これじゃあホラー体験だよっママンッ
1、2時間くらい 経ったのだろうか。テントから出ると、太陽の日差しが強い。
「ふっ、太陽が眩しいぜ」手を空にかざし決め顔。うん完璧だ。
一度は言ってみたいセリフシリーズの内の1つだ。
「何言ってんだあいつ。」兄
「セリフと容姿が合ってないな、残念感がすごい。」父
「あら。セイちゃん男装の麗人目指せるんじゃないかしら?」母
『太陽ピッカピカ~暑いの嫌い~』モチ
外では両親と兄とモチが氷魔法の雪でつくったかまくらの中でゴロゴロと寝っ転がりながらひんやりと涼んでいた。兄と父は私の決め台詞をニヤニヤ頬をついてバカにしてくる。
だがみんなずるいぞ。涼しくて気持ちよさそうじゃないか。
バカにしてきた父と兄の上で寝る。
「暑苦しいわ!」良い反応だ。ふふふ。
「セイ...お父さんは別にいいぞ。丁度いい重さで安心する」おい父。毛布扱いするな。
「セイちゃん。さっきの男装の麗人シリーズ今度お母さんともう一回やらない?」
そうだった。前世で母は男装のスター様に憧れてたんだった。ノリノリじゃないか。
かまくらの中は外と比べてかなり気温が低くなっていて快適空間だった。
やばい。もうひと眠りいけてしまいそうだぁ。
…
しばらくの間、心地よさに沈黙が流れた。
「そ、そろそろ起きるか。セイも起きたしな。」父(勇者)
「そうね。名残惜しいけどこれ以上いると皆全滅だわ。」母(聖女)
「はぁモチのひんやりモフモフが...」兄(次代の勇者)
「く...訓練。かまくら。訓練。かまくら...」私(勇者と聖女の子)
『う...僕の快適空間が...』モチ(聖獣)
もう残念な家族丸出しだ。こんな家族に世界は頼っていていいのだろうか...
家族一同、名残惜しそうにかまくらを見つめながら外へと出る。
「よ、よし!ちょっとダラケちゃったから皆でジョギングだ!身体を動かしてシャキッとしようか!」と父
森の中を一定のテンポでかるくジョギングをする。
うんだんだんと頭がさえてきた。まあ私だけ結構 ガチ走りなんだけどね。
歩幅って言葉知ってるかしら?
「おっと悪い悪い。セイには速かったな。」っとおんぶされた。
ちょっと悔しいがまぁいいだろう。ふん。
しばらく私たちはジョギングをして再び訓練していた場所へと戻った。
「頭もスッキリしたし、この後は午後の特訓に入っても良いんじゃないかしら?」
「そうだな。んじゃあ、朝言ったとおりだが、午後は分かれて訓練するぞ。
とりあえず3時まで!」
モチは訓練の間、暇なのでお散歩してくるとのこと。
父と兄は遠くへ飛翔で飛んで行った。
という事で私は母から訓練を受けることとなった。
「いい?何故セイちゃんが私から訓練を受けるのかは分かっているわよね?」
「光属性だよね?」
「そうよ。セイちゃんは光属性の力が強いの。瞳は紫色で勇者の血を引いてるから全属性で雷も使えるのよ?ゴウ君は光魔法も使えるの。
でも今回は急遽明日への備えとしての訓練だから、各自が扱いやすい属性での訓練ってことになったのよ」
「わかった。習得率をあげるにはその方がいいもんね。
お母さん、よろしく」
こうして訓練が始まった。
「セイちゃん。まずは光魔法について教えるわね」
と光属性についての説明から始まった。
光属性には、攻撃魔法、回復魔法がある。
光の攻撃はスピードが速いことが特徴だ。なんでも応用の利きやすいご都合主義の属性のようだ。
回復魔法は癒し効果を対象に与える事の出来る魔法だ。代表例としてヒールがある。
聖女の扱える上級回復魔法はサンクチュアリやリジェネレーションといった広域魔法や欠陥し始めている魂の再生が出来る。
攻撃も支援も出来るのだ。
「セイちゃんは後々、上級を使えるようになってもらうわ。
血が苦手なのは知ってるけど、我慢よ。この世界ではケガはつきもの何だから。
とりあえずまずは攻撃魔法からやってみましょう。」
以前行ったライニングアローやバレットを土魔法で形成した的めがけて放つ。
そのほかに広範囲魔法として、飛翔で少し高いところまで飛び両手を下にかざし
「ライニングレイン」光の銃弾の雨を的にめがけて降らす。手のひらを絞れば限定的に、開けば広範囲の攻撃となる。
次に以前起きない兄に放った「フラッシュ」を無数に放ち目くらまし攻撃。
続けて…
「スター手裏剣!!!」
オリジナルの斬撃技だ。
光を星の形にして、各角を鋭利にし薄く仕上げる。飛ばす際に高速回転を施し一気に対象へと放つ。的は スパッ と奇麗に斬れて崩れた。
最後に、魔力を手のひらに集めて練る。
…
「ライトニングッキャノンッ!!!」
大砲系の超大型魔法だ。
ドゴォォォォォンッッッッ
的のあったところは跡形もなく、後ろに見えていた木々も無くなってしまっている。
ふふふ。爆風が私の髪をなびいて行く。
「セイちゃん。バトルアニメの観すぎだったのかしら。初めてでこんなにできるのもすごいけどオリジナルの魔法が過激すぎるわ!」
母が少し疲れている。消失させてしまった木々たちを植物魔法で芽を発芽させサンクチュアリで成長させて若々しい木々を再生させた。
すまんな、バトル物大好きなんだ。なんせ兄の影響で、初めて買ってもらったおもちゃは仮〇ライダーベルトだからな。
「おおう。環境破壊してしまった。再生してくれてありがとうお母さん。
とまあ攻撃魔法はこんなところが今思いつく技かな。一番扱いやすいのはバレット系だと思う。指先でレーザー使って照準合わせられるし、ぶれもない少ないから。」
「確かに良いと思うわ、ただし破壊しすぎよ。再生させることも忘れないでね。
そして今のは全部遠距離の戦い方ね。近距離戦にも備えておかないとダメ。見てなさい」
と母が光の剣を形成した。
そして身体強化で一気に的に詰め寄って斬る!
か、かっこいい!
「どうかしら。接近戦では身体強化+剣や槍などの武器を使うのが一般的よ」
ふむ。剣か...今は身体が小さいため長物は扱いにくい。重いものもダメだ。
となると苦無がいいな。小さな手でも握りやすいし飛び道具としても使える。
土魔法でイメージ。形成。硬度は十分だと思う。光属性で作ってみたかったが、動きながら一定の形と硬度を維持するのには自信がない。というかまだその力量がない。
...うん。悪くはないはず。
身体強化させ的へ苦無で斬りつけてみる。
威力はそこまで無いが的に斬った跡は残っているようだ。
力がないならスピード重視の接近戦を目標にしよう。
もう一度身体強化する。
空中に無数の簡易的な無属性の盾を形成。
ジャンプして軽く 飛んだら、無数にちりばめた盾を足場にして空中で動き回る。
なるべく速く。そして少しずつ的へ苦無で何回も斬りつける。
私の身体は小さく軽い故に小回りが効く。
しばらく的を狙っていると崩れるように壊れた
「いいじゃないセイちゃん!
子供のあなただからこその技ね。苦無もいい選択だと思うわ。じゃあ、私の分身と次は戦ってもらいましょうかね。」
土魔法でゴーレムを誕生させた。母の姿で、手には光の剣が握られている。
ごくり…つよそうだ。
「さっきの動きでも何でもいいから、目標は私のゴーレムに勝つ事。制限時間は1時間よ。いい?」
コクリ
全身に魔力を纏う。
「では、始め!」
まずは遠距離攻撃。
動けなくするために、植物魔法の蔓でお母さんゴーレムを巻きつける。
だが剣で蔦が斬られてしまうようで、捕らえられない。
次に氷魔法で足元から動けなくしようとするが
「ッッひぃぃ」
魔法を発動を阻止しようとゴーレムが一気にこっちに詰め寄ってきた。
能面無表情&無機質な感じが怖すぎる。
接近戦に持ち込みたいが、捕縛もしていない状態なため相手の自由が効きすぎて攻撃をうけてしまう。
よってまずは逃げる。
ザンッザンッ
少し距離が空いていても、斬撃を飛ばしてくる。
よって避ける避ける。バックステップで距離を取る。
その間に、私とゴーレムの間に土の盾を何層も発動。時間稼ぎだ。
バンッバンッ
と土の盾がどんどん壊されていく。
お母さんゴーレムは一心不乱に目の前の盾を斬り壊しながら近づいてくる。
だから無表情なのこわいよ!サイコパス臭がすごいのよ!
こっわい怖い。ホラー映画のワンシーンのようだ。
怖さに若干足がガクブルしてるがなんとか耐える
取り敢えず動きを封じて、ホラー体験を中断させたい…
「アイス」
ギィィィーン
氷魔法で足元を一気に凍らせる。
母ゴーレムを覆う様に上にも氷魔法で一気に閉じ込める。
「よ、よし」
…動きを封じたか。
浮遊し上へ、相手が届かないであろう位置に移動する。そして上からトドメを刺す。
「ライトニングレインッッ」
ダダダダダダ
上から雨のように光のバレットを降らす。
確実性が戦いには大事だ。
なるべく安全な距離から攻撃を仕掛ける。
とその瞬間
ザンッ
ッッッ!!!
光の鞭がいきなり母ゴーレムがいた位置から此方にしなって向かってきた。
やばいこれじゃぶつかるっ!
咄嗟に無属性の盾を3層、自分に纏う様に発動し少しでも軌道から右に外れようとしたが...
バンッ
「ゔっ...」
遅かった…
左半身に鞭がもろに当たってしまった。
痛みはなく2枚盾は壊れたが、ぶつかった衝撃によって吹き飛ばされる。
飛ばされて落ちる先は地面だ。何とかしないと。
痛いのは嫌だ。
植物魔法で落ちる先に蔦を伸ばしスパイダーネット状に…
ポヨーンポヨーン…
ふぅ。危なかった。なんとか痛みもなく地上へ着陸...
…
ん?
「ギャァァァァ」
何となく気配を感じたので後ろを振り向くと、
そこにはのっぺらぼうの母が…(ゴーレム)
急いで身体強化を練り直し、その場を離れる。
だめだこりゃ。ホラーが続くのは心臓に悪い。
はやく片付けたい。
どうするか…
沼シリーズやってみるか?
ゴーレムが追いかけてくるので途中途中に沼を形成していく。
おっ!沼にハマった!
飲み込め飲み込め!とどんどん沼に飲み込まれ再起不能になると思ったが…
ズンッズンッ
何かが膨張している音がする。
これは嫌な予感。
まてまて、そもそもゴーレムって生物じゃ無い。呼吸できなくても動けるんだった。失態か。
ダバァァァァン!!
母ゴーレムが沼を破壊。
何かで膨張させて沼地獄を突破した様だ。
「くっそう!もうこわいよぉ〜」
逃げの一手。半泣きだ。
逃げる逃げる。ひたすら逃げる。
身体強化もなかなか慣れたもので木の幹や枝を蹴って猿の様に進む事ができる。
逃げても追ってくる。時間もまだ半分くらいしか経っていない。これでは埒があかない…。
次の一手を考えるしかない。やけくそだ。
遠距離攻撃、封じ込め、沼シリーズはダメだった。
…いや、遠距離攻撃は広範囲魔法で一つ一つの威力は弱かったか。
なら一点集中で攻撃してみたら?
やってみよう。キャノン。
目標はほぼゼロ距離での攻撃だ。
それまでに、捕縛、接近戦を行う。攻撃魔法で自身もダメージを負う可能性は高い。
「ううん。魔力は…多分まだある。」
かなりハイペースで消費してしまったから、何となくだが倦怠感?ダルさを感じる。
だがまだ行ける。
まずは、自身に盾を纏うように展開する。
固く強くイメージをして魔力を練り上げる。そして身体強化。
ダーンダーンダーン
母ゴーレムが近づいてきた。
正直体力はもうあまりない。
やってやるしかない!
逃げて母ゴーレムに背を向けていた体をクルっとひねり、方向変換
地面を蹴り距離を詰める。
母ゴーレムの足場を凍らせて一瞬だけでも足止めする。
「ライトニングバレット!!」剣を持つ手を狙う
キンキンキンキンッ!
剣で数段弾かれたが腕を数か所貫通させた。
今しかない。
母ゴーレムの背後に一気に移動する。
だが相手はそれに気づき、上半身の向きをグルリと変えて攻撃してくる。
再び氷魔法で全身を凍らせる。
それでもゴーレムはガタガタと身体を振動させて氷を壊そうとしている。
その隙に、ゴーレムの胸の前に両手を広げ、魔力を手のひらへ集中的に溜める。
ドッドッドッドッっと手のひらに魔力が集められているのが感じる。
そろそろ良い頃合だろう。
いけぇ!
「ライトニングキャノンッ!!」
ピカーッッッッ
一瞬辺りを白くするほど光り母ゴーレムへと放たれた。
ッッッッバァァァァァァン!!!!
お、ゴーレムが無くなっている?消滅したのか!?
「やった~~~っっっ...(フラッ)!?!?」
喜びのあまり万歳をしたが、一気に身体から力が抜けてしまった。
ん…なんだか視界がボヤける。
あれ?お母さんが必死な顔してこっちに来た。
あ、魔力切れか…
ーープツンーー