少年を待つ少女たち
「……遅いわね、界斗の奴。一体どこをほっつき歩いてるのよ。……来たら、ただじゃ置かないんだから」
「か、会長、お気を確かにです! ……でも、確かに遅いですねぇ」
そう言って舞歌は自室の掛け時計に目をやった。
時刻は午後二時過ぎを指している。
伊予の話だと界斗の部活は正午に終わるはずで、仮にどこかで昼食を食べても午後一時くらいには舞歌の家に着くはずとのことだった。
だが、実際には午後二時を過ぎても界斗は彼女たちの待つこの家に姿を見せていない。
この一時間、伊予が界斗に何度か電話やチャットで連絡を取ろうとしているが、一向に連絡がつかず、そのことが余計に伊予をイライラさせていた。
「やっぱり生徒会長になるのが嫌で、それで――」
舞歌は昨日の界斗が乗り気でなかった様子を思い出して、そんな風に言おうとしたが、
「あいつは約束を破ったりなんてしない!」
伊予は彼女の言葉を遮って、続けて、
「……確かに、界斗は勉強、部活ばっかりの面白みのない奴で、優柔不断で、偉そうなこと言うくせに打たれ弱くて、そんなダメダメな弟だけど、――絶対に約束は守るわ」
「……弟さんが羨ましいです、会長にそんなにも信頼してもらって」
「べ、別に信頼なんてしてないってば。ただ、界斗は私の弟で、生まれた時からあいつのことを知っていて、それで、ただ単にそういう奴だっていうのを知っているだけ」
――それを信頼っていうんですけどね。
舞歌は口の中だけでそう呟いてから、
「では、弟さんは何かトラブルにでも巻き込まれているのかもしれませんね! 至急応援に駆けつけたほうがいいかもです!」
元気よく伊予にそう告げる。
「そ、そうね。ちょっと近くを探してくる。入れ違いになるといけないから、舞歌はここで界斗のことを待ってて」
界斗がトラブルに巻き込まれているという発想はなかったのか、舞歌の言葉を聞いた伊予は慌て気味にそう言って、部屋を飛び出していった。
「本当に、弟さんは幸せ者ですね」
他に誰もいなくなった部屋で舞歌は一人穏やかな笑みを浮かべ、彼女たちが帰ってくるのを待つことにした。




