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第24話

しばらくぶりになってすいません。

 修行を開始して3日が過ぎた。

 自然魔導を習得したのはオレとリノの2人。マイカとリビーはまだ習得できていない。今もアナスタシアさんの指導の下、修行に励んでいる。


 一方、オレとリノの2人は――、


「行くの、ご主人様! 必殺『ツインスワロー』」

「甘い、秘技『ツバメ返し』!」


 エアホッケーをしていた。

 といっても、ただ遊んでいるわけではない。前世のゲーセンであったエアホッケーとは少しルールが違っていて、自然魔導で起こした風を使ってパックに直接触れることなく打ち合う、習得した自然魔導の練習のためなのだ。


 ちなみにリングはアナスタシアさんが作ってくれた。自然魔導で水を生み出し、それを錬魔導で氷へと変化させた。


 錬魔導についても、この3日である程度の事は教えてもらった。

 錬魔導というのは、いわば念魔導の反対のようなもので、生物ではなく命のない物質に作用する魔法らしい。

 例えば、このエアホッケーのリングのように水の温度を変えて氷に変化させたり、空気中の酸素濃度を操って真空を作り出したり、錬金術のように物質を練成したりすることができる。


 オレの印象だと、科学と魔法をごっちゃにしたって感じだろうか。それならことわりつまり科学的な知識がある程度ないとイメージしにくいっていうのも理解できる気がする。


「クッ」

「ホラ、マイカちゃん。坊やとリノちゃんが気になるからってよそ見しない」

「わ、私は別に……」


 マイカにアナスタシアさんの注意が飛ぶ。

 う~ん、マイカは大分苦労してるな……。リノやリビーと違って魔法スキルを所持してなかったし、MPも少なかったからなあ。

 

 

 そんな感じで、午前中は魔法の修行、午後は冒険者としての活動というハードなスケジュールの1ヶ月を過ごした。



 結局、1ヶ月の修行の間でオレは自然魔導、錬魔導、念魔導の3つのスキルを、リノが自然魔導のスキルを習得したが、マイカとリビーは1つのスキルも習得できなかった。

 ちなみにオレも聖魔導は習得していない。もっと言えばアナスタシアさんも習得していない。その理由は――。


「聖魔導っていうのは神様の存在を感じ、その力を借りる魔法よ。言ってみれば奇蹟みたいなものね」


 そのためには神を信じ、敬う心が必要らしい。だが、


「あたしが神様なんて信じると思う?」


 思いません。


 オレの場合、信じる事はできるだろう。なにせ現物にあってるし。だけど敬うってのはな~。

 ……聖魔導についてはあきらめるしかないかもしれない。



 そんなこんなで修行最終日。


「今日で修行は終わりよ」

「どうもありがとうございました」

「お世話になったの」

「……ありがとうございました」

「………………お世話になりました」

 

 アナスタシアさんの言葉にオレとリノ、少し遅れてリビーとマイカがお礼を言う。だが、マイカとリビーが俯いたままだ。とくにマイカの落胆っぷりが激しい。


「リビーちゃんもマイカちゃんも落ち込んじゃダメよ。寧ろ坊やが異常なのよ。普通こんなに短期間で複数の魔法スキルを習得するなんて聞いたこともないわ」


 スキルは本来長い期間かけて習得するものなんだそうだ。魔法スキルに関しても、魔術学校などで知識を学んだり、教会などで修行を繰り返してイメージを得るらしい。


 リノやリビーのように持って生まれた才能で、生まれながらに身に着けていたりすぐに習得するほうが珍しい。実際アナスタシアさんも自然魔導は生まれついて習得していたらしいが、それ以外の魔法スキルは魔術学校に通う事で身に付けたそうだ。


「ハイ……」


 そんなアナスタシアさんの慰めを聞いてもマイカの表情は晴れない。

 なんとかしてやれないだろうか……。


 オレがそんな事を考えていると、アナスタシアさんから思いもよらぬ発言が飛び出した。


「それじゃ、最後にこの鑑定石でスキルの確認をしましょうか」


 何!? スキルの確認!?

 ちょっと待て!


 しかし、嫌な汗を流すオレに気付くことなくアナスタシアさんはどんどん話を進めていく。


「この鑑定石ならスキルの確認ができるから。スキル確認までできる鑑定石を個人で持っているのはなかなかいないのよ。じゃ、まずはリノちゃんからね」

「わかったの」


 言われるままにリノが鑑定石に手をあてると、ステータスが表示される。パラメータまでは表示されないみたいだけど、スキルが表示されるのはまずい。

 

 どうやって誤魔化そうか悩んでいるうちに、いつの間にかマイカとリビーもスキルを確認し終え、オレの順番が回ってきていた。


「それじゃ、最後は坊やの番ね」

「いや、あのアナスタシアさん、オレはちょっと遠慮しとこうかな~って……」


 オレは曖昧な笑みを浮かべながら断ろうとするも、アナスタシアさんはニヤニヤと不思議の国にいる猫のような笑顔を作る。


「ふうん……。やっぱり坊やには人にはあまり言えない秘密があるみたいね」

「ええと、まぁ。これでも冒険者の端くれですから」

「でも、お姉さんは悲しいな~。自然魔導に念魔導、それに錬魔導と3つも魔法スキルを教えてあげたのに、こんな態度をとられるなんて」


 うぐ……。

 そりゃ確かに修行に関しては感謝してますけど……。


「懇切丁寧に教えてあげたつもりなのに、その恩師を信用してはくれないんだ~、シクシク」

「わ、わかりましたよ。その代わり、オレのスキルについては他言無用ですよ。あと何があっても詳しい説明とかは無理ですからね」


 わざとらしく泣き真似まで始めたアナスタシアさんに負け、どうにでもなれという気持ちで鑑定石に触れる。



 NAME :立花 スグル(21)


 RACE :人族


 JOB  :漂流者ストレインジャーLv2


 SKILL:マルチスキル

       神童

       メニューウィンドウ

       奴隷成長補正

       御恩と奉公

       万能鑑定Lv2

       ラーニングLv1

       体術Lv2

       回避Lv2

       武器奪取Lv1

       短剣術Lv1

       商談Lv2

       剣術Lv1

       盾術Lv1

       自然魔導Lv1

       念魔導Lv1

       錬魔導Lv1



「ハァ!? な、何コレ!?」

「…………他言無用って約束ですよ」


 鑑定石によって表示されたステータス画面を見て、アナスタシアさんが驚きの声をあげ、オレはそんな彼女に精一杯不本意だ、という口調で釘を刺す。


「こんな量のスキル見た事ないわよ? 私が知らないスキルも混ざってるし……。坊や一体何者なの?」

「何者も何も、ただの坊やですよ」

「…………」


 アナスタシアさんはオレの返事にジットリした目を向けながら黙り込む。マイカ達はオレがスキルを見られるのを嫌がったからか、離れた所で様子を窺っている。

 

「……わかったわ。色々聞きたい事もあるけど、坊やとの約束だし追求はしないわ。もちろん他言したりもね」

「ありがとうございます」


 ため息をつくアナスタシアさんにお礼を言いながら、ついでに気になってた事を尋ねてみる。


「やっぱりオレのスキルの量っておかしいですか?」

「そりゃおかしいわよ。スキルっていうのは本来長い時間をかけて習得するものだし、習得できる数にも限界があるものなの」

「限界?」

「ええ。人族の場合、習得できるスキルの数が10を超える事は滅多にないわ。この数は生まれつき決まっているの。少ない人だと3つくらいで限界が来る人もいるわ」


 人族よりも寿命が長いエルフ族などは、もっとたくさんのスキルを習得できるらしい。オレの場合はマルチスキルがあるからだろう。


 やっぱりあまりオレのステータスを他の人に見せるのは得策じゃなさそうだな。目立ちたくないし。


「お姉さん、本気で坊やの事が気に入っちゃったわ。どう? アタシと結婚しない?」

「遠慮しときます」

「即答!? もうちょっと考えてもいいんじゃない?」


 正直、色っぽい流し目をくれながら言われるとグラッとくるものがあったが、その瞬間、背後に強烈な冷気を感じたからな。

 それに年の差を考えろよ。15以上離れてるんだぞ。


「……なんか失礼な事考えてなかった?」

「いえ、全く」


 心を読まないでください。


「ま、いいわ。坊やとはこれからも縁がありそうだし。それじゃ、修行はこれでお終い」

「「「「お世話になりました」」」」


 最後にもう一度お礼を述べ、オレ達はアナスタシアさんの家を後にした。

引越しやらなにやらで身の回りが忙しくて更新が止まってしまい、すいませんでした。

できるだけ更新ペースを上げていきたいと思います。

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