第1部 第10話 心配
昨日の満月の呪いに苦しみ
師匠の元に転がり込み、部屋を貸してもらい
一晩中もがき苦しんだ。
やっと眠りについたのは――たぶん、日が昇った頃だったと思う。
頭が痛い……今は何時なんだろう?
目を覚ました僕は、枕元の時計に目を向けた。
「え? もう午後1時過ぎ???」
やばい!いくら師匠たちが事情を知っているとはいえ、ここまで寝坊するのは非常識すぎる!
僕は慌てて、師匠のいる一階の工房へと駆け下りた。
「師匠! 申し訳ありません!」
調香室の扉を開けるなり、僕は頭を下げた。
「そんなことよりジョン、身体は大丈夫なのかい?」
師匠は、心底心配している顔でこちらを見ていた。
「はい、もう大丈夫です。でも油断していました。まさか夕方の時点で、あれほど大きい満月が出ているなんて……本当に申し訳ございません!」
「いや、私もお使いを頼んでしまったからね。本当にすまない」
「師匠は悪くありません! アイナにも注意されていたのに……これからは気をつけます」
僕は深く頭を下げた。
「そうだな。これからは私も気をつけよう。ところでジョン――そんなボサボサな姿で仕事をするのは、さすがに良くないよ。紳士たるもの、身だしなみには気を配らねば」
師匠はクスクスと笑っている。
言われて鏡を見ると、髪はボサボサ、服は乱れ、顔も疲れ切っていた。
「げっ! すぐ整えてきます!」
「そうしておいで」
師匠は安堵したような表情で笑いながら僕にそう言った。
僕は急いで洗面所を借り、顔を洗い、髪と服を整えた。
「ふぅ……まったく」
振り返ると、アイナが腕を組んで立っていた。呆れたため息が聞こえる。
「アイナ……! ああ、昨日はゴメン。迷惑かけちゃって」
「ほんとよ。いくらなんでも油断しすぎ。でもまあ、私がガミガミ言ったところで、ウザがられるだけでしょうから……もうこれ以上は言わないけどね」
うぐ……これは本気で怒ってるやつだ。
「……ほんとにゴメン。今度、10番街のスイーツ奢るから!」
「……絶対よ……!」
アイナの目には、もはや逃げ道はなかった。
「ははは、了解!」
僕は苦笑しつつ、アイナとスイーツの約束を交わし、調香室の仕事へ戻った。




