8/11
ジークヴァルトの場合
騎士の朝は、宿屋の店主より早い。朝の鍛練として、まだ辺りが薄暗い頃に外に出る。筋トレ、剣の素振りをしたあと、朝食前にシャワーで汗を流す。今日もジークヴァルトは、朝の澄んだ空気の中で剣を振るっていた。
以前は町外れの騎士隊宿舎にいたジークヴァルトだが、はた迷惑な研究者の実験と、同じくはた迷惑な騎士隊長の思いつきにより、宿屋の3階に住む事になった。滞在費は騎士隊が出すらしいし、ほかの騎士達が交代制の自炊生活をする中、 自分は宿屋で良いのだろうか、と最初は思った。が、しかし、それを考えて尚、厄介なものを体よく任せられたのだと悟った。
ヴィクトルと名乗る研究者の監視。宿舎の一部を爆破し、ジークヴァルトが宿屋で暮らす事になった理由を作った彼は、常識で計れない男だった。彼を監視しながら通常の騎士隊業務をこなし、ヴィクトルに負けず劣らず破天荒な隊長の補佐をするのは、中々にハードだった。
しかしまぁ、現隊長の下についてから、貧乏くじをひくのには慣れた。思わずため息を吐いてから、呼吸を整える。見上げた空に、朝日が上がり始める。
「そろそろ戻るか……」
ジークヴァルトにとっての太陽とは。
静かな一人きりの時間に、終わりを告げる光。




