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第13話

今回ちょっと短めです。

「オリヴィエラ!」

「はいっ!」


 掛け声と同時、斜め後ろからオリヴィエラの槍が突き出される。オレとつばぜり合いの状態にあったミニゴブリンにそれを避ける手段はなかった。


「ギャィ!?」


 甲高い叫び声を上げるミニゴブリンの脇腹には、グッサリとオリヴィエラの持つ槍の切っ先が刺さっている。痛みのせいか、元から皺くちゃの老爺のような顔をさらに歪ませるミニゴブリン。その隙を逃さず、反対側から回り込んだマイカが気合と共に、右手の剣を横薙ぎに一閃した。

 断末魔を漏らす間もなく、ミニゴブリンは首を落とされた。

 周囲を見回し、近くに敵影がいないことを確認してから、剣を鞘に戻しながら一息つく。


「ふぅ……」

「お疲れ様なの」

「ん、リノもお疲れ。マイカとオリヴィエラも大丈夫か?」


 後衛にいたリノが差し出してくれる水筒を、傾けて喉を潤しながらゴブリンに止めを刺した2人の無事を確かめる。


「大丈夫です、ご主人様」

「何も問題ありません」


 2人が刃に付いた血を近くの葉っぱで拭いながら答える。特に怪我することもなく、3体のゴブリンを始末することができた。ここまでは、簡単にだが立てた作戦が有効に働いているみたいだ。


 オレが先頭で敵の攻撃を引きつけ、マイカとオリヴィエラが隙を狙ってダメージを与える。だが、この作戦において核となっているのは後衛にいるリノの念魔導だ。念魔導の力で敵の視覚を妨害し、マイカとオリヴィエラの姿を敵に認識させないようにしている。

 リノが言うにはLvが低い相手にしか効きにくいし、人の体くらいの範囲を阻害するのは短い間しか効かないらしいが、充分に効果的だと思う。


「おっ!」


 一息ついてステータスを確認すると、全員のジョブのLvが1ずつ上がっていた。マイカは6、リノは5、オリヴィエラは7の村娘に、オレは漂流者がLv2に。

 う~ん……。なんだかオレのLvって上がりにくくないか? オレが以前、ミニゴブリン2体と盗賊を2人倒してもLvは上がらなかったのに、マイカ達は3体のミニゴブリンを倒したらすぐLv上がった。そもそもLvってどうやって上がるんだろ?


「Lvの上がり方、ですか?」

「うん」


 休憩中に聞いてみると、マイカがざっくりとだが答えてくれた。


「スキルのLvは、そのスキルに関連する行為を繰り返すことで上がると言われています。例えば剣術ならば素振りをしたり、剣を使った戦闘を行うなどですね」


 そういや、オレの万能鑑定もステータスをチェックするために何度も使ってたら、いつの間にか上がってたしな。


「それに対し、ジョブのLvは基本的にあらゆる経験の積み重ねによって上がります。本を読んで知識を蓄えたり、料理の練習をしたりといった行動等もその経験には含まれます。ただ、そういった日常の行動よりも、魔物と戦う等の戦闘行為を繰り返す方がLvは早く上がると言われています」


 なるほどね。でもその話を聞く限りだと、やっぱりオレのジョブLvは上がりにくいって結論になる気がするんだけど……。い、いや、まだLvが1上がっただけだ。結論を出すにはまだ早い。もう少しデータが揃ってからじゃないと。


 不安を心の底にしまい込んで、再びミニゴブリン討伐のために立ち上がるオレだった。


 

 結局、怪我らしい怪我もないうちに5体のミニゴブリンを討伐することができた。

 マイカのギルドカードにミニゴブリンが3体、オリヴィエラに2体、未報告の討伐記録欄に記されている。ギルドに戻ってこれを報告すれば依頼は達成となる。依頼されていなくても、モンスターを討伐すればその分の討伐報酬はもらえるが、今日は初日だし欲張る事もないだろう。


 戦闘後、ステータスを確認すると剣術と盾術を習得していた上に、回避のスキルLvが2に上がっていた。スキルLvの方は神童の影響もあってか、上がり方が早い。ただ、マイカとリノ、それからオリヴィエラに御恩と奉公の効化で付けておいた回避のスキルはLvが上がっていなかった。一端移した後は、Lvの上がり方は独立した物になるらしい。

 しかも試しに、一回外してから付け直してもLv2にはならなかった。どうやら御恩と奉公のスキルで、スキルを付ける時はLv1になってしまうようだ。


 ちなみにマイカも剣術、オリヴィエラは槍術を習得していた。どちらもステータスでLv0と表示されていたスキルだ。Lv0で表示されているのは、才能があってすぐに習得できるスキルなのだろう。

 ということはリノは念魔導ともう一つ、自然魔導を習得しやすいってことになるな。魔法ってどこかで教えてもらえないだろうか。ギルドで聞いてみよう。


「さて、そろそろ戻ろうか」

「ご主人様。ゴブリンの死骸はどう致しましょう?」

「え? お墓とか作らないとダメ?」

「いえ。そうではありません。私も詳しくはありませんが、魔物の死骸からは有用な素材が取れると聞きます。ミニゴブリンはそこら中にいるような魔物なので、貴重な素材とはいかないでしょうが、持ち帰ったらお金になるかもしれません」


 オレのつまらない冗談にも全く反応することなく、真面目な口調で説明するオリヴィエラ。だけど、荷車とかがあるわけでもないし、死体を背負って歩きたくはない。3人は奴隷だし、命令すれば内心はどうあれ運んでくれるだろうけど、そんなことさせたくないな。


「今回はいいよ。オリヴィエラの言う通り、こいつらの素材が高く売れるとは思えないし、持ち運ぶための準備もしてないしね」


 そう言ってオレ達はサントラの森を後にした。



 のんびり歩いて街まで戻り、パウエルさんに挨拶をしてからギルドに向かう。


「あら、お早いお帰りですね」

「そうですか?」

「ええ。ミニゴブリンは複数の群れで行動する事が多く、武器も所持しているため、初心者の方ですと苦労する事もよくありますから」


 スグル様達は優秀なのですね、とニッコリ笑う受付のお姉さんに、討伐記録が残っているマイカとオリヴィエラのカードを渡す。アレ? ……コレひょっとしたら、オレは後ろで偉そうに奴隷に命令してるだけのヤツだと思われないかな。


「……アラ? スグル様のカードはよろしいんですか?」

「い、いえ、僕は盾役に徹していたので。決して後ろで縮こまっていた訳じゃ――」

「そうではなく、討伐したゴブリンの死骸はどうなさったのですか?」


 しどろもどろで言い訳をしようとしたが、どうやら話が違うらしい。


「死骸ですか? 持ち運ぶ手段がなかったので捨ててきましたが……」


 オレの返事にお姉さんは一瞬、怪訝な表情を見せてから「あっ」と、何かを思い出したように手を叩いた。


「申し訳ありません。説明を忘れてました。討伐したモンスターはギルドカードに触れさせれば死骸を回収する事ができるんです」

「マジっすか……」


 他の冒険者達はどうやって死骸を持ち帰ってるんだろう、と帰り道に疑問に思っていたのだが、そういう事だったのか。

 申し訳ありません、と何度も頭を下げるお姉さんに、気にしないよう慰めながら納得する。


 すまなそうな表情で説明してくれるお姉さんの話によると、ギルドカードには空間魔導という特殊な魔法が埋め込まれているらしい。空間魔導自体は100年ほど前に失われた魔法らしいが、カードを発行する魔導機械が各地の冒険者ギルドには残っているそうだ。


 益々スゲーな、ギルドカードと妙な感心をしながら依頼達成の報酬だけを受け取り、今日は早めに宿に戻ることにした。

ちょっと投稿が止まってしまい、すみませんでした。

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