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第35話

短くてすみません。

「フン。サントラの森にベアウルフねぇ……」

「アラアラ、数にもよるけど、これは少し厄介ね」


 話を聞き終えた二人は口を閉じ、各々で考え込んでいる。話の真偽自体は、アナスタシアさんからミリナの事を証明してもらい、ジルバートさんも信用してくれたみたいだ。


「……木精霊の長――ウルザリーナさんの話では、サントラフォードにまで被害は及ばないらしいですけど」

「どうでしょうね、それはあくまで希望的観測だもの。群れの規模によっては、街の周りにまで被害が及ぶカモしれないわ」

「それ以前に、サントラの森の生態系が崩れるのは困る。冒険者ギルドだけじゃねえ。街全体から考えても、あの森の恩恵を失うわけにはいかねえんだ」


 おお。

 どうやら協力してくれる雰囲気だな。ジルバートさんの言い方からすればギルドだけでなく街の正規軍も動いてくれそうだ。

 だが、そんな考えを読み取ったかのようにジルバートさんが首を横に振る。


「だが、問題は――」

「ええ、あの阿呆ね」

「阿呆?」

「アナの言う通りだ。阿呆っていうのはな、この街のトップだよ」

「トップ……つまり町長ですか?」

「あー、そんなもんだ。つまりお貴族様ってこった」

「この貴族がどうしようもないおバカさんなのよ」


 二人のあまりの言い様にちょっとその貴族が可哀想になってきた。

 そんなにダメな奴なのか。まぁ、小説なんかだと貴族とかって、大抵が権力を使って威張り散らすだけの能無しって相場が決まってるけど。

 件の貴族の事を考えていたら、ジルバートさんが結論を出してきた。

 

「とりあえず緊急クエストを立てる。そうすれば特別な事情がない限り、サントラフォードにいる冒険者の協力は得られる」

「緊急クエストが出た場合、現場の近くにいるDランク以上の冒険者は、そのクエストを受ける義務があるのよ」


 アナスタシアさんが足りない説明を補足してくれる。Dランク、つまり中級者以上の冒険者たちが大勢協力してくれるならば心強い。


「おまけに丁度いいタイミングであいつが帰ってきてるからな」

「あいつ?」


 誰のことか聞く前に、ガタンとアナスタシアさんがいきなり立ち上がった。心なしか顔色が悪い気がする。口に入れたデザートが砂でできていた事に気づいたみたいな、苦い表情のままジロリとジルバートさんを睨んでいる。


「あいつって――まさか、アレじゃないでしょうね?」

「いや、今お前が想像している奴で間違いないと思うぞ」

「何でそれを早く言わないのよ!?」

「ついさっき街に着いて、オレんトコに顔出しにきたばっかだからな。言う暇もなかったんだよ」

「ってことは、なに? この建物にいるって――」


 慌てるアナスタシアさんとそれを楽しそうに眺めるジルバートさん。誰の事を言ってるのか解らないオレたちは完全に蚊帳の外だ。

 一体何をそんなに慌てているのか聞こうと思ったら、いきなり扉が勢いよく開いて、男が一人入ってきた。

 奇抜、というしかない男だ。さらっとした栗色の髪にハリウッドの俳優のようなイケメン面。だが、何よりも目を引くのはその男が身に着けている鎧だった。金属で要所を補強した革鎧だが、表面にチャラチャラと無数の金属製のリングのようなものがついている。


「会いたかったよ、ハニー!!」

「うっさい、来るな!!」


 部屋に入ってくるなり、その男はアナスタシアさんに抱き付こうとして――避けられて地面に叩き付けられた。ガシャンと鎧が音をたてる。

 まさか異世界に来てリアルにルパンダイブをみるとは思わなかったな。

 状況に理解が追い付かず、そんな現実逃避な考えが頭をよぎった。だが、そんなオレのことなど眼中にない様子で男はガバッと顔を上げるなり慟哭する。


「ひ、ひどいよ、ハニー!! 再会の熱いハグをよけた上にそんな暴言を吐くなんて!!」

「さて、話を続けましょう」

「おまけに無視!?」


 何事もなかったかのように話を戻そうとするアナスタシアさん。床に這いつくばり、涙目になる男がちょっとだけ憐れに思えてきた。


「あ、あの大丈夫ですか?」

「おや? これはこれは美しいお嬢さん方が3人も。御心配には及びません」

「は、はぁ……それは何よりです」

「マイカちゃん、そのバカと話をしちゃだめよ。バカが感染うつったら大変だから」


 首を横に振りながら、酷いことをアナスタシアさんが言うが、男は気にせずキザったらしい話し方で喋り続ける。


「ほう、マイカさんというのですね。いいお名前だ。後ろのお嬢さん2人の名前もお聞きしても?」

「リ、リノです」

「……オリヴィエラと申します」

「フム。そちらのお二人もマイカさんに負けず劣らず美しいお名前だ。勿論、その美貌も」

「「…………」」

「ああ、失礼。申し遅れました。僕の名はシェイラーム。冒険者の世界では『輪剣』のシェイラームというふたつ名で通っております。以後お見知りおきを」

「その辺にしろ、シェイ」


 気取った仕草でお辞儀をしてみせるシェイラームをジルバートさんが呼び止める。


「失礼しました、師匠。ですが、愛しのハニーに加えて、こんなにも魅力的なお嬢さんを3人も揃えて一体どうしたんです?」


 おい、オレは? 完全にカウントから外れてるぞ。


「ああ、そっちの嬢ちゃんたちはそこにいるスグルって坊主の奴隷だよ。もっとも奴隷らしい扱いは受けていないみたいだが――」

「決闘だ!! スグルと言ったか!? 貴様に決闘を申し込む!!こんなに可愛い女性を3人も奴隷にして毎日、あんなことやこんなことをしているだと!? だれがそんな羨ましい事を許した! 僕は許してないぞ!」


 もうやだ、この人……ついていけない。なんでマイカたちとイチャイチャするのにあんたの許可がいるんだよ……。


「だぁっ! 話が進まん! 一回黙れ、シェイ!!」

「しかし、師匠……」

「師匠、って……シェイラームさんはジルバートさんのお弟子さんなんですか?」


 さっきから気になっていたので、一端、場を落ち着かせるために聞いてみると、驚くべき答えが返ってきた。


「当然だろ。僕とハニーは同じ時期に師匠に弟子入りしていたんだ」


 確かめるようにアナスタシアさんの方を見ると、嫌そうな表情を浮かべながら首を縦に振ってみせてくれた。

 マジかよ。ひょっとして見た目によらずスゲー奴なのか? 

 疑問に思いながらステータスを見てみると――。



 NAME :シェイラーム(36)


 RACE :人族


 JOB  :冒険者Lv76


 HP   :1950/2080

 MP   :210/210


 STR  :112

 VIT  :97

 INT  :64

 MND  :83

 AGI  :159


 SKILL:剣術Lv5

       短剣術Lv5

       投擲術Lv5

       自然魔導Lv3

       礼儀作法Lv4



 備考   :


シェイラームのスキルは良いものを思いついたら変更すると思います。

しばらく悩んだんですが、あまりしっくりくるのをおもいつかなかったので……。

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