負け戦 < 好奇心 という関係
16話目です。
・・・ではどうぞ
それから2日後の土曜の朝。
時刻は8時半を過ぎた辺り、不意にチャイムが鳴った。
こんな早くに誰だ?
母さんは昨日遅かったからまだ寝てるし、妹は食事中。
・・・とくれば、出るのは私しかいない。
半分牛乳の甘いカフェオレをテーブルに置き、壁にはまったインターフォンに向かう。
「はーい?どなたですか?」
「私、すぐ下の階の宮原と申しますが、美晴さんいらっしゃいますか?」
玄関先からなので姿は映らない。が、声は女性のものだ。
「・・・私ですが、ちょっとお待ち下さい。」
誰だ? すぐ下って事は史稀のとこで・・・、
「おねぇちゃん、誰?」
「さぁ、下の人らしいけど、ちょっと出て来る。」
「えー、苦情来るほど騒いだかな?」
オロオロしている妹が微笑ましい。
「多分違うよ、いいから食べてな。」
そう言い置いて、玄関へ向かう。
扉を開ける前に、深呼吸を一回。
さて、史稀の関係者だろう? 何の用だ?
ガチャ、
「はい? 何の御用ですか?」
あー、前に見た史稀の姉さんだな、多分。
淡いブルーのセーターに、薄手のベージュのコート。
下は黒のパンツに、黒のパンプスを履いている。
とても綺麗な人だ。
「あー、本当だ若い~。さすが高校生。」
突然、遠慮も無く頬っぺたを突付かれた。
「・・・あの? 何なんですか一体?」
いきなり出鼻を挫かれた。
「あ、ごめんなさい。私、下の部屋の宮原芳彰の姉の宮原茜です。」
やっぱり、姉さんだったか。
悪戯っぽい笑顔で会釈をした・・・強敵の予感がする。
「はじめまして、大垣美晴です。・・・で、どういった御用でしょうか?」
「御用・・・そうねー、あなたがどんな娘か見たかったの。」
笑顔でそう言った。見事なまでに本音だ。
「・・・えーと、どうしてですか?」
彼女は笑顔のまま続ける。
「好奇心よ。もっとお話したいから、どこか外で良いかしら?」
「・・・はぁ、」
まずこの人にNoはきかないだろう。
「じゃぁ、出る準備してくるんで少し待ってて下さい。」
そう言って、扉を閉めた。
「おねぇちゃん、何だった?」
妹がダイニングから顔を覗かせた。
「んー、尋問?」
「何それ?」
「さて、何だろうね・・・私もよくわかんないけど、こっちも知るいい機会だし、」
史稀は私の事を色々と知っている、そんな気がしていた。
本人が話したくなさそうなので、こちらからは聞かずにいたが、
向こうから来るなら遠慮は要らない。
「はぁ? ・・・ごちそうさまでした。」
「あ、食器水に漬けといて、出かけてくるから。」
「いいよ、このくらい洗っとくから。」
けなげな妹の言葉に、思わず抱きついてみる。
「ありがとー、和歌奈!」
「いいから、おねぇちゃん大袈裟・・・。」
「じゃあヨロシク。」
手早くロングパーカーを羽織って、携帯と財布、デジカメをポケットに入れると、再び玄関に向かった。
「こんな時間じゃ、喫茶店のモーニングか、24時間のファミレスくらいよねー。」
茜さんが、前を歩く。
「そうですね、」
なんとなく、後ろを付いて歩く。
「じゃぁ、三嶋通りのとこ行こうか。」
三嶋通りは通称で、地図には121号としか載ってない。
「この辺、詳しいんですね?」
茜さんは後ろを振り返り、
「もちろん」
と微笑んだ。
「だって、私すぐそこの宮原医院の娘だもの。」
・・・は?
父が運ばれ、そのまま亡くなった病院だ。
5年前に毎日足を運んだ。
でも、あれからは行っていない。
その建物がすぐ右側に、道の反対側に見えている。
史稀は知ってたのか?
だから何も聞いてこなかったのか?
「じゃぁ、なんでこんな近所で一人暮らしなんですか?」
「・・・それは中で話そうか、」
質問には答えず、ファミレスを指差してそう言った。
三嶋通りは、近所に三嶋神社があるので、そう呼ばれています。
神社の歴史まで、無駄に考えてあります(笑)
近くにあと2つ神社があり、3柱の兄弟神でこの神社が長男です。
(上から、伊那伎命、多智高命、佐伎媛 という名前)
そもそも山の神でしたが、景色のいい場所に行きたいと、鷺に教えてもらったのが、海に浮かぶ小さな3つの島。
時を経て砂洲が広がり、埋め立ても行われ、今に至る。
まだ1つは島のままです。
と、こんな感じで。
…この設定をいつか使う事があるのだろうか?