5/11
ツェツィーリアの場合
行商人の朝は、旅先の宿や野外で迎える事が常にだ。働き口のない村を飛び出して数年。最初は苦労したが、今ではすっかり行商人として生活を成り立たせている。一人旅は危険も多いが、長旅のときは騎士や冒険者を雇って、同行してもらう。自らも、短剣の扱いには慣れたものだ。
今日もまた、泊まった宿を後にして、町から町へ。途中にすれ違う旅人への商売も忘れない。生活のため、すっかり守銭奴になってしまった。
そんな行商人としての生活にも不満はなく、むしろ楽しんで毎日を送っている。少々気になる事と言えば、恋愛的出会いがない事だろうか。あちこちで気になる人は見掛けるものの、アプローチのしようがない。というか、そんな女子力や技術力がない。得意なことと言えば、値切り、場合によってはふっかけ……。
「一生結婚……いや、恋人すらできなかったりして」
笑い事ではない独り言を呟いて、空を見上げた。憎らしいくらいに眩しく輝く太陽が、雲間から顔を覗かせた。そんな眩しさを見せつけられると、まあ、なるようになるかと思ってしまう。
ツェツーリアにとっての太陽とは。
見上げた先の、道しるべ。




