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第6話

 無理デス。

 好きに扱っていいとか言われても。

 童貞にはそのミッションはMI認定、不可能任務です。

 ああ、どうせヘタレですよ!


 そんな訳で、オレはベッドの上で瞑想中。静まれ、オレのジョニー。

 でも後ろでシュルシュルと衣擦れの音がする中で、瞑想なんかできるハズないし、ジョニーも静まってくれるハズもない。

 服を脱ぎ終わったのか、今度はタオルを濡らしているのだろう。水音が部屋の中に響く。


 ………………ちょっとくらいなら見てもいいかな? ちょっとだけ、2秒くらいなら。


 そ~っと後ろを窺うと……。


「っ!?」


 マイカと目が合った。しかもニコッと微笑まれまでした。なんだよ、その余裕。童貞だと思ってバカにしてると襲っちまうぞ。

 勿論、そんな真似はできないので、慌てて前に向き直る。でも、2人ともこっちを向いていたせいでバッチリ見えちゃった。元々着ていた服が薄いから解ってはいた。ああ、解ってはいたんだけど……。

 マイカの破壊力は凄かったな。何がとは言わないけど。戦闘力は53万を超えていただろう。

 リノは……まあ、深くは語らないようにしよう。アレはアレでいいものだとオレは思うしな。何とかに貴賎はないというヤツだ。ようするに人生には山在り谷在りだ。マイカのようなそびえる山もあればリノのような絶壁の谷も――ゲフン、げふん。


「……ご主人様、何を考えているんです?」

「いっ、イエ、ナニモ。ワタクシノ心ノ中ハ、明鏡止水ノゴトシデス」

「そうですか」


 いつの間にか服を着ていたリノの言葉に飛び上がる。なんだろう、背骨の中心に直接氷を流し込まれたようなこの感覚は。


「お、終わったのならメシに行こうか」


 必死に話題を逸らす。幸い、2人とも特に何も追及してくることはなかった。

 宿屋の1階にある酒場兼食堂のような所に行こうとすると、マイカが確認するように聞いてきた。


「ご主人様、私達の分は街でもっと安い所を探してきますが……」

「ん? いや、いいよ。面倒だし、一緒で」

「ですが――」


 尚も遠慮しようとするマイカとリノを引き連れてウェイトレス案内されたテーブルに座る――のだが、なぜか2人はオレのイスの後ろに立ったままだ。


「あのさ、座らないの?」

「奴隷は普通、主人と同じ場所、同じ時間で食事はとりません。主人が食べ終わったら、空いた時間に手早く済ませるのが一般的です」


 なにその非効率性。給仕とか護衛とかならしょうがないかもしれないけど、2人にそんなこと頼むつもりも無いので、一緒に座らせる。1人で食べるより美女と一緒に食べるほうが美味しいに決まってる。メニューを選ぶのも、好きなのを選んでいいと言ったら驚かれた。遠慮して一番安いメニューを選ぼうとするので、仕方ないのでオレが適当に色々注文した。ちなみに料理名はわからないのが多かったが、材料自体はあまり地球の物と変わらなかった。考えてみたら地球の神様が創った世界だし、同じような物ができてもおかしくはないか。


 食事を終えて部屋に戻る。そこはベッドが1つしかない部屋なわけで……。


「「「…………」」」


 なんで2人とも無言で立ち尽くしているのかな。

 主人であるオレが立ったまま動かないせいか、2人もオレの後ろで立ったままジッとしている。


「と、とりあえず今日は色々あったし、もう寝ようか」


 寝るって別に深い意味は無いデスヨ?


「オレはできるだけこっち側で寝るから、2人は狭いかもしれないけどそっち側で寝てね」

「いえ、私達は床でも――」

「ダメ。これは命令だ」


 大丈夫! 絶対何もしないから! 本当、誓って!

 …………なんでこういう時って一生懸命否定するほどウソっぽく感じるんだろうね。でも本当、何もする気はないよ。っていうか度胸は無いよ、童貞には。


「とにかく、床で寝るのは禁止ね。それじゃ、おやすみ」

「あ、ご主人様…………おやすみなさいませ」

「……おやすみなさい、ご主人様」


 引きとめようとするマイカを強引に振り切って、目を閉じると、何故か悲しそうな声で2人から返事が返ってきた。そんなに床で寝たかったのか?

 隣に美女が2人もいる状態で眠れるわけないと思っていたのだが、結構な距離を歩いたり初めての戦闘を経験したり、色々な事があったせいで自分が感じるより疲れていたらしい。オレの意識は目を閉じるとすぐに眠りの底へと落ちていった。



 次の日。目が覚めると、マイカもリノもすでに起きていた。どうやら井戸に洗顔用の水を汲みに行っていたらしい。オレが起き上がると同時に、部屋の扉が開いて桶とタオルを持った2人が入ってきた。


「「ご主人様、おはようございます」」

「ああ、おはよう」


 2人に礼を言ってからありがたく顔を洗う。冷たい井戸水で顔を洗うと、意識がシャッキリした。そういえば、この世界には歯ブラシとかはないのか? 後で確認してみよう。


 さて、一息ついて落ち着いた所で今後について考えるか。


「さて、それじゃ2人に色々相談があるんだ」

「何でしょう」

「会った時に言ったけど、オレは記憶がほとんどない」

「ハイ、覚えています」

「気がついたらあそこにいたんだけど、記憶もないから、自分に家族や知り合いがいたかどうかすらわからない」


 本当はそんなものこの世界にはいないと断定できるが。


「だから今持ってる金が尽きると、途端に路頭に迷うことになる」

「ご、ご主人様っ。お願いです、誠心誠意お仕えしますから、私達を売らないでくださいませ」

「そんな訳で――って、え? いきなりどうした?」


 本題に入ろうとしたところで、いきなり話を遮ってマイカがすがり付いてきた、いや、マイカだけでなくリノも一緒だ。マイカに腕を抱え込まれると非常に柔らかくて幸せだね! じゃなくて!


「何いきなり? オレは2人を売ったりなんかするつもりはないよ」

「……本当?」


 必死のあまり素になってしまったのか、敬語が外れたリノが上目遣いでこっちを見上げる。思わず抱きつきそうになったが、自分を抑えて2人を宥める。


「本当だって。さっきも言ったけど、オレには家族も知り合いも今のとこいないんだ。頼れるのはマイカとリノだけなんだよ。なのにその2人を手放すわけないだろ。大体、なんでいきなりそんなこと言い出したんだ?」


 オレの疑問にマイカとリノはポツポツと、何を思ってそんなことを言い出したのか答え始めた。

 盗賊に襲撃され、彼らの慰み物にでもなるのだろうと、震えていた所をオレに助けられた。その恩を返したいのに、オレの役に立つどころか奴隷らしい扱いもされない。おまけに、せめて夜の奉仕くらいは精一杯尽くそうと思っていたら、肝心のオレはさっさと寝てしまう始末。そして今の話だ。

 金がないから資金代わりに自分達は売られてしまうのでは、と思ったらしい。夜にスグ寝てしまったのも、この世界では処女の奴隷であれば高く売れるらしいから、手を出さなかったのもそのためだと思ったそうだ。


「大丈夫、例え食う物が無くて飢える事になったとしても2人を売ったりしない。だからそんな心配するな。な?」

「ご主人様っ」

「ありがとうございます」


 涙声で抱きついてくるマイカとリノの背中をあやすように撫でる。さすがにこの時ばかりはやましい気分になんかならなかった。

 昨夜手を出してよかったのか、とか、ヘタレですまんとかちょっとは思ったけど。


 2人の気がすむまで待ってから、改めて本題に入る。


「それで、さっきの話の続きなんだけど」

「スミマセンでした、ご主人様の話の腰を折ってしまって」

「いや、構わないよ。寧ろ思うことがあったらどんどん言って欲しい。何度も言ってるけど、オレはこの世界の常識とかに疎いからさ」


 2人の気持ちもわかったしな。話を聞く限りだと、機会があったら手を出しても構わないということだよね。おっと、また話がずれたな。イカンイカン。


「んで話を戻すけど、お金が無くなって困らないように、この世界で一定の収入を得るためにはどうしたらいいのかなっていうのが相談」


 今の所、オレにわかってる就職方法は、騎士のキアラさんに紹介してもらって軍に志願するくらいしかないけど、軍の兵士って規律とかうるさいだろうし訓練とか厳しそうだし、集団の中に囚われるような生活はゴメンである。


「余所者が手っ取り早くお金を稼ぐ方法に、2人は何か心当たりある?」


 オレに問われてマイカもリノも腕組みして悩む。

 考えてみればこの2人は奴隷になるまでは村娘だったんだよな。それなのに、いきなりこんな事を聞かれても答えられないか。

 無理に答えなくてもいいよ、と声をかけようとした所でマイカがポンっと手を叩いた。


「冒険者、というのはいかがでしょうか」

「冒険者?」


 聞き返すオレにマイカが冒険者とはどんなものなのか説明してくれる。


「冒険者とは冒険者ギルドから依頼を受けてその依頼を達成した時にもらえる報酬や、モンスターを討伐して手に入れた素材を売ったり、昨日ご主人さまがしたように犯罪者の討伐による褒賞で生活する者のことです」


 さすがゲームとして創られた世界。RPGなんかでお決まりの組織があるみたいだ。

昨日、気が付いたらお気に入り登録件数が100を突破していました。

最初の目標としていたので、とてもうれしかったです。

もっともっとたくさんのかたに楽しんでいただけるよう、これからも頑張ります。

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