義妹というものに憧れていた時期が俺にもありました。そのにっ!
義妹というものに憧れていた時期が俺にもありました。の続編です!
相変わらず主人公の名前は出てきません笑
みなさんは義妹を愛していますか?
俺は愛して『いました。』つまり過去系だ。
俺が義妹をあまり愛さなくなった理由……それは義妹にある。
「ブタども!あんたらブタの分際で人の言葉を使ってんじゃない!ブタならブタらしく『ぶひぃ』と鳴きなさい!」
「「「ぶ、ぶひぃーっ!」」」
帰宅して扉を開けた瞬間にこれはなかなかに心にダメージが入るな……
前回のおっさんこそいないものの、明らかに数が増えていた。
「お兄ちゃん!おかえり!!」
俺の方へ駆け寄ってくる蜜柑、途中邪魔だった男を蹴り飛ばすことも忘れない。蜜柑さんマジぱねぇっす。
ちなみに蹴られたのは見た目的に大学生のお兄さん。もちろん上半身半裸。SMに目覚めるには早すぎないだろうか。
お兄さんは蹴られたにもかかわらず、恍惚の笑みを浮かべていた、さすがはおっさんの後継者。残るふたりのおっさんは羨ましそうな目でお兄さんを見ていた。
これが俺の家の日常なのだから、泣けてくる。
ある日――
今日もいつも通り帰宅して扉を開けると、ズボン越しとはいえおっさんの股間を思いっきり踏んでいる蜜柑が見えた。
……これは長く見ていると精神衛生上良くないな。それを言ったら中二である蜜柑本人はどうなるんだということになりかねないが、俺にはあれを止められない。前に止めようとしたらMのおっさんに殴りかかられたのだ。
そこから得た教訓は「本気になったドMは強い」だ。
俺は大人しく自室に引きこもってスマホでスポーツニュースとにらめっこしていた。
――30分ほど経っただろうか
だんだん空が暗くなってきた。そういえば昨日の天気予報では、今日は雷が鳴るとか言ってたな。
今日のおっさんもそれを思い出したのか、リビングの方からバタバタと慌てる音がしてから「まっ、またお願いします!」という声と玄関の開閉音が聞こえた。どうやら帰ったらしい。
俺は自室から出るとリビングへと向かう。リビングには何に使ったのか想像もしたくないが、輪ゴムと洗濯バサミが落ちていた。
その真ん中でバラエティ番組を観て笑っている蜜柑。こうして普通の状態でいると可愛いのになって素直に思う。あと切り替え早いなーとも思う。
「あ、お兄ちゃん。今日は何食べたい?」
「んー…炒飯かな」
「おっけー!」
いつも通り台所へと向かう蜜柑。将来的にいいお嫁さんになりそうだ。
………。
「お兄ちゃんなんで泣きそうになってるの?」
「……いや、なんでもない」
声が震えていたのか自分でも情けなかった。
でも、言えるわけないじゃないか
蜜柑がどこかにお嫁さんに行って俺の前からいなくなってしまうのが寂しくなったなんて。
「ふぅん……変なお兄ちゃん」
こからはいいつも通り一緒にご飯を食べて、いつも通り一緒に勉強して、いつも通り一緒にお風呂を入ろうと蜜柑にごねられて(もちろん断った)
いつも通りすぎるけど珍しくおっさんの影がない日常で。
俺が蜜柑がいなくなることに寂しさを感じる必要などないわけで。
そんな寂しさは寝れば忘れる!と思ってベッドに入ると、遠くの方からゴロゴロという音が聞こえてきた。
雷が鳴り始めたのか……と思った矢先に扉からノックの音。両親は二人ともそれぞれ仕事で単身赴任しているため、現在この家には俺と蜜柑しかいない。つまりノックしたのは蜜柑なんだけど……どうしたんだろう?
「蜜柑どうした?」
「お兄ちゃぁん……」
蜜柑は枕を抱えて弱々しく立っていた。声も震えていて、ロリコンのみなさんなら「萌えぇーっ!!」と叫ぶんだろうな、と思わせる雰囲気があった。
「今日は一緒に寝てよぅ……」
「あ、なるほど」
蜜柑は雷が怖いのか。そういえばこの辺は雷がほとんど鳴らなくて、夜に鳴るのはこれが初めてかもしれない。
俺はベッドの端に寄ると、蜜柑の入るスペースを作ってあげる。蜜柑はそこに思いっきり飛び込んできた。
「えへへ」
蜜柑が笑う。そして俺は気付いた。
蜜柑が俺から離れて行くことはないってことに、例えお嫁に貰われていっても蜜柑は俺のことを忘れることがないってことに。
肩の荷がおりた気分だった。
「お兄ちゃん?」
「なんでもないよ。よし!寝るか!」
「ちょっ、くすぐらないでよー!」
みなさんは義妹を愛していますか?
俺は愛して『いました。』つまり過去系だ。
でも今は愛して『いる。』
やっぱり……
「仕返しだーっ!てりゃっ!」
「なっ、あはははっ!!」
やっぱり義妹は最高だ!!
義妹というものに憧れていた時期が俺にもありました。そのにっ!
楽しんでいただけたら幸いです!