プロローグその1
初投稿です。
宜しくです。
白――
気がついたら、視界全てが白一色に塗りつぶされている空間に、オレは一人ポツンと立ち尽くしていた。
――えーっと……。
なんでオレこんなところに? ちょっと待て、思い出せ。
記憶が確かな部分を一から確認してみる。
まず自分の名前――立花 スグル。これは確実。
次に家族構成――祖父母は父方、母方共に健在。両親に弟、妹が一人ずつ。これもよし。
現在、実家から出て、コンビニでバイトしながらワンルームマンションで一人暮らし。
そうだよ、今日も昼過ぎに起きて、シャワーを浴びた後に買い物行ってから作ったメシを一人で食って、テキトーに時間を潰した後、夜勤のバイトに出かけたんだ。
勤務中も特に問題はなかった。それで朝、交代の人が来てから店を出て、家に帰ろうとして――。
「思い出したかの?」
突然、後ろからかけられた声に飛び上がる。驚いたオレが振り向くと見たこともない白い爺さんが一人立っていた。この空間に合わせたような真っ白なローブに白木の杖。髪の毛や長いヒゲまで真っ白だ。なんだか某指輪のお話の映画に出てくる魔法使いみたいだな。ちなみに死んだと思わせておいて生まれ変わってきたバージョンの方。
「あんた、誰…………っすか?」
警戒心は出しているが、明らかに年上の人みたいだから、一応最後の部分を敬語にして問う。
だが、白の爺さんはオレの問いかけを無視して、再び同じ質問を繰り返す。
「思い出したかの?」
「……思い出したって何を」
「じゃから、自分に何が起こったのかをじゃ」
言われてさっきまで脳裏にあった一番新しい記憶を思い返す。
バイトが終わって欠伸を噛み殺しながらチャリを走らせていたオレが路地から出た瞬間、走ってきたトラックに――。
「……轢かれ、た?」
「フム、どうやら記憶は残っているようじゃの」
かすれたオレの呟きを聞いた爺さんは無表情のまま頷いた。
「それで、オレはどうなったんだ?」
「即死じゃったよ、残念ながら」
欠片も残念そうな表情を見せないままに言う爺さんを殴りたくなったが、八つ当たりでしかない。深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから再び口を開く。
「即死だって言われてもな。今現在、こうして爺さんと話してるんだが……、ここは死後の世界とかそういう感じか?」
言いながら全身を確認してみる。ジーンズにTシャツ、その上にフードつきのパーカーというお洒落もくそもないオレの普段着だ。確かバイトからの帰りの格好と同じだな。ただ、ポケットに入れてあるはずの財布と携帯がなくなっていた。
「あ~、ウム。死後の世界……とは少し違うの。ただまぁ、お主が生活していた世界ではないということは確かじゃ」
「?? 何言ってんだ? そもそも爺さん、あんたは何者なんだ?」
「ワシか? ワシは、そうじゃな。お主の感覚でいうと、『神様』みたいなものかのう」
「…………あー、わかったわかった。そういうのは今度付き合ってやるから。ついでに知り合いのいい病院も紹介してやるから」
「な、なんじゃその目は! お主信じておらんな?」
いやだって……『神様』みたいなものかのう、とか(笑)
この分だと、オレが死んだとかのくだりも嘘っぽいな。ちょっと映画かなにかのシーンと記憶がこんがらがっちゃってるだけだろ。このだだっ広い真っ白な部屋には驚いたけどさ。さてと、出口はどこなんだー?
「ムムム! ならばこれを見てもまだ信じられないと言えるか?」
オレが無視して出口を探し始めたのが気に入らないらしい自称神様(笑)は、なにやらブツブツ呟きながら杖を一振りした。
すると、杖を振られた空間が歪み、スクリーンのように変化し、映像が浮かび上がった。
え……? 何、今の? どんなトリック使ったよ、この爺さん。
見たこともない手品に驚いたが、その手品によって生み出されたスクリーンにはさらに驚くべき映像が映し出されていた。
「親父? それにお袋も、なにやってんだ?」
画面には黒い礼服を着た親父やお袋をはじめとした親戚連中が映っている。映像が少しずつ横にずれていくと、次はオレの友達の姿も見える。全員が親父たちと同じように黒い礼服を着て、俯いている。
つまりコレは葬式の映像であると。
そして画面が変わり、花に囲まれた棺が映し出され、その奥の祭壇には亡くなった故人の写真があった。その写真に写っていたのは――。
「…………オレやないか~い」
イカん。あまりの事態に口調がおかしくなってしまった。
「これで嘘でもなんでもないとわかったじゃろう? つまり――」
呆然と固まるオレを、重々しい雰囲気をだしながら爺さんがビシッと指差す。
「お前はすでに死んでいる」
殴りました。思いっきり。
「な、何をするんじゃ! いたいけな老人に向かって!」
「やかましい! 人が死んだっていうのに、そんな小ネタ挟むんじゃねー!」
大体、なにが『いたいけな老人』だ。お前自称神様(笑)なんだろ!
なおも殴ろうと拳を振り上げるオレと必死に逃げ回るジジイ。
不毛な追いかけっこをしばらく続けた後、息を整えながら爺さんがこちらをうかがうように聞いてくる。
「とにかくじゃ。自分が死んだというのは理解したじゃろう」
「まあな」
認めたくはないが、あんな映像見せられたらな。
オレみたいな一般人にあんな大掛かりなドッキリをしかけるはずねーし。
しかし、それならここは一体どこなんだ? 確か爺さん、死後の世界とは違うみたいなことを言っていたような……。
「そうじゃ。本来なら死んだお主の魂は死後の世界へと旅立ち、輪廻転生して別の命として生まれ変わる」
「なら、どうしてオレはこの訳の分からない空間にいるんだ?」
もしかして救済措置か? 今までの善行を評価してよみがえらせてやろうとかそんなノリなのか?
「う~ん、ちょっと違うが近いかのう。ちなみに善行を評価云々のくだりは全く違う。ていうかお主言うほど善行を積んでなんかおらんじゃろ」
やかましい!
「簡単に言うとじゃな。お主にゲームをして欲しいんじゃ」
「…………は?」
なんじゃそら? 意味がわからん。
全く理解ができないオレのために爺さんは一から話し始めた。
「実は神様というのは存外暇でのう」
「をい、自称神」
「いやいや、実際暇なんじゃよ。最近はお主等人間も独り立ちして、昔ほど手がかからんようになったからな」
なにをジジイみたいなことをって、見たまんまか。ちなみに昔ほどっていつの頃だよ。
「ざっと3~4千年くらい前かの」
「スケールが違いすぎるな」
「神様じゃからのう。……話は少し変わるがお主、暇なときなにをしている?」
「何をって……まぁ、本読んだり、ゲームしたり――」
「それじゃ!」
「な、なんだよいきなり」
「お主等人間を観察しておって気づいたんじゃ、暇つぶしにはゲームをするものだと」
いや、別にみんながみんな暇なときにゲームをやってるわけじゃないと思うけど。
「そこでワシも同じようにゲームの世界を新しく創ってみたんじゃ」
…………。
…………イヤイヤ。
ゲームを作るんじゃなくて、ゲームの世界を創るって。
スケール違いすぎだろ。
「これでワシも暇つぶしにゲームができる。新しく世界を創ったワシは喜んだ。そしてそこで気がついたんじゃ」
「気がついたって、何に?」
「ワシは神様じゃからのう。神はみだりに自らが創造した世界に関わってはいかんのじゃ。つまり短い時間しかその世界に入ることができん」
一呼吸の間、固まった後。
オレは目の前の悲しそうな表情をした爺さんを見て爆笑した。
「ぎゃっはははは。気づけよ、創る前に気づけよ! バッカじゃねーの! ククッ、ギャハハハハ」
「う、うるさい! 神を指差して嗤うんじゃない!」
つまり、暇つぶしのためにゲームを買ったはいいけど、一日五分しか起動させられないみたいな感じか。それじゃ全然暇をつぶせねーじゃん。
しばらくオレが笑い転げていると、爺さんは終いには膝を抱えて「ルルル~」と変な歌を口ずさみ始めたので、息を整えてから慰める。
「悪かったよ、笑って」
「いいんじゃもん、別に。創ってる間は結構楽しくて、暇つぶしになったんじゃから」
「そっか、そっか。だったらそんなに拗ねるなって」
しかし、それならオレはなんでここにいるんだ?
と、そこでさっきの爺さんの台詞を思い出す。
「そう、それで本題じゃ」
オレの考えを読み取ったかのように、爺さんは最初の頼みを繰り返す。
「お主にゲームをして欲しいんじゃ」
ちょっと長くなっちゃたのでその2へ続きます。