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プロローグその2

その2です。

 つまりこの爺さんが言う『ゲームをして欲しい』というのは……。


「自分が関わることのできない世界ゲームに入って生活しろってことか?」

「そう、その通りじゃ」


 楽しそうじゃろう、と子供みたいな笑顔を浮かべる爺さん。だが、ここでいきなりイエスと答えるほどオレはバカでもない。必要なのは情報だ。


「ちなみにその世界っていうのは、どういうところなんだ?」

「う~ん、なんと言えばいいかのう。オーソドックスなRPGという感じかのう」


 RPG知ってんだ。まあ、暇なときに人間の様子観察してたって言ったしな。


「つまり剣やら魔法やらが出てくる中世ヨーロッパ、みたいなイメージでいいのか?」

「そんなイメージでいいと思うぞ」


 フム。それは心躍るな。


「だが断る!」

「なぜじゃ!」

「まず理由が解らん。どうせ爺さんには遊べないんだろ? どうしてオレにプレイして欲しいんだ?」


 うますぎる話には必ずウラがある。

 納得いく理由がないと、うまい話に乗ることなどできん。


「それは、ホラ、解るじゃろう。せっかく創ったのじゃし、結構上手く創れたと自分でも思うし……」

「要するに自慢したり、感想をもらったりしたいのか」


 モジモジしながら答える爺さんに冷めた気持ちで確認する。その気持ちはまぁ、分からんでもないな。だけど、モジモジするな。女の子がやったら可愛いがジジイがやっても殺意しか沸かん。


「わ、解ってくれるか! ならば――」

「だが、それはオレがその世界に行かなきゃならない理由にはなり得ないよな」

「むう、それは……」


 オレの返事に言葉をなくす爺さん。実際の所、内心は異世界転生キターという気分なんだが、そんな様子は微塵も表に出さず、さらにたたみかける。


「大体、本当ならオレはこのまま死後の世界に行って輪廻転生とやらで新しい命になるはずじゃないのか?」

「本来ならその通りなんじゃが、その……お主が死んだのが丁度いいタイミングじゃったから、輪廻の前にちょっとワシのわがままを聞いてもらえんかと思って――」

「魂を拉致したわけだ」

「うぐ」

「そんなやつの頼みをホイホイ聞くようなお人好しがいると思うか?」

「わ、わかった。では、お主に特別な能力を授けてやろう」


 クックック、バカめ。計画通り。これでチートモードで異世界無双ができる。

 オレは小躍りしたいのを堪え、仕方ないといった表情を保ちながら能力とやらを確認する。


「まずはメニューウィンドウじゃ。これを使えば自分のステータスを確認したり、マップ画面を呼びだしたりできる」

「……んなもんゲームなら普通だろ?」

「お主の考える、テレビやパソコンの画面でやるゲームならその通りじゃが、ワシの創ったゲームはそういう次元を超えておる。ゲームの中でもう一度生きるようなものじゃ」

「……ちなみに死んだら?」

「そこで終わりじゃ。そなたの魂は輪廻転生の輪の中に戻る」


 コンテニューはなし、と。つまり、ゲームをプレイするんじゃなくて、異世界に転生するみたいなものだな。


「要するにワシが創ったもう一つの世界で生きるんじゃからな。お主今までの人生で自分の能力を数値化したり、頭の中で行ったことのある場所を地図として思い浮かべることができたか?」

「そりゃ、無理だな」

「ちなみにメニューウィンドウにはアイテムボックスも付いておる」

「メニューが便利なのはわかった。……だがそれだけなら――」

「まだ終わりと言っておらん」


 立ち去るような演技をするオレの裾を、爺さんが引っつかむ。


「全くわがままやつじゃ」

「あんたにだけは言われたくねーな。人の人生をわがままで振り回してるようなもんだろ、これ」


 爺さんは自分でも言い返せないと思ったのか、悔しそうな顔をするが何も言い返さず、咳払いで誤魔化した。


「それから、お主には特別なスキルをやろう」

「特別なスキル? 内容は?」

「それは教えられん。ゲームは自分で試行錯誤してこそ楽しいじゃろ?」


 むう、それは正論だな。攻略本のチャートを一から全部見ながらプレイしてもつまらんからな。


「確認だけさせろ。そのスキルとやらは有意義なものなんだろうな?」

「それは保障するぞ。というか、使いこなせば世界征服も可能やもしれん」

「ならば、いいか」

「もうよいかの? そろそろ出発せんと時間が余りないからの」

「あ? 死んだんだし、時間なんて腐るほどあるだろ」


 死体だけにな。……うん、つまらんこと言うのはやめよう。


「実は早いトコお主をゲームの世界に送りこまないと冥界神に見つかってしまうからのう」

「…………見つかったらまずいのか?」

「ワシが怒られる」


 子供か! とか思ったが、異世界転生の話までうやむやになかったことにされても困る。


「わかった。だったら早くしろ」

「おお、やる気になってくれたか。それじゃ、ゲームオーバーになったら感想を聞かせてくれ」

「いいけど、それって下手すれば50年くらい先になるんじゃないか?」

「なんじゃ50年くらいすぐじゃろ。それではゲームを開始するぞ」


 やっぱ神様ってスケールちがうな。

 そんな事を思いながらオレは心地良い浮遊感の中で目を閉じた。


思ったよりダラダラと長くなっちゃいました。

読んでくださった方、ありがとうございます。

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