ワルツは好きよ。
王はマリーナをみて頭をかかえた。
自国の踊りは、パーティーなどでするものとは違い、披露するためだけにある。
そのため、皆が踊れる必要がなく、教養のある女性のみが習う、難易度の高い踊りであった。
音楽が流れても踊り出さないマリーナをみて、他国の者は皆一様に首を傾げた。
特にルシシアンの姫は眉をひそめた。
姫はソフィアと知り合いであった。
直接会ったことはなかったが、交流のある国の女性の代表として手紙のやりとりをしていた。
もちろん、ソフィアが婚約破棄されたことも手紙で知っていた。
姫はマリーナを横目に、後ろに控える護衛に指示を出した。
マリーナは、
(いつ王子が来てくれるの?)
と不思議に思っていた。
マリーナの中では、踊りは王子とするもので、一人の踊りがあることを知らなかった。
他国の姫の踊りを見ても、パートナーがいなくてかわいそう、としか思っていなかった。
そんなマリーナをみて、さすがの観客も違和感に気づく。
曲も終わり、会場は静まり返った。
王と王妃は顔面蒼白だった。
大国の前でこんな失態をおかした。
我が国の消滅ばかりが頭をよぎった。
伝統の踊りって以外と踊れる人いなかったりしますよね。
日本舞踊みたいな...