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城郭の調香師 第1部 赤い月の呪いと調香師と紫の炎  作者: 悠 聖藍


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第1部 第2話 城郭都市アウラ 2

 バス停から徒歩で約三分、この城郭都市アウラの【クロウ・ラボラトリーズ】という屋敷が、香水工房兼ショップが僕の勤める職場だ。


 僕はまだ開始前の工房の裏側にある門のインターホンを押した。


「おはようございます」


 インターホンから声が聞こえた。


「おはようございます。今扉を開けますね。」


 すると大きい扉が自動で開いた

目の前には執事のシェーンさんが迎えてくれた。


「ジョン、寒かったでしょう。さあ中へ」


「シェーンさん。…これはハーブの香りですか?」


「ええ、若がちょうど朝食を終えたところです。どうぞ二階へ、アイナにハーブティーを淹れるように言いましょう。」


「ありがとうございます」


 この屋敷は、スチュワート・クロウ…つまり、僕の師匠のおじいさんの別邸の屋敷だったらしく、師匠がここに店を構えることになったとき、この別邸を譲り受け、改装したらしい。

 なので、一階が店と調香室のある工房、二階と三階は住居スペース兼、師匠の研究室になっている。


 二階へ上がると、僕は後ろから声をかけられた。


「おはようジョン。今日も早いのね」


「やあ、アイナ。おはよう」


 シェーンさんの孫で、この屋敷のメイドとして働いているアイナだ。

シェーンさんは長年クロウ家、つまり師匠の実家で執事を務めていたが、師匠がこの別邸で独立した際、筆頭執事の座をアイナの父親に譲った。

心配したアイナは、祖父の後を追う形でこの別邸にやってきたらしい。

  

「今日もハーブティーの良い香りがするね」


「ふふ、ご主人様の体調に合うようブレンドしたハーブティーなの。さあ、入って。ジョンにも淹れるわ」


「ありがとう、アイナ」


 アイナは、僕より少し年上の女性だ。

アイナとの会話をしたあと、僕はリビングのほうに向かった。


「やあ、ジョン。おはよう。」


 優しく微笑みかけるその紳士は、僕と母の命の恩人であり、師匠でもある、若手人気調香師、スチュワート・クロウだ。


「師匠、おはようございます!」


「やれやれ、その師匠呼ばわりはカンベンしてほしいのだがね」


 師匠は、やや呆れた表情で、ハーブティーを口に運んだ。


「それは無理です。だって、師匠は僕に希望の光をくれたお方なのですから」


「まったく、君はおおげさだね」


 そんなやり取りをしていると、アイナがワゴンを引いてきた。


「ジョン、お茶を淹れたわ。ご主人様、おかわりはいかがですか?」


「ありがとう、アイナ。もう一杯いただくとしよう。」


 僕は、アイナの淹れてくれた香り豊かなハーブティーを一口飲んだ。


「うん、美味しい! アイナのハーブティーは本当に落ち着くよ」


「ふふ、ありがとう」


アイナは、嬉しそうに微笑んだ。


 すると、テレビから不穏なニュースが流れた


『次のニュースです。今日未明、フォルネラ市にある大手化粧品会社の製造工場に火災が発生しました。現場から中継です』


すると、テレビの映像は、現場の中継に切り替わり、リポーターが状況を説明した。


『現在、私は火災が発生したフォルネラ市にあるローデリア社の自社工場の前に来ております。火災が発生したのは一部分であり、どうやら被害は最小限に抑えられたようですが、警察の現場検証などにより、製造工場はしばらく封鎖するとのことです。以上現場からお伝えしました』


 フォルネラ市のローデリア製造工場は隣街だ。城郭都市からバスで約三十分ほどのところにある。ローデリア社といったら、国内大手の化粧品メーカーで、最近ではアメリカにも進出しているいう。


「…なんだかずいぶんきな臭いね…」


 師匠は、少し険しい表情を浮かべていた。


「ローデリア社は、確か最近アメリカに進出しましたよね。あと、イギリスのモルジェンという会社を買収したとか…」


 師匠は、お茶を一口飲むと説明してくれた。


「モルジェンは、イギリスでも伝統的な香水を製造している会社だ。確かに規模はそれほど大きくはない会社だが、買収されたと聞いた時は、私も驚いた」


 師匠は、少し悲しそうな表情をしていた。僕はモルジェン社は知らなかったが、ローデリア社が買収したことで、モルジェンの香水は、アリアンブルでも人気となった。


「…あのローデリアが、火災…ねぇ…」


「師匠…?」


師匠は、怪訝そうな表情を浮かべていた。が、すぐに切り替えたようだ。


「さあ、仕事に取り掛かろう。この前ミックさんに偶然会ってね。なんでもちょっとだけ珍しい花を取り寄せたそうだ。ジョン、悪いが南五番街の〈ルミエール・フルール〉に行ってきてくれないか?


「わかりました!」


 その後、工房兼店をオープンし、僕と師匠は仕事に取り掛かった。


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