その原因が分かれば何かが見えるかもしれない
14話目です。
・・・ではどうぞ
停止液に浸した印画紙を、手早く水の入ったバットに漬けていく。
まずまずの出来栄えに、安堵し作業を続ける。
「おねぇちゃん、印刷終わったよー。」
デジカメの方は終わったらしい。
「おー、ちょっと今は開けるな、」
しっかり薬品を濯いで落とし、乾かすためにクリップで吊るしていく。
「よーし、終了。印刷したやつ見せて、」
扉をあけると、すぐそこに妹がいた。
「おねーちゃんの方も見せて、」
妹から写真の束を受け取ると、1枚1枚見ていく。
そこに写るのは為井聡太。
クリップに吊るされているのも、為井聡太。
人気商品である。
「ねぇ、この人誰?」
写真を眺めていた妹が、ある写真を指差している。
そこには、空を見上げる史稀の後ろ姿と、その隣に場所を変えて撮った
横顔の写真があった。
そうか、和歌奈は史稀の事を知らないのか・・・
同じマンションに住んでいても、会った事が無いなんて良くある話だな、
意識してなければ、記憶に残らないという事もある。
自分もそうだったのだろう。
あの日会うまで、彼の事など知らなかった。
「それは、今の調査対象。」
後ろ姿の写真を手に取って、眺める。
初めて会ったのも後ろ姿、外で見かけた時も、声をかけたのも後ろ姿。
私はどれだけ史稀の後ろ姿を見ているんだろう?
分かんなくってイライラして、探ってたらやり返されて、
しかも、こいつの前で2回も泣いてしまった。
みっともない事ばっかだ。
「何かおねぇちゃん楽しそう、そんなに変わった人なの?」
私を見てそう言う。
・・・思わず笑ってしまった。
「とっても、・・・でも、なんか違う。」
変なやつだけど、自分より大人で、優しくて、
だけど、どこか違和感を感じていた。
「何それ?」
「さぁ、まだよくわかんない・・・だから調査中。それより、明日はよろしく頼むよ?
卒業式で、最後の荒稼ぎだ!」
「イエッサー、理佐ちゃんもはりきってたよ。」
「うんうん、心強いなぁ。」
「ところでさ、いつも誰にお弁当持って行てんの?」
妹の表情が変わった。
「はい?」
「その人?」
弱味を握るものの顔だ。
まさか、自分が妹に向けられる事になるとは思いもしなかった。
「あ、あぁ、いつもろくなもの食べてないから・・・つい・・・」
「へー。あ、こっちにいっぱいある! どれだけ撮ってんの?」
隅に置いておいた、史稀の写真を放り込んでいた箱を発見された。
確かにたくさん撮ったのは認める。
でもそれは、彼という人物を突き止めるためだ。
だけど・・・何か、妹の視線が痛い。
「おねぇちゃん、この人の事好きなの?」
箱から出した一枚の写真を手に、詰め寄って来る。
筆を握る写真の中の史稀に目をやる。
・・・好き?
それは考えた事が無かった。
彼に興味はあるし、その食生活に不満はある。
だけど・・・。
「たぶん違う。」
その答えに、妹は疑わしそうな視線を向けたままだった。