第1部 第12話 ついに完成
あれからさらに一週間が過ぎた。
ジュリアン以外にも、男女問わず店に来たお客さんに意見を聞きながら、試行錯誤が続いていた。そして、だんだんと形になりつつあった。
「うん、この香りは合ってるかもしれない」
ようやく辿りついたのは、キャラメリゼアップルの香りだった。
「アップルの果汁感と甘さがちょうどよい感じですね」
「よし!まずはアイナやジュリアンの意見を聞いてみよう」
「アイナはともかく、ジュリアンは……激しく嫌ですが。了解です」
「まったく、ジョンはそういうところがまだまだ子供だね」
師匠はクスクスと笑った。
僕は、嫌々ながらもジュリアンに連絡した。
ほどなくして、ジュリアンは現れる。
「スチュワート様♡ 完成おめでとうございます♡これ、私からの愛!クランベリー&ラズベリーのチョコレートケーキですわ♡」
ジュリアンは北十番街のパティスリー・アンで働く、パティシエの卵だ。
「ははは、まずは試してもらわないと完成とは言えないよ」
「きゃあん♡ さっそく試せるなんて、ジュリアンうれぴぃ♡」
……キモい。
「いらっしゃい、ジュリアン」
アイナが工房に入ってきて挨拶する。
「アイナ、お邪魔してるわ」
ジュリアンは、彼女にだけは柔らかい。なんでだよ…。
「さあ、早速ふたりとも試してみてくれないか?」
師匠は、試作のリップスティックを手渡した。
「……!! これは……!!」
ジュリアンが目を見開く。
「りんごのような果汁感がじゅわっと感じると同時に、火で炙られたような、とろみのある甘い香り……!素晴らしい、素晴らしすぎますわ!!」
さすがパティシエの卵。甘い香りには敏感なようだ。
「ええ。本当に、塗った瞬間ウキウキします」
どうやら、二人には好評のようだ。
「よし!これで完成としよう!」
「きゃぁ〜♡ 完成おめでとうございますぅ〜♡では、みんなでこれを食べましょう♡」
「そうだね。ありがとうジュリアン。アイナ、悪いがみんなの分のお茶もお願いできるかい?」
「ええ、すぐに」
師匠は、完成した調香レシピのノートを閉じ、引き出しにしまった。
「ふぅ……なんとか間に合いそうだね」
「当然ですよ。絶対コンペ勝ちます!」
アイナがお茶の準備をし、僕はジュリアンの手製のチーズケーキ切り分け、みんなで食べたのだった。




