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第3話

「奴隷にして欲しい……?」


 思いもよらないお願いに思考回路がショート寸前になる。

 奴隷にするってことはこの2人を毎晩好きなようにいただけちゃうってことか?

 『ご主人様、はしたないこの奴隷めにお情けを』みたいなプレイができちゃうってことか?


「…………」

「あの、スグル様?」


 ハッ!

 いかん。一瞬我を忘れるところだった。


「……なんでオレなんかの奴隷に? 普通に考えれば持ち主も亡くなったんだし、よくない言い方だけど逃げちゃえばいいんじゃないのか?」

「逃げたところで、何も持っていない女が2人では生きる術などありません。貧しい家族の元に戻るわけにもいきませんし」

「う~ん」


 正直飛びつきたい話ではある。

 2人が魅力的っていうだけでなく、オレはこの世界について何も知らないわけだし、仲間がいた方が心強い。


「主人を失った奴隷が勝手に次の主人を決めちゃっても大丈夫なの?」

「この場合、主人が盗賊に殺されてしまいましたので、私達を含め主人の所持品は全て盗品扱いではありますが、盗賊の持ち物となります。その盗賊を今度はスグル様が討伐されたので、盗賊の所持品は全てスグル様の物となります。尚、盗賊を討伐して得た所持品は盗品扱いにはなりません」


 マイカの話では街の門や、大きな神殿や王城などにはオレの万能鑑定のような効果を持った装置のような物があるらしい。殺人等の犯罪もステータスと一緒に表示されるらしく、犯罪者は一発でわかるそうだ。


「奴隷の言うことを信じられなければ街の入り口で衛兵に確認してもらえれば大丈夫だと思います」

「いや、別にマイカのことを信じてないわけじゃないよ」


 黙って考え込むオレを見て、慌てたようにマイカが口を挟んでくる。安心するように宥めながら、コッソリ万能鑑定を発動して2人のステータスをチェックしてみた。



 NAME :マイカ


 RACE :人族


 JOB  :村娘Lv5


 HP   :24/85

 MP   :10/10


 STR  :11

 VIT  :5

 INT  :6

 MND  :7

 AGI  :13


 SKILL:料理Lv1

       家事Lv2


 備考   :奴隷――主人 立花スグル(仮)



 マイカの『JOB』は村娘か。まあ、漂流者よりはまともだよな。パラメータはミニゴブリンよりは少し高いくらいか。果たしてマイカが村娘にしては強いのか、ミニゴブリンが魔物にしては弱い部類なのか。あ、でも盗賊達のパラメータも同じくらいだったよな。

 …………マイカを怒らせるようなことは慎もう。奴隷だし、(仮)でも主人に手を上げるようなことはしないだろうけど。

 スキルは2つ。戦闘用じゃないけど、もし奴隷になってくれるなら役立ちそうではあるな。

 さて、リノのステータスはと、…………ん?



 NAME :リノ


 RACE :狐人族


 JOB  :村娘Lv4


 HP   :15/40

 MP   :50/50


 STR  :2

 VIT  :4

 INT  :23

 MND  :18

 AGI  :9


 SKILL:家事Lv1

       念魔導Lv1


 備考   :奴隷――主人 立花スグル(仮)



「狐人族?」


 『RACE』の部分を見て思わず出たオレの呟きに2人が身を固くする。

 アレ? なんかマズい事言っちゃった? オレとしてはやけに高いINT(知力)とか、スキルの念魔導とかいうやつの方が気になるんだけど。


「ど、どうしたの……?」

「申し訳ありません、スグル様。騙すような真似をしてしまって。スグル様も魔導士であらせられたんですね」


 え……、何か勝手に納得されてるんだけど待って。オレ魔導士じゃないよ? 自分で言ってて悲しくなるけど漂流者だよ?


 そんなオレの内心になど気づくことなく、マイカは背中に隠れていたリノになにやら小声で囁いている。リノはブンブン首を横に振ったりしていたが、観念したらしく、おずおずとマイカの背中から出てきてギュッと目を閉じた。頭とお尻の辺りがボンヤリと歪んだと思ったら、気が付くとリノに狐の三角耳と尻尾が生えていた。


 えええええええええええええええ!?

 何が起きたの?


「リノは狐人族だったのですが、この国では亜人はあまり……なんと言いますか、好意的に見られていないので、特徴である耳と尻尾を隠させていました。申し訳ありません」


 マイカに合わせてペコリと頭を下げるリノ。その頭の上では2つの耳がピクピクと動いている。


「…………あ~、リノ」

「ひゃ、ひゃい!」


 声をかけるとビクッと身体を震わせるリノ。上目遣いにこっちを窺う姿に保護欲が超わいてくるが、今はそれよりも大事な使命がある。


「耳と尻尾触ってもいいか?」

「ごめんな――へ? あ、ど、どうぞ」


 怒られると思ったのか一瞬身を竦ませたが、オレの頼みを理解するとチョコチョコ寄ってきて、触りやすいように前屈みになってくれた。

 そ~っと手を伸ばして耳に触れてみる。さわさわと柔らかい手触りで、ほんのりと温かい。いつまでも触っていたくなるような触り心地だったが、微妙にこそばゆいらしく、リノから「んっ」とか「やん」とか声が漏れてくるので、名残惜しかったが妙な気を起こさない内に手を離す。


「あ……尻尾は……」

「ああ、イヤなら無理にとは言わないよ。ゴメン、少し無神経だったな」

「いえ、その……すみません」


 続けて尻尾にも触ろうとしたのだが、手を伸ばした所でフイッと避けられてしまったので慌てて謝っておいた。ちょっと残念だ。


「あの、スグル様、怒っておいでではないのですか?」

「え? 怒るって何に?」


 名残惜しくリノの尻尾を眺めていたら、マイカが怪訝な顔で聞いてきた。


「ですから、奴隷でありながら主人を騙すような真似をしたことに、です」

「別に怒ってないけど……」


 オレの返事を聞いて呆気に取られたようなマイカとリノを見て、急いで付け加える。


「さっき自己紹介の時に言ったけど、記憶がすごい曖昧でこの辺の常識とかほとんどサッパリ分からないんだ。だから色々教えてもらえるとありがたい」

「はぁ……」


 気の抜けたような返事をするマイカだったが、すぐに気を取り直したらしく表情を真面目なものに戻した。


「でしたら、尚のこと私達をスグル様の奴隷にしていただけないでしょうか? 2人ともあまり学があるわけではありませんが、スグル様がわからないことがありましたら、できる限りお答えするようにいたしますので」


 マイカの言う通りだな。とりあえず案内人ガイドも欲しいし、それが美女2人なら文句のつけようがない。1人は獣娘だし。


「わかった。とりあえず暫定的にだけど、2人の主人になるよ」

「ありがとうございます」


 再びぺこりとお辞儀をする2人。リノも表面上は嫌がってる素振りはないし、いいかな。

 さて、大事なことを確認しないと。


「ちなみに、お給料っていくらくらいが相場なの?」

「……は?」


 またも呆気に取られるマイカとリノ。やめて、その『何言ってんだ、こいつ』みたいな目は。なんだか新しい扉を開いちゃいそうになるから。


「……ご主人様、奴隷に給料などありません」

「そうなの?」


 呼び方がスグル様からご主人様に変わったことでちょっと興奮しそうになったが、そんなことはおくびにも出さず、聞き返す。


「ハイ。ないというよりも、基本的に奴隷の所有物は全て主人の物となりますので、お金をもらったところで命令1つあればすぐに取り上げられますから意味がありません。中には奴隷が貯えを持つ主人もいるそうですがとても少数です」

「マジか……。でも、それじゃあ奴隷になっちゃった場合どうすれば開放されるんだ?」


 奴隷であるマイカ本人に聞くのは悪いかとも思ったが、マイカは特に気にすることもなく、表情を変えずに答えてくれる。


「犯罪者が刑のために奴隷となった犯罪奴隷ならば、刑の期間が終われば終われば開放されます。それ以外の奴隷は、基本的に主人が開放してくれるまで自由になることはありません」

「……ちなみに主人から解放されるってのはどんな時なんだ?」

「そうですね、一番多いパターンは親族や知り合いに買ってもらって開放される場合です。それ以外ですと、長く仕えた奴隷に主人が恩義を感じて開放する場合や、主人が死ぬ際に遺言で開放する場合等ですね」


 なるほど。とにかく一回奴隷になっちゃうと中々自由になれないってことか。

 でも給料が要らないってのは、ぶっちゃけありがたいな。今のところ収入源があるわけでもないし。


「わかった。じゃあ、オレは主人として2人の生活費を用意すればいいんだな」

「はい、ありがとうございます。もちろん、宿などは馬屋や納屋で構いませんし、食事も残飯で結構ですので」


 できるか、そんな真似! オレが普通のメシ食ってる横でこの2人に残飯食わすとか、そんなことができる鋼の精神なんかもってねーよ。MND(精神)の値がどれだけ高くても無理だわ。


「贅沢は無理だけどそんな真似はさせないから安心してな。とにかくここでずっと話してる訳にもいかないし、ぼちぼち街に向けて出発するか」



片方は獣娘でした。

べ、別に私の趣味ではありませんよ?

好きである事は否定しませんが。

魔導については次で説明します。

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