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MAIN TRAFFIC4  作者: 浜北の「ひかり」
Hikari Episode:3
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461列車 男同士の大回り

 岩槻高校への合格が決まったことで、東京(とうきょう)への引っ越しの話もとんとん拍子に進んでいった。ウチが在学中に済むところは金町(かなまち)の近くにある寮に決まった。金町(かなまち)常磐緩行線(じょうばんかんこうせん)にある駅。上野(うえの)日暮里(にっぽり)経由で行くことになるが比較的近い場所にある。それはありがたいかな・・・。

 3月に卒業式を迎えてから、ウチはつかの間の春休みを楽しんでいた。ああ。もちろん、勉強もしてるけどね。

「・・・ハァ・・・。」

お父さんが大きなあくびをしながら、起きてきた。まだパジャマ姿のままだし、いかにも眠そうだ。

「・・・(もえ)・・・どこ。」

お母さん探してるのか・・・。

「お母さんなら、出掛けたよ。ゴミ捨てに。」

近くにいた智萌(ともえ)がお父さんに言う。

「あっ、そうなの・・・。って・・・嘘ッ。もう7時。ああ、寝過ぎたなぁ・・・。」

この家の朝は早いからなぁ・・・。お父さんだって仕事の時は5時。休みの日でも6時30分前には起きてるからなぁ。

「・・・(ひかり)。今日暇。」

「えっ。」

「勉強するなら、別にいいんだけど。」

「どこか行くのお父さん。」

「うん。もちろんUSJには行かないからね。」

もちろんなんだ・・・。確かに、ウチもUSJには興味ないからなぁ。あんな人ごみ行きたいとも思わないしいいか、もちろんでも。

「・・・えー、つまんない。」

「どう。智萌(ともえ)は行かないみたいだけど。」

お父さんから誘ってくるって言うのはだいたい一つだ。行こうかな・・・。

「・・・行きたい。」

「ヨシッ、じゃあ出掛ける準備しようかな。」

「その前にちゃんと朝ご飯は食べて行ってよね。」

ちょうどお母さんが帰ってきたみたいだ。

「分かってるよ。あっ、(もえ)も行く。」

「大回り。」

「うん。」

お母さんの問いにお父さんは短く答える。それにしてもよく大回り乗車って分かるものだな・・・。

「私はいいわ。行ってきたいなら、行ってらっしゃい。でも、その前にご飯だからね。」

 お母さんがそう言ってから、朝ご飯をみんなで食べ、ウチらは守山(もりやま)駅へと行った。お父さんの考えで、周り方は守山(もりやま)から野洲(やす)に大回りでまわることとなった。

 まず、守山(もりやま)から新快速(しんかいそく)草津(くさつ)へ向かい、草津(くさつ)駅から草津線(くさつせん)に乗り換え、柘植(つげ)に行った。柘植(つげ)から関西線(かんさいせん)に乗車する。乗る車両はキハ120系だ。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎いかぁ・・・。」

お父さんはボソッと言った。

「坊主憎けりゃって・・・。」

「・・・んー、簡単に言うと坊主が嫌いだと、坊主の着てる服まで嫌いになるって事。」

「変な話だね。嫌いなのは坊主だけなんでしょ。」

「・・・まぁ、確かに変な話だけどね。でも、お父さんぐらいになると嫌でも分かることだよ。」

お父さんはそう言うと折りたたみ式のドア近くに着いているドア開閉ボタンを押した。路線バスみたいにドアが内側に折れ、扉が開く。2両編成の車内はばらばらと席に座っている人たちがいる。ボックスシートには2人か1人ぐらいは座っている。

「混んでるなぁ・・・。」

お父さんはそう言い、車端部にあるロングシートに腰掛けた。

「ボックスは全部埋まってるからここでいいでしょ。」

全部埋まってるとは言いづらいけどなぁ・・・。そう感じながらも、ウチはお父さんの隣に座る。

 出発時刻になったのか、キハ120はゆっくりと柘植(つげ)のホームから離れ始める。レールバスみたいな小さいディーゼルカーはエンジンをうならせ、草津線(くさつせん)と離れ左に分かれていく。だんだんとスピードに乗っていく。しばらく加速したかと思うと、何かが抜けたようにエンジン音が小さくなった。

関西線(かんさいせん)は結構飛ばすんだよね。」

「・・・。」

外を見てみた。70キロぐらいは出ているだろうか。

「キハ120が走るところは制限25とか多いからなぁ・・・。結構前に廃止された三江線(さんこうせん)とかは全区間でゆっくりだったからね。」

制限25って・・・。このディーゼルカーが走るところはそんな鉄道とは言いがたい路線ばかりなのか・・・。それに三江線(さんこうせん)って聞いたことない路線だなぁ。廃止されたって行ってたけどどこを走ってたんだろう。

「・・・(ひかり)東京(とうきょう)に行ったら、こうやって旅することもしばらく無いね。」

「・・・でも、ちゃんと戻ってくるよ。」

「うん。」

お父さんもそう言うと外を見始めた。

「お父さんがJRいけなかったのは頑張らなかったからだから。後悔しないようにね。」

「うん。」


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