師匠
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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僕には色々な師匠がいる。
例えばコミュニケーションの師匠の『歌舞伎町の王』と呼ばれる天上院さんだったり、古武術の師匠だったり、勉強の師匠だったり……
その数は100を上回ると思う。
その中で最も尊敬している師匠がいる。それは天野という人だ。
天野さんは現在26歳で詳しくは知らないが社長をやっているらしい。昔様々な武術を極めていただとかで馬鹿みたいに強く、そして、頭も『世界一の天才』と呼ばれるくらいにはいい。人柄もよく、おおらかな人だ。
本当にスーパーマンみたいな人だ。
そんな人に今日久しぶりに会うことになった。
待ち合わせ場所のカフェに行くと、もう既に天野さんはきていた。
「久しぶりです。師匠。」
「お、久しぶり。源。いや、同じ名前だからなんかややこしいな……」
天野さんは笑顔で出迎えてくれる。
「最近どう?高校ではうまくやってる?」
そうだ!ここで今日一番相談したかったことを聞こう。
「はい。うまくやれてはいると思うんですけど、今日ナンパから助けた女性に連絡先を聞かれたんですが……どうすればいいかわからなくて……」
「そうなの!良かったじゃん。まあとにかくその子と会話を繋げることが大事だよ。うまい具合に褒めてあげれば会話もよく弾むと思う。」
「ありがとうございます!」
「いいねえ。青春。確か僕も高校入学初日に桜……いや妻と出会ったんだよね。」
「馴れ初めですか!聞きたいです!」
聞けば奥さんとは高校入学前からの知り合いで高校に入学してから仲良くなったそう。風紀委員会に入ってドタバタしたり、駆け落ち旅行に行ったり……
そんな話をしてくれた。
「それでな、今その……妻が妊娠中なんだけどさ、」
「そうなんですか。」
「父親になるのかって……」
「大丈夫ですよ。師匠ならどうにかなりますって。」
「ありがとう。それじゃあそろそろ組み手しに行くか。」
それから僕は天野さんの車に乗り込み、少し遠くの人のいない広場に行く。
車から降りると、そこにはあたり一面本当に何もない広場が広がっていた。
「それじゃあ組み手始めようか。」
「はい!」
「それじゃあ先にかかってきていいよ。」
「ありがとうございます!」
天野さんとの距離は大体4メートル。相手は動かない。ならばあれを使おう。
膝に力をため、息を吸い、それから一気に地面を蹴る。空に浮いた自分の体を回転させる。
『テコンドー1080°』
3回程空中で体を回転させ、威力を高めた蹴りを天野さんに当てる。
一瞬効いたかな?と思ったが、次の瞬間にはもう僕の足は天野さんに掴まれていた。
「1080°か。すごいね。」
その瞬間、天野さんに足を掴まれた状態で投げ飛ばされる。
地面に着地する衝撃を抑えるため、即座に5点着地を行う。
反撃に出ようとした時にはもう天野さんは目の前にいた。
「5点着地か。それじゃあそこから反撃してみて。」
僕はすぐに天野さんに『前蹴り』を入れる。
この『前蹴り』というのは前方に真っ直ぐ蹴りを放つ技だ。ただの基本技だが、僕くらいの達人になれば建造物の外壁などは容易く破壊できる。
だが天野さんはこれを避けず、ガードもせず受けた。
「威力はすごいね。でも、まだ練度が低い。それじゃあここらで終わりにしようか。どの技がいい?」
「後ろ蹴り。」
「なかなか渋いとこ行くね。」
天野さんは後ろ蹴りを放つ。
僕はそれを手をばつの形にクロスさせ、受けようとするが、失敗した。
意識が遠のく。僕と天野さんの差はかなり大きいらしい。
僕はすっと意識を失った。
天野は後ろ蹴りを放った後、気絶した海野を見ていた。
後ろ蹴りを受けて腕が折れていない?もろに腕に当たったのに?
確か刑務所の壁をぶち抜けるほどの強さで蹴ったはず……
それを気絶だけで済ませたのか?
それにこの子、成長が早すぎる。確か格闘技を始めたのが2年前。それでこの強さなのか?
この子は強くなるだろう。
この子が高校の頃の僕よりも強くなったら『人間兵器』の名前を継がせるか……
調査報告
天野源
『人間兵器』
8年前に海野から天野に苗字を変える。
同年、学生起業を行う。
3年前に結婚。