自ずと答えは見えてくる。
「そうしたらさ、どんなとんでもない間違いでこの家に来たか、教えてくれない?」架空の一点から解放されたように、僕は悪魔に目を合わせて尋ねた。
「じゃあ、お前、まずこのちんけな鳥かごから俺を出してくんねえか?」悪魔はふて腐れたようで、そっぽを向いてしまった。
「別にいいけど。ただ、天使治安維持委員に報告するだけだけどね」と嫌味たらしく言い返す。本当は、別によくなんかなく、かなり気になっている。何せ昨夜は頭がガラスに当たったからか、悪魔は気絶していて何も事情を訊けなかったから。
ち、と悪魔は舌打ちをしてこっちに向く。
「別に、よくなんかないんだろ? 本当は」悪魔は僕の目を覗き込んで、さらに嫌味たらしく言ってくる。「俺はな、心の中を読むチカラがあるんだよ。それでお前の思っていることがわかる。今はこのかごの中にいるから少しだけどな」
一体この悪魔は何なんだ?人さまの家に、いきなり窓をぶち壊して入ってくる。それにとどまらず、人さまの心の中に、勝手に覗き込んでいる、とか言うではないか。ただ、不機嫌にはなれなかった。むしろ、興味が湧いてきた。藪の中に蛇がいるのが分かっているのに、それを突いてみたくなる衝動と似ていた。
「仕方ねえな。そんなに俺に興味があるなら、」――そして、柳佳子を彷彿とさせる話途中のため息を挟んで――「話してやるよ」と言った。
悪魔は、いや、彼は、かごに背をもたれて、空気中の見えない固定点に意識を集中させた。そして、今までの話ぶりが嘘のように、重く語り始めた。霊能者に霊が乗り移った時を思い出した。
そして、占い師にありがちなセリフもなぜか思い出した。
「自ずと答えは見えてきます」と。
きっと、この目の前の悪魔は、何なのか、ということに対してだろう。