表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不思議な人。  作者: 薄桜
19/20

1つの変化が他の変化を引き起こす

19話目です。

本編最終話になります。

・・・ではどうぞ

翌日改めて、昨日寝てしまった川土手にカメラを持ってやって来た。

今日は昨日と打って変わって、少し花曇り。

そんな言葉があるという事は、これも風情ある光景なんだろう。

川の土手に沿って植えてある桜の木。

どこに行っても桜がある。

花の季節以外は、別に気にも留めないが、春になると一斉に薄いピンクに染まる。

日本人は、本当に桜が好きなんだなって思う。

一通り満足するまで撮り終わると、回れ右。

・・・次は、あそこ。

少し小高い場所に、鳥居が見える。

あそこにはヤマザクラがある。

ソメイヨシノより時期が遅く、濃い色の花が咲く。

あの花が咲いたら、また撮りに行こう。

「あ、」

あ? 後ろから聞こえた声に振り向くと、史稀がいた。

こっちから声をかけてばかりだったから、かけられるのは不思議な気分だ。

声をかけられたのかどうか、微妙な言葉ではあるが。

夕方に突っ立ってる姿や、キャンバスに向かう姿ばかり見てたから、

昼日中に、ただ外を歩いてるだけで新鮮さを感じる。

しかも今日はひげが無い。

「どしたの? 珍しい。」

「俺だって、散歩くらいするよ。」

憮然とした答えに、笑みがこぼれる。

茜さんがオモチャにした理由がよくわかる。

「弟は大変だ。」

「・・・昨日は、悪かったな、姉が。」

いやいや、私より大変だったんだろう?

そんな顔をしてるぞ。

「いいよ、珍しい経験だったし、」

「珍しい?」

「最初から敵わないと思った相手は、初めてだ。・・・さすが本職。」

「・・・あれは、なる前からだ。」

二人顔を見合わせて、思いっきり笑った。


「いい表情するじゃん。」

「・・・は?」

「いっつもつまんなそうな顔ばっかしてないで、そうやって笑ってなよ。」

「・・・。」

「辛気臭いと、幸せが寄り付かないぞ。」

意地悪く笑い、背を向けて歩き出す。

「辛気臭くて悪かったな。」

足音がついてくる。

「なぁ、お前にとって写真って何なんだ? さっきも撮ってたんだろ?」

足を止めて考える。

「そうだなぁ・・・最近はもっぱら金づるだけど。」

「は?」

ここで聞き返してくる、真面目だなぁ。

「いや、撮りたいものを撮ってるだけだよ。」

何気なく、桜を見やる。

風にはらはらと、花びらが舞う。

「撮りたいもの・・・」

「そ、きれいだなーとか、すごいなーとか、そんな感じ。」

満開の桜が、きれいだって思うだけで十分なように。

風で散らされる花びらに、寂しさを感じるように。

それだけでいいんだと思う。

「史稀はさぁ、考え過ぎなんだよ。」

寒い中、ずっと突っ立っていた史稀の姿を思い浮かべる。

一体、何であんなに考えてんだか、

「・・・考えてちゃ駄目なのか?」

図体に似合わない、子供っぽい言い草に頬が緩む。

くるりと振り向いて、表情も確認。

「やっぱり、これが聞きたかったんだな?」

「・・・。」

だんまりかよ。

「あくまでも、私の意見だよ? 何を描きたいかを定めた上で、

 表現を考えるのはいいかもしんないけど、描きたい物まで

 ぶれちゃったら、本末転倒だよ?」

「・・・」

「まずは、自分に素直になってみなよ。」

「・・・」

「ほら、黙ってないで返事する。よしあきくんって呼んじゃうよ~?」

こっちは、嫌味のつもりで言ったつもりだったのだが・・・

「呼べばいい。」

「は?」

「素直になれって言ったろ?」

真面目に取られたら、調子が狂うじゃないか。

「俺は、宮原芳彰。そういう事だろ?」

「・・・そ、だけど。」

なんだ、こいつ・・・急に元気になって、

「じゃ、ちょっと付き合え。」

手を掴まれた。

「は? 何?」

自分のペースで、ズンズン引っ張って行く。

「こんだけきれいなんだ、どっかで食い物買って花見でもしよう。」

笑顔で振り向く。

予想もしてなかった少年っぽい表情だ。

陰りの無い、楽しそうな顔をしている。

まったく・・・さっきまでとは別人じゃないか、

何か調子が狂う。

「史稀、歩くの早い!」

「芳彰って呼べって。」

スピードは変わらない。

こ、こいつ・・・

呼びなれない名前を、頭で反芻する。

「・・・ょ、よしあき早い。」

「情けないぞ、美晴。」

な、何だと。

「食い物買うって、よしあき奢ってくれるの?」

「ああ、いいよ、言い出したの俺だし。」

うー。

「じゃぁ、長葉堂の松花堂弁当。」

どうだ、千五百円だぞ。

「了解。」

打っても響かない。


・・・どうした、私。

これで本編終了~。

今までずーっと、美晴目線でしたが、

エピローグは、史稀改め芳彰くんにやってもらいます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ