プロローグ
命からがら決死の作戦を成功させ、生きる希望を掴んだその時、作戦の考案者であり要でもある親友が退避の途中、クラスメートの誰かの魔法に直撃し、吹き飛ばされて奈落に落ちた。それを見た俺、天童時セトは腹から血を出し、這いずりながら、声にならない声を上げて手を伸ばした。届くわけがなかった。
暗闇の中、急速に小さくなる光。無意識に届く筈も無い手を伸ばす。絶賛奈落のような場所を落下中だ。
(只の日本人なのに何でこんな目に……)
そんな事を考えながらジェットコースターに乗っている時の内臓が置いてけぼりになっているような、そんな感覚に気持ち悪さを感じながら鬼灯翔一は走馬灯を見た。今、現在進行形で味わっている理不尽に至るまでの経緯を。
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月曜日。それは、大多数の人が嫌がる、憂鬱な1週間の始まりの日。きっとワーカーホリックは喜ぶだろう。ほとんどの人間が、これからの1週間を思いため息を吐く。
そして、それは天童時セトも例外ではなかった。だが、彼は同時に友達に会えるとウキウキしていた。なんせ、初めてできたまともな友達なのだ、親友と呼べるレベルが1人!実は彼、とてもイケメンで女子には、下心全開な目。男子には、嫉妬の目を向けられてきたので、高校でやっとまともな友達ができるという悲しい存在である。ウキウキするのも仕方ない。
「ちょっと、何ニコニコしてんのよ。気持ち悪いわよ。」
「えっ 酷くない……?」
「アンタが登校中にニコニコすることがどれだけ貴重なことか。私は数えられるくらいしか見たこと無いわ。それなのに満面の笑みよ、気持ち悪くもなるでしょう。」
「やっぱり酷い……」
幼馴染みとそんな雑談をしながら高校へ歩を進める。
一方、その頃親友の鬼灯翔一はというと、とても憂鬱そうな表情をしていた。本当にコイツ生きてる?と言われそうな生気のない表情だ。何故こんな表情なのかというと、学校の居心地が頗るつきで悪いのだ。
翔一は、いつものように夜更かしでフラフラな足を踏ん張り、始業チャイム約一分前に教室の扉を開けた。その瞬間、半数の男子生徒と女子生徒から睨みや舌打ちを頂戴する。侮蔑の目を向けてくるものもいる。いっそのこと無関心であればいいのに。
極力意識しないようにしつつ席に着く。だが、毎度のことながらちょっかいをかけてくるものがいる。
「よぉ、キモオタ!!また夜更かししてゲームか?」
「どうせエロゲでもしてたんだろう?それで夜更かしとかキモいなぁ〜」
何が面白いのか知らないが笑い出す男子生徒たち。最初に声をかけてきたのが美馬修斗次に声をかけてきたのが小林草太その近くでバカ笑いしているのが山本圭だ。基本、この3人が絡んでくる。
確かに、美馬の言う通り翔一はオタクだ。だがキモオタと罵られる程ではない。髪はきれいに切りそろえられているし、寝癖もない。そこまで見苦しい言動も取っていないし、コミュ障でもなく受け答えは明瞭。ただ単に、ゲームやアニメ、漫画などの創作物が好きなだけだ。
世間のオタクに対する風当たりは強いが、せいぜい嘲笑程度だ。では、何故ここまで敵愾心や侮蔑をあらわにされるのかその理由が彼と彼女だ、
「おい、美馬、小林、山本そこどけ、邪魔」
「本当に飽きないわね、しょうもない。大丈夫?翔一君」
不機嫌そうな声を上げ、教室に入ってきたのは、天童時セト。彼は、女性恐怖症で女友達は幼馴染みだけだったりする。場の流れじゃない限り、絶対に女子とは関わらない。それと先ほど言った彼の幼馴染み、氷室理華。彼女は、とても美人で学園の人気者だ。ただ、本人は、それをあまりよく思ってなく、極少数の女子としか人間関係を持っていない。なので、学園屈指のイケメンにお近づきになりたい女子と美人にお近づきになりたい男子やお友達になりたい女子からヘイトを買っているわけである。
実に、しょうもない。
だが、自業自得なところもあるので甘んじて受け入れているが……憂鬱な事に変わりはない。
翔一は、不真面目な生徒だとと思われているようで(成績は中の中の下)優しい二人が気にかけて上げているという認識らしい。これで態度が改まるなり、翔一がイケメンだったらこんな事にはなっていないかもしれないが生憎、平凡な顔だ。それに「趣味第一人生第二」を座右の銘にしている翔一に態度改善などはあるはずもなく。
「おはよう、翔一。大丈夫か?」
「おはよう。大丈夫だよ……多分」
「多分……よし、あいつら締めよう」
「ストップ。やめなさいセトくん。というか、できないでしょ」
「チッ………は~い」
「今舌打ちした?」
「してません。断じて」
セトが怖いことを口走ったのでなだめる。
「おはよう、毎日大変ね……なんか、ごめんね?」
「いやいや、僕のほうが悪いから気にしなくていいよ、氷室さん。」
「名前で呼んでって言ってるのに…」
どことなく、寂しそうな声音でそう呟く。彼女曰く、幼馴染みのセトは身内も同然、その親友も身内同然という謎理論により名前で呼んで欲しいということらしい。もちろんそんな事しない。した日にはきっと体育館裏に呼び出されるだろう。かんがえたくもない。
そこに、近づいてくる者が1人。
「本当にそうだぞ、反省しているのか?鬼灯、理華だって[名前で呼ぶな…]暇じゃないんだぞ?何回も言っているがお前には問題を改めようとする意思を感じない。そんなので将来、生きていけると思っているのか?」
「「……」」
こいつの名前は、緋之河煌唏。途中、挟まったのは氷室さんの声だ。氷室さんのことを名前で呼んでわ嫌なやつを見る目で見られているのに変えない。こいつも問題ありだと思う。しかし、こいつもこいつでイケメンで結構な人気があるから周りは何とも思ってないようだが。
キーーンッコーーンッカーーンッコーーンッ
「さぁ皆さん、席についてください!ホームルームを始めますよ~」
朝のホームルームが始まった
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「お〜いおきろ〜昼休みだぞ〜」
「んぁっ……あれ、もうそんな時間?なんだか今日は早いな。嫌な予感がする」
「どういう事?」
「ほら、昼ごはん食べるわよ」
いつものようにセトに起こされ3人で昼食を取る。煌唏は、他のところに捕縛されたようだ。ヨシッ……それにしても視線が痛い「異世界召喚されたらいいのに…」なんてありきたりな悪態をつく。「?なんか言ったか?」「何でもないよ」そんなやりとりをした次の瞬間、教室の空気が凍りついた。光る円環と幾何学模様が現れたからだ。
(嘘だろ!現実にならなくていいよ!)
担任教師の樹神芽生先生が「みんなっ教室からでて!」と叫んだのと光が一層強くなったのは同時だった。数十秒後光が消えた教室に人の影はなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
作文はそこまで得意ではないので、温かい目で見てくださると嬉しいです。
これからよろしくお願いします
N5250KH