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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ココミック星人シリーズ

【file7】ココミック星人の解剖

「どうしたんですか、橋本さん? なんだか嬉しそう」


 廊下を歩いている時、我が大学病院のマドンナ、菊美きくみ玲子れいこ嬢が聞いて来た。

 彼女はいつも引き立て役の富戸ふとメダ子さんと一緒だ。


『何かいいことでもあったのかしら?』

 富戸メダ子さんが二重アゴを揺らしてフォッフォッフォッ、と笑う。何が可笑しいのかは知らない。


「ココミック星人の遺体が手に入ったんだ」

 俺は興奮しながら、彼女らに言った。

「よかったら君達も一緒に解剖室へ行かないか? なんでこんな歴史的な解剖実験に誰も立ち会ってくれないのか意味がわからなかったところなんだ」


「遠慮しておきますわ」

『解剖なんてヤダー! グロ〜い!』


 2人は他の誰もと同じく、即答で嫌がった。


 誰もがなぜか嫌がる。しかし俺は嬉々として、大学病院の解剖室へと早足で向かった。





 ケンジとかいう地球人と無理心中をしたローズマリー・フォン・ベビベビ・ココミック嬢の遺体は、冬の川でカチンコチンに凍っており、なかなか綺麗だ。


 遂に彼らの身体の秘密にメスを入れられる!


 私は興奮した。


 まずは全身をチェックする。


 グロい顔が腰についていた。それはヌメヌメとした白色で、カエルというより、オオサンショウウオのようでありながら、色のせいで巨大なウーパールーパーのようにも見える。


 目は退化している。いつもズボンの中に顔を隠しているので、見える必要がないのだろうか。その代わりどうやら臀部についている疑似眼球にも視神経があるようだ。指で動かしてみるとぎゅるぎゅると動き、我々地球人類の眼球そっくりに出来ている。


 しかし口腔に見せかけた肛門にはどうやら捕食をする機能はないようで、開いて中を見ると舌がない。その代わり、ここからも発声をすることが出来るためだろう、言葉を発音するためのリード板みたいな器官が、排泄を邪魔しない程度の謙虚さでちょこんとついていた。疑似歯は触ってみると柔らかく、セルロイドのギターピックのようにうにうにと簡単に曲がる。鼻も偽物で、内視鑑で穴を覗いてみると途中で塞がっていた。


 胸に見える部分は、服を着ていなければ一目で背中であることがわかる。しかも腰の部分に相当するため、女性でありながらおっぱいがあるどころかえぐれている。ココミック星人が総じてスレンダーに見えるのはこのせいか。


 ではココミック星人のおっぱいはどこにあるのだろう? 探してみて、見つけて俺は吐きそうになった。腰についた顔の裏側を見ると、そこに2つ並んで小さいのがついていたのだ。こんなもの、男はみんな大好きな、おっぱいなんかであるものか。これではまるで睾丸だ。ウウッ……。


 それではいよいよメスを入れるとしよう。うつ伏せにし、白い腹部……に見える胸部にメスをあてがいながら、俺はもう嫌な予感に襲われていた。構わず刃先を肉に埋め、切り裂いた。


 中から光が漏れて来る。


 なんだ、これは。まさか体内が発光バクテリアでいっぱいにでもなっているのか?


 目が覗いた。俺をじっと見て来る。


「うわあっ!?」


 俺は思わず体が後ずさり、後ろにあった手術器具をワゴンごと倒してしまった。


『そこまでよ、橋本教授』


 入口が開いており、誰かが立っていた。手にピストルのようなものを持っている。俺は尻餅をつきながら、声を上げた。

「だっ、誰だ……!?」


 カツ、カツとハイヒールの音を鳴らしながら、そいつは解剖室に入って来て、暗がりからその姿を現した。


 富戸ふとメダ子だった。


富戸ふと……メダ子!?」


『それ以上同胞の体の中を開けて見てはいけないわ』


 菊美きくみ玲子れいこ嬢の引き立て約だとしか思っていなかった彼女が、まるで敵のボスのように、無表情に、銃口をこちらに構えて殺気を放っている。彼女はココミック星人だったのか、ちっとも気がつかなかった。


『ココミック星人には美女しかいないとでも思った?』

 富戸メダ子はそう言うと、顔をグニュグニュと蠕動させ始めた。

『便秘がちになると、我々はこのように太めになり、醜くなるのよ。フッフッフ』


菊美きくみ玲子れいこ嬢をどうした!? まさか、彼女の美しさに嫉妬して……こ、殺したのか!?」


『彼女はうんこ中よ』

 普通に言った。

『我々は女性には用がない』


「俺をどうするつもりだ!?」


『決まっているでしょう?』

 富戸ふとメダ子はそう言うと、銃爪ひきがねを引いた。

『子種を頂くのよ』


 銃口から発射された緑色の光を俺は見た。それに体が包まれると、なんだかいけない薬を飲まされたように気持ちが良くなってしまい、意識が遠のいて行った。




 次に意識を取り戻した時、俺は白いベッドの上にいた。天蓋つきのお姫様用みたいなベッドだ。


『子種を』

『子種を』

『子種をくださいまし』

『子種をくださいましっ!』


 周囲をココミック星人の美女達に囲まれていた。さかりのついた雌牛のように足……いや、太い腕で、砂を鳴らしている。


 隣には富戸ふとメダ子が添い寝しており、恋人のように俺に言った。


『ふふふ。あなたは廃人になるまでここで私達に子種を注ぎ続けるのよ』


 そして俺は富戸ふとメダ子に押し倒され、睾丸のような2つのおっぱいで口を塞がれた。





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― 新着の感想 ―
[良い点] ココミック星人の体の構造がついに明らかに……! 詳細に描かれた外観の様子が、もうおもしろくておもしろくて! いやもう、ほんとに素晴らしい……! ぶわぁあーっと浮かび上がる映像に、手に汗握…
[良い点] くっ……なんてものを読んでしまったんだ(;´Д`) 食欲が減退してゆくのを感じる。 これだからSFは恐ろしいのです(面白いから厄介)
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