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城郭の調香師 第1部 赤い月の呪いと調香師と紫の炎  作者: 悠 聖藍


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第1部 第9話 呪いの力

 僕の瞬間移動のルートは、人が立ち入らない場所を狙って移動する。

この城郭都市アウラについても、各街の立ち入りにくい場所は、事前に徹底的に把握していた。

瞬間移動の呪の力は、満月の大きさにもよるが、それほど長距離は移動できない。

僕は最短ルートで七回ほど瞬間移動を繰り返し、最後の力を振り絞って、なんとか師匠の屋敷にたどり着いた。


「! ジョン!」


 どうやら僕は師匠の調香室に飛び込んだらしい。

入った途端、力尽きて倒れ込んでしまった。


「師匠……すみません……今夜だけ……部屋を……貸してくれませんか……」


「ああ、もちろんだ! 爺や、アイナ! ジョンを月の光が届かない部屋へ!それと、ゼラニウムの香りを部屋中にまいてくれ!」


 シェーンさんとアイナは、すぐさま駆けつけてくれた。


「ジョン! しっかりして!」


 アイナが心配そうに僕を覗き込む。


「すぐに部屋を用意します! ジョン、気をしっかり持つんですよ!」


 シェーンさんは慌ただしく指示を出していた。


 月の光から完全に遮断された、安全な部屋。

そして、師匠が僕のために特別に調香してくれた、アウラでしか育たない特殊なゼラニウムの香水。

この香水には精神を安定させる作用があり、呪の苦しみで正気を失いかける僕には欠かせない香りだ。


「はぁ……はぁ……う、ぐぅ……!苦しい……身体が……すごく……苦しい……!」


 呪いの力を使いすぎたせいで、今日はいつもより苦しい。

満月の光を遮断しても、身体の奥から湧き上がる苦痛は消えない。

いったい……この苦しみは、いつまで続くんだろう。

もう、一生消えないのだろうか。


 涙が勝手に零れた。

自分がこんな呪いにかかってしまったことが情けなく、悲しくて、どうしようもなく落ち込んだ。

 

 すると目の前に、実体のない“赤い大きな帽子と赤いドレスをまとった女”が現れた。

僕にしか見えない、呪いの“核”。

赤い月の呪いの女だ。


『あなたは、この苦しみに抗う?それとも、この苦しみから解放されるために……己の魂ごと消滅する?』


「……ふざ……けるな……!僕は……僕は……この師匠に救ってもらった命を……価値あるものにすると誓ったんだ……!ぐはぁ……!」


その夜、僕は一晩中もがき苦しみ、完全に眠りに落ちた頃には、夜はもう明けていた。

ローダン社


株式会社ローダン

創業者一族が今でも株を約40%保有する、実質的な家族経営の化粧品企業。

創業者一族が8割以上の経営の議決権を握り、長期的な戦略決定を下す。

近年、海外進出もしており、特にアメリカには力を入れてる。



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