第20話 紫の炎の正体
翌日、警察の話では、例のローデリア社の契約調香師を事情聴取を行ったものの容疑は否認した。
彼の所持していたスマートフォンやパソコンを押収し、家宅捜査も行ったが、データはすでに処分されていたらしい。
そして、特殊DNA鑑定によると、彼は特異遺伝子の持ち主では無かった。
つまり、この人物には紫の炎を発生させる力は無いということだ。
だが、街の防犯カメラを徹底的に洗い出した結果、ある人物が防犯カメラに写っていたらしく、警察の人はそれを見せるために、再びクロウ家の屋敷を訪れた。
「これは…ジュリアン!?」
そこに映っているのは、間違いなく契約調香師とジュリアンが言い合ってる姿だった。
「え?ジュリアンが、防犯カメラのほうに視線を向けてる?」
まるで、街の防犯カメラに訴えるかのような視線を向けていた。
「やはり、この人物は北十番街のパティスリー・アンで働くジュリアン・レイで間違いないですね?」
なんで…なんでジュリアンが?僕の心臓は、嫌な音を立てて大きく鼓動していた。そして、師匠はゆっくりと答えた。
「…はい。間違いなく彼です」
「わかりました。これから彼に事情聴取をしに向かいます。何かあったらまた連絡します」
その後、ジュリアン・レイは、容疑をあっさり認め、警察に逮捕された。
そして、僕と師匠は、ジュリアンが警察の事情聴取を受けているところを別室のモニターで見る事となった。
「では、改めて事情聴取を行う」
「はい」
そこには、警察官とジュリアンの姿があった。
「まず、君の名前と職業は?」
「ジュリアン・レイ。城郭都市アウラの北十番街にあるパティスリー・アンの従業員です」
ジュリアンは、静かに…そして冷静に応えていた。
「よろしい。では、東三番街にあるクロウ家の屋敷において、ローデリア社の契約調香師である、ボラン・パウナがスチュワート・クロウ氏の調香室において、調香レシピを盗んだ事に対して、幇助を行ったかね?」
僕と師匠は、緊張しながらジュリアンの言葉を聞いた。ジュリアンは、視線を伏せた。そして、短く息を吐いてから答えた。
「…はい。間違いありません」
…ジュリアンとは確かに言い争ったりする仲だが、僕は正直ショックだった。
師匠は…師匠は、どう思ってるんだろう?そう思って、横にいる師匠の顔を見たが、表情は変わりなかった。
「どうやって、幇助したのかね?」
そう警察官が尋ねると、ジュリアンの背後から、紫の炎が現れた。
「ご心配なく。私の炎は本物ではございません。ただの幻…まやかしです」
「では、君は特異遺伝子の持ち主という事で間違いないかね?」
「はい。間違いございません」




