。
「にしても、この車新しいタイヤはいてるんだな。」
「新しいタイヤ。」
「ああ、セルロースナノファイバータイヤ。ほら、カーボンブラック使ってるほかの車のタイヤと違っていろ黒くないだろ。」
ああ、言われてみれば、新しく来た車のタイヤは他の車のタイヤに比べて黒くない。他の車のタイヤが墨だとすれば、新車のタイヤは墨汁を水で薄めまくった色と表現する方がいいだろう。接地する面はちゃんと黒いのだか、その色は試験走行の時に着いた色っていう感じがする色合いだ。
「これでパンクが減るなら万々歳だな。」
「新しいタイヤってパンク減るの。」
「ああ。植物の繊維をまんま表現したようなセルロースナノファイバーでできてるからな。パンクくらい減ってくれなきゃ、バカ売れしたりしないぜ。それに、俺の車もこのタイヤはいてみたけど、タイヤ交換楽になったぜ。ホイールの重さは変わんないけどな。」
沙留はそう言いながら、笑った。
(家の「レヴォちゃん」にもつけてみようかな・・・。だったらまた車屋さんに持ち込むことになるけど・・・。)
普段から車で仕事してるのに自分でタイヤ交換しないのかって。僕にそんな技術はあっても、プロに任せる人ですからね。オーケイ。
「ようやっと日綜警も現場のこと考えてくれるようになったな。」
(いや、それは違うと思う。)
それに、パンクが減ってもエンジントラブルが減らなきゃあんまり意味ないんじゃないか。ここにおいてある他の車は全部カーボンブラック製だから。
「とりあえず、今日はこれを○班の回送で走らそう。巡回車になるのは多分○班だと思う。オイル交換そろそろしないといけない車が回ってるからな。」
「了解。ってあんまり僕に行っても仕方ないんじゃ。」
「何言ってるんですか。車両がどこに回って何処の車がどういう症状出すかよく分かっていらっしゃる人間コンピューターに言っておけば、大丈夫なことこの上ないでしょ。」
「・・・。」
別に好きで見つけているわけじゃない。気になるから沙留に言ってるだけなんだけどなぁ・・・。
「ナガシィ。」
ふと僕を呼ぶ声がした。そして、こういう呼び方をするのは一人だけだ。
「萌。どうしたの。」
近づいてくる萌に僕はそう言った。萌は僕の近くまで来ると手に持っているものを差し出し、
「はい、お弁当。忘れてたよ。」
といった。
「ありがとう。あっ、そうだ。萌に渡しとかなきゃね、あれ。」
制服のポケットをごそごそと探して、しわくちゃになった紙を取り出した。
「はい。」
「はい、ありがとう。」
「ごめん、すっかり忘れてた。」
「いいわよ。別に気にしてないから。じゃ、お仕事がんばってね。」
「・・・いつも給与明細嫁さんに渡してるのか。」
「うん、自分じゃ残業時間の所しか見ないから。」
「いや、他見ろよ。特に給与欄。」
「別に興味ないよ。」
まぁ、完全にないわけじゃないからご安心ください。それと、人に貸すお金は無いのでご了承ください。
「あっ、そういえば最近銀行行ってないなぁ・・・。ちょっと萌に頼んどこうかな。」
「行ってないってどんぐらい行ってないんだよ。」
「うーんとねぇ、半年以上は銀行に行ってないね。」
「いや、行けよ。半年以上ならてか1か月に1回ぐらいのペースで行けよ。」
「そんなにハイペースで行かなくてもいいと思うけど。」
「いや、お前のはローペースすぎるわ。・・・ていうか、永島って本当にお金の見方っていうのが違うよなぁ。前にも言ってたじゃん2万7千円嫁さんの小遣いであげたって。」
ああ、確かにそんなこと言ったなぁ・・・。というのは何か金額を間違えて請求してたとかって話だったなぁ。確かに払った時になんか高いなぁとは思ったけどね。
「だって、お金が帰って来るっていうものほど胡散臭そうな話はないし。」
「2万7千円がその一言で片づけられる金額っていうのがすごいよ。」
「後、金額ちょっと違うよ。3万7千円ね。」
「・・・1万はちょっとの誤差なんだな・・・。」




