第1部 第16話 盗まれた調香レシピと国家情報調査局
ジュリアンは慌ただしく、息を切らせながら言った。
「ローデリア社の新作発表をネットでたまたま観たんだけど、ローデリア社の新作リップスティック…キャラメリゼアップルの香りと言ってたわ!」
「なんだって!?」
師匠は青ざめた表情で、驚くような声でそう言った。
「そんなバカなっ!昨日の今日で、師匠が作った調香をローデリア社がなんで!!」
「…まさか……」
なんで…なんで、昨日の今日でローデリア社が師匠と同じ調香を?すると、今度はシェーンさんが師匠に声をかけた。
「若、国家情報調査局の方がお見えになって、若に会わせて欲しいとの事ですが、お通ししますか?」
「国家情報調査局?警察ではなくてか?」
「ええ…なんでも、ローデリア社に関する事で、お伺いしたいとか…」
「……わかった。お通ししてくれ」
「かしこまりました」
国家情報調査局…通称 NIA なんで、警察じゃないんだ?シェーンさんは、応接室に国家情報調査局の人を案内し、師匠は NIA のエージェントに対応した。
僕とジュリアン、そしてアイナは隠れてこっそり聞き耳を立て聞いていた。
「はじめまして。突然押し入って申し訳ない。私は国家情報調査局のリチャード・ウィリアムズ。早速本題に入りたいのだが、君はローデリア社の人間と何か関係があるかね?」
え?師匠がローデリア社の人間と関係?
「…さあ、私は何も知りませんが…と、言いたいところですが、NIA の情報網…とぼけても無駄…って事ですね…」
師匠は、少し肩を落としたような口ぶりだ。
「話が早くて助かる…ところで…そこにいる君たち。隠れて聞き耳を立てずに中に入ったらどうだ?」
げっ…!!バレてるっ!
「ふぅ…すみません…ちゃんと教育はしているつもりですが…入ってきなさい」
僕達は観念して応接室に入った。NIA の男性は、師匠と同い年くらいだろうか…髪は栗色の七三分け、メガネをかけていて、端正な顔立ち。いかにもエリートっぽい人だな、と思った次の瞬間だった。
「う〜ん、あの人もなかなかのイケメンね…♡」
…こいつは空気を読まないな…
「申し訳ございません御主人様。以後気をつけます…」
アイナは少し気落ちしていた。
「アイナ、お客様にお茶をお出ししてくれ」
「かしこまりました」
「いや、結構。さっそく本題に入りたいんでね」
「そうおっしゃるとは思ってましたが、うちのメイド手製のハーブティーは絶品ですよ?思考もすっきりすると思うのですが?」
リチャードさんは浅くため息をつくが
「…わかった。では、いただこう」
アイナは、すぐにお茶の用意をした。




