第1部 第22話 帰りのトラム
…それは衝撃的な話だった…
ジュリアンの実の母親が、ローデリア社 CEO の第三夫人…!?
「…だからジュリアンは警察に妹さんの事を届け出なかったんだね。裏で警察と繋がっているローデリア社がいるとなると、自分の存在を知れてしまうから…」
「あ…!!そういう事だったのか!!」
師匠は…すごいな…そんな裏事情まで見通すとは!
すると警察官とジュリアンの事情聴取の部屋に、昨日の国家情報調査局 NIA のリチャードさんが現れた。
同時に別室のモニターで見ていた僕達の部屋に係員が現れて、この先は NIA の取り調べという事で、強制的に退出させられた。
帰りの際、僕はあまりにも衝撃的な展開と、衝撃的な事実が立て続けに起こっている事で、僕の心は悲しみや怒りというよりわけが分からなくて、頭では分かっていても、心では追いついていない状態だった…。
「ジョン。大丈夫かい?」
「…え?…ええ…なんていうか…はい…」
「フフ…どうやら大丈夫ではないみたいだね」
帰りのトラムで、師匠とそんな会話を交わしていた。
「師匠は…師匠は大丈夫なんですか?僕は、ジュリアンに裏切られたのか、そうでないのかよくわからなくて、なんていうかゴチャゴチャしてます…」
すると、師匠は少し笑いながら
「…こう見えても、それなりに修羅場は経験してるからね。それより、ジョン、忘れてないかい?コンペまで時間が無いことを」
「あっ!!」
そうだった、もう時間が無いんだった!
「とりあえず、盗まれた調香レシピとジュリアンの件は、警察に任せよう。私の兄に頼んで、知り合いの弁護士も紹介してもらったから大丈夫だ」
「え?弁護士さんを?そうだったんですね。わかりました。今はコンペに向けて全力で取り組みます!!」
「ああ、頼んだよジョン。しばらく屋敷に寝泊まりしてもらうよ。時間が無いからね」
「わかりました!」
そうこうしているうちに、トラムは東三番街に到着し、僕達は屋敷に帰ってきた。
「御主人様!!ジョン!!おかえりなさい」
「若、ジョン、どうでしたか?」
アイナとシェーンさんが心配そうに出迎えてくれた。
そして、アイナが淹れてくれたハーブティーを四人で飲みながら、師匠は事のあらましを二人に説明した。
「…そうでしたか…ジュリアンが…」
「まさか、ジュリアンがそんな事になってたなんて…」
二人とも、師匠から話を聞いて、やはりショックを受けたらしい。すると、屋敷のインターホンが鳴った。
シェーンさんが応答すると…
「若、昨日の NIA の方がお見えになっておりますが…」
「…分かった。ここへ通してくれ。アイナ、悪いが彼の分もお茶の用意を」
「かしこまりました」




