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ゲオルクの場合
冒険家の朝は、眠らずに迎える事が多い。旅をしている時は仮眠を取る程度で済ませるし、どこかの街に滞在中は、繁華街の店へ朝まで入り浸っている。
エアツェールングの街の宿屋は、ゲオルクが夜にぐっすり眠る唯一の場所だった。理由として、繁華街の店がどこも朝まで営業していない事もあるが、そんな場所は旅をしていると沢山ある。そんな時は一人きり部屋で酒を飲むか、知り合った女性の家に転がり込むかが常だ。
しかし、この街の宿屋では、酒場の営業終了後には寝て、朝には起きる。何故かと、偶然再会した旧友に驚かれた事がある。ゲオルクは笑って言った。
「だって、メリス嬢が夜は休めって言うから」
一緒に過ごす女性の頼みは快く引き受けるのが信条だ。それは、相手が世話になっている宿屋の店主であっても、例外ではない。呆れた旧友に笑みを返しながら、ゲオルクは思う。それに、この街の人達と付き合うのは、皆が起きている昼じゃないともったいない。その理由だけは、心のうちに秘めておく。自分らしくない。
ゲオルクにとっての太陽とは。
エアツェールングの街の象徴。