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第20話

「さて、今日はどんな依頼を受けるか……」


 朝食を済ませてすぐ。

 朝一でギルドに乗り込んだオレは人気の無い依頼掲示板の前で悩んでいた。


 『木精霊の蜜』を売った事で当分の生活資金は得る事ができたので、そんなにガツガツ稼ぐ必要はないとはいえ、うちは4人家族だしな。貯蓄はあった方がいいだろう。


「Lvも上げたいし、討伐系の依頼がいいかな……ん?」


 アレでもない、これでもないと依頼書を眺めていると、1枚の依頼書に目が留まった。


『接客、調理スタッフ急募。料理スキル持ちの場合優遇します。軽食屋ガリアン・サンド』


「ガリアン・サンドって私達がよくお昼を買いに行くお店ですね」

「レッドベーコンサンドおいしいの」

「スタッフ募集ですか。何かあったのでしょうか?」


 オレが目を留めた依頼書を3人も覗き込む。マイカの言う通り、ガリアン・サンドはオレ達が昼食によく使用する軽食屋である。サンドイッチ中心のメニューで、店内で食べる時もあるが大抵の場合、街を出る途中にテイクアウトでお弁当として買っていく事が多い。

 おススメメニューはリノが好きなチリソースで炒めたベーコンをシャキシャキのレタスと一緒に挟んだレッドベーコンサンドだ。


 年が近いからか、マイカ達は店に勤めているウェイトレスの女の子と仲が良い。店に行くとよくお喋りをして、ウェイトレスの女の子達が奥で調理をしている店長のような人に怒られたりしている。


 依頼のランクはF。

 報酬はあまりいいとは言えないけど、料理スキル持ち優遇か。


「マイカが料理スキル持ってるし、受けてみるか」

「ハイ」

「レッドベーコン食べ放題なの」

「いつもお世話になっていますし、お手伝いできるならうれしいです」


 なんだか冒険者の仕事というかバイトみたいだが、店の事が心配そうな3人はオレがそういうと嬉しそうに全員が賛成した。

 でも、リノ……食べ放題にはならないと思うぞ。



「こんにちは~」

「すいません。今日はまだ開店してないんです~」


 いつもは活気がある店のドアを開けると、顔見知りのウェイトレスの1人が申し訳なさそうな顔で奥から出てきた。栗色のショートヘアとパッチリした瞳が印象的な女の子だ。確かセフィラさん……だったかな。


「あ、いえ……。客じゃなくて、依頼を受けて来たんですけど」

「あら? スグルさんにマイカちゃん達じゃありませんか! わ~、あなた達が依頼受けてくれたんですね! ありがとうございます」

「セフィラさん、一体どうしたんですか?」

「実は――」


 マイカの質問にセフィラさんが詳しい事情を教えてくれる。

 それによると、店長であり調理を担当しているセフィラさんのお父さんが熱を出して寝込んでしまったらしい。おまけにいつもはセフィラさんを含めて3人いるウェイトレスさん達も、他の2人が体調不良と帰省が重なって休みらしい。


 不運が重なりすぎだろ。ボロボロじゃねーか。


「それで、慌てて朝一でギルドに依頼を申し込んだの」

「なるほど」

「そういうことだったんですか……」


 昼のラッシュまでに依頼を受けてくれる人が来なかった場合はお休みするしかないと思っていた所にオレ達がやってきたということらしい。


「とにかく急いで仕込みをしましょう。料理スキルを持っている人はいる?」

「私が」

「よし、それじゃマイカちゃんは厨房に入って。リノちゃんとリビーちゃんは接客を頭に叩き込んで。スグルさんはマイカちゃんの手伝いで」


 要するにオレは雑用って事ね。

 そりゃまあ料理スキルは持ってないし、接客係はリノやリビーのように可愛い女の子がいいだろうけどさ。


 セフィラさんの指示ですぐに動き始める。マイカは厨房でレシピを見ながら仕込みを始め、リノとリビーはセフィラさん指導の下、接客の練習中。オレはマイカの手伝いだ。


「セフィラさん、味付けはこんな感じでしょうか?」

「うん、いい感じ! さっすがマイカちゃん! スグルさんもスープの灰汁取りよろしく」

「……了解」


「いらっしゃいませ。おススメはレッドベーコンなの」

「いらっしゃいませ、ようこそおこしくださいました。ご注文はいかがいたしましょう」


 リノとリビーも接客を練習している。


「急いで! 後1時間もしたら開店するから」


 そんな慌ただしい付け焼刃の準備の後、軽食屋ガリアン・サンドは不安と共に開店した。


ちょっと短いですが、キリがいい所で終わります。


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