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異種族でもラブコメはできますか?  作者: 藍家アオ


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4/2 Splash!その5

 圧迫感が前面を覆う。右に足を出すと、ほぼ同時に右に動く。左でも同様。


 パスする先を探そうと視線を彷徨わせると、ドリブルしているボールに圧をかけてくる。困った。走って突破しようにも、紬先輩のほうが速いので上手くいかず、あれよあれよと右側に追いやられる。


「くれ」


 見かねたコタ先輩が、肩が触れ合うほど近くまで来てくれた。すれ違う形でボールを手渡し、そのままポジションを入れ替える。コタ先輩が中央に、俺が右側に位置する形だ。ディフェンスにつく人は変わらず、俺の前には紬先輩がいた。


 どうやら学習するタイプのバケモノのようで、猿田先輩がやっていたような、ひっそりと足音を殺してしれっと動く作戦や、わざと大きめの足音を出して気を引く作戦は通用していないようだった。それに加えて猿田先輩やコタ先輩はパス回しが少々乱暴で、二人で渡し合うばかりでどうにも突破口が見つけられていないようだった。タイマーが無いから正確にはわからないが、このままでは二十四秒経ってしまうぞ。


 ハーフラインの手前まで大きく回り、猿田先輩からパスを受け取る。もう一度勝負だ。ただし、時間はかけられない。すぐにドリブル、ちらりとコタ先輩の方を見て、パスするそぶり、からのドライブ。ここまでしてやっとスリーポイントラインの少し奥までたどり着く。とにかく時間が無い。無理やりジャンプシュート。


「っ」


 とみせかけて、左後ろへのパス。キャッチしたコタ先輩のスリーポイントがボードに当たり、跳ね返って勢いよくリングを通過した。


 十対六。危険な橋を渡ったが、大きなリードを手に入れた。


「ナイス」


「速攻!」


 喜びもつかの間。鹿又先輩がロングパスを出すと、受け取った紬先輩が俺たち三人を寄せ付けない圧倒的なスピードでゴールを決めた。


「俺らも行くぞ」


「おう」


 猿田先輩が走る。俺からコタ先輩、猿田先輩へとパスを繋いでラインを上げる。しかし、さきほどの速攻で前に上がってきていたのは紬先輩だけで、他二人は後ろにいた。紬先輩も、俺たち以上のスピードで戻っている。ディフェンスが間に合ってしまった。こうなったらじっくりやるしかない。


 猿田先輩にパスを貰いに行く。


「あっ」


「やっべ!?」


 失敗した。単調すぎた。紬先輩が手を伸ばしてボールを弾く。ライン際でそのボールを拾い、そのまま加速してレイアップ。


 これで十対十。振り出しに戻った。


 それでもまだ有利に変わりはない。コタ先輩のミドルシュート。紬先輩のダンク。猿田先輩のフェイダウェイ。紬先輩のダンク。コタ先輩のスリーポイント。紬先輩のジャンプショット。猿田先輩のレイアップ。紬先輩の……。


「……これで、二十九対二十八……」


 あと一本で勝負が決まる。俺たちがオフェンスだ。


 こういう場面こそポイントガードは首を振らなければいけない。誰がどの位置にいるか。どう動いているか。見極めなければいけない。


 コタ先輩が近寄ってくる。何度もやったスクリーンだ。紬先輩も気づいている様子。あえて反対側、猿田先輩の方へステップし、そのままボールを渡して中に切り込む。パスをもらうためではない。ゴール下を横切るように反対サイドへ。クロスするようにコタ先輩がペイントエリアまで入る。ごちゃついた状況の中で、ディフェンスが少し遅れた。コタ先輩にボールが通った。


 振り向いてジャンプシュート……鹿又先輩のディフェンスが間に合っていた。これは止められてしまうと判断したのか、コタ先輩はシュートを止め空中からパスを出す。手を伸ばしてボールを掴みに行く。紬先輩と接触した。この人、本当に体が強い!押し返されてバランスを崩しながらも、なんとかボールは確保した。


 そのままターン。一対一の形になった。右足を出す。先輩は反応しない。じっとこちらの表情を窺っていた。シュートの体勢をとってフェイク。ひっからない。ことごとくアクションが無視されているので、仕方ない。中に切り込む動きを見せる。


「ふっ……!」


 息を吐きだして、加速する。紬先輩はゴールと俺の間に体を挟んだ。完璧な位置だ。これ以上は進めない。


「っ!」


 観念してシュートを打つしかない。ジャンプする。先輩の身体も浮き上がった。俺よりも速く、高く跳ぶ。ブロックされないように、フローター気味に……と見せかけて。


「猿田先輩!」


 ビハインドパス。走り込んできていた先輩に、ワンバウンドでボールが渡——らない!?


 手があった。ボールを鋭く叩いたその手は、眼前のこの人の右手だ。


「ナイスつむ!」


「うおー!いけぇー!」


 同時に着地した俺と紬先輩は、同時に走り出した。まずい、守らないと!


 ぐんぐんと俺を離していく紬先輩。このバケモノめ!最後まで見て、空中でフェイクに対応しやがった!そりゃじゃんけんで無双できるわけだ。


 動体視力と反射神経が良すぎる故に、これまではフェイクにずっと引っかかってくれて、むしろちょっとやりやすいなとか思っていたのに。先輩が言っていた、フィジカルはあるけどテクニックは発展途上って本当だったんだとか思っていたのに。


 この土壇場で、しゃらくさいから最後まで見てから止めればいいじゃんという結論に辿り着いてしまった!


 紬先輩の手にボールが渡る。勢いそのまま、ゴール下まで一直線。


「くっ……!」


 全速力で追いかける。コタ先輩がカバーに寄ってきてくれている。もう一歩、もう一歩!


 紬先輩が跳躍する。レイアップだ。止めるしかない!追いつけ、追いつけ!


「っ!」


 少し遅れて、ジャンプ。自分でも驚くほど身体が軽かった。三人、頭の位置が揃う。視線は紬先輩の手の中のボールに。右手を伸ばす。


 届くか?届け!


 中指の爪先が、ボールに触れる。その瞬間。


「こう?」


「え」


 紬先輩が呟いた。ボールが遠ざかる。紬先輩の頭上から、脇、横腹、背中。


 ビハインドパス。


「くっ……そ!」


 猿田先輩が、パスを受け取った鹿又先輩の元まで走る。しかし、間に合わない。ネットが揺れた。


 スリーポイント。


「やったー!!」


「……やられた……」


 二十九対三十一。決着。

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