...しーーーーん 遊園地です!
馬車でパカラパカラッと進み「ここだ!」と連れられてきたのは
大きな通り
そして、「遊園地?なのか?」
目の前に広がるのは魔法で作られた遊具達。
無重力の様にふわふわと浮く子供達
鉄砲の様に飛んでいく子供達
氷の滑り台をものすごい速さで落ちていく子供達
「「あっっっっぶな」」
これが1番最初に思う感想だ。
いやいや、安全対策どうなってんの
ニコニコ笑顔で子供達がバンバン飛んでったりしてるんだが?
「2人とも遊園地知っているのか!
ここはこの国で唯一の遊園地なんだ!
考案はレグルス様だが、この領地の職人だけで作ったんだ!家族持ちの騎士が多いからな、休日に楽しめるところが欲しかったんだ。
もう一つ子供を、強くするためにもここの遊具は役に立つからな」
どうも辺境の子供達は逞しそうだ。
日本の遊園地を基準にしてはダメだ。
安全性とかは捨ててきてる。
安全は自分で確保するらしい。
よく見ると子供達は着地の仕方がうまい。
猿の様にロープを、掴んで威力を軽減させてたりする。逞しいな本当に。
だが、さすがに私の年齢と体格ではできるものも限られる。
…
「そう言えば、レグルスって誰だ?聞きそびれな」
「お前らなぁ、レグルス様は勇者様達と一緒に旅していた仲間の1人で、賢者様とも呼ばれているお人だ。生活を豊かにしてくれる色んな知恵を分けてくれるんだ。」
その人物を知らないことに呆れたようにバーレッド君が説明をしてくれた。
なるほどなぁ。
そこでバーレッド君が
「あれ楽しいぞ!」
と勧められたのが、水の膜でできた大きなトランポリンだ。従魔も入れるそうだ。
モチも嬉しそう。
乗ってみる。
ぽよんぽよん
足元が不安定で足を取られるが、両足へ体重を水膜へ乗せると反発して体が持ち上がる。そこまで跳ねないみたいだから危険もなさそう
おおお、楽しいな。
ぽよんぽよん
これは、もしかすると…
「モチ!おいで!」モチを誘い
人の少ないところに行って寝っ転がってみる…
おおぉ
快適…全身がヒンヤリと包まれて、最高級の低反発マットレスとも感じ取れる。
モチも気持ちよくて水膜にスリスリしている。
あぁなんて素敵なんだ。良いものを知った。
寝っ転がっていると兄と目が合い、彼はニヤリと笑みを浮かべて近くで寝っ転がった。
「さすが我が妹だ。着眼点が素晴らしい。」もう兄は目を閉じている
「お褒めに預かり光栄です。」
と、偉そうな事を言いながら遊具の上でゴロゴロ寝っ転がる。
「お、おいっ!2人とも!何で寝てるんだよ!
も、もしかしてつまんなかったのか?…」
なんて事だ!シュンとさせてしまった。
「違うぞ!バーレッド!俺らは今存分に楽しんでるんだ!ほら!寝てみろ!」
兄はバーレッド君をこちら側に引きづり込むようだ。
「お…なんだこれは。す、すごく快適じゃないか?
これは、恐ろしい。すぐに…眠くなるな…」バーレット君が旅立ったようだ。
すると他に遊んでた子供達が何やってるのー?とわらわらと集まって来てみんな一斉に寝始めた。
おいおい。みんな寝ちゃバレちゃうじゃないか。
中には既に目をぼーっとしてヨダレを垂らし始めている子までいる。
…しーーーーーん
「み!みなさん!起きてくださいっ!
寝るところではありませんよ!羨ましい!ほら!起きてください!」
と職員さんが呼びかけた。
おい。羨ましいって心の声漏れてるぞ。
「危なかったな、危険だ。何もできなくなるところだったぞ。
次行こう、目を覚ますぞ!」
次はクルクル回る植物に掴まって空中散歩する遊具、大きな傘を広げて下から風を受けてふわふわとぶアトラクションなどなど何点か楽しんでまた街へ行くことにした。
今向かっているのは、露店が賑わっている大きな噴水のある広場だ。
前回、夕飯を食べに行った1番高そうな区間と比べてると庶民的で生活に寄り添ったお店が多い。
お皿や、魔物の皮を舐めして作られたバッグや、鞘袋、コート。
また野営で必要な食料や、ナイフ、ランプ、魔除けなどのアイテムも売られている。
この辺境は寒くなると雪が積もるとの事でその間に、副職として用具の製作を行うのだと言う。
冬の季節の狩は視界と足元が悪く、経験の長さと腕が良くないと命を落とす危険が高い。そのため領民や冒険者も防壁の内側で生活をする。
今、この領地の季節は秋に近づいている頃で、まだ暖かい陽気だ。しかしこれから秋になると、冬に向けて日持ちの良い食料の販売が盛んになってくるそうだ。
バーレッド君は終始この街、テイル領のお話を楽しそうに、嬉しそうに話していた。
私たちも、異世界、というよりも辺境の生活に興味津々だ。
私は日持ちする食料について、兄は皮で舐めした製品にとくに惹かれていた。
冬は特に寒いので、辺境での生活はこの国の中では厳しいものらしい。ただその分領民の団結力が強く、お祭りなどの催しは盛大に行われるそうだ。
いいな。活力のある街。
段々と日が暮れて、夕食の時間になって来た。
バーレッド君は最後にと、おすすめのジュースをご馳走してくれた。
「これ!うまいんだぞ!飲んでみろ!」
と渡されたのは
この季節で辺境名物のブドースムージー。
そう、葡萄である。
これを、風魔法で皮も含めてスムージー状にしたものだ。どうやら皮は肉厚で地球のものと違い食感がある。アロエのような感じだ。
「美味しい、食感が良いな。
これもう一杯欲しい。あ、2杯。モチの分もな」
『ワフっ!』尻尾がブンブンだ。
犬は葡萄系ダメなのだが…魔獣は関係なしだ。
「わたしも!もう一杯!くだちゃい!」
兄がお金を払おうとすると、
「ここはご馳走させてくれ。今日、家で驚かせてしまった礼だ。」
うむ。5歳とは思えないぞ。中身に小さなおっさん入ってないか?折角のご好意。
ありがたく頂こう。
横目で大人達をみる。
大人達はそれをアルコールで割って呑んでいるようだ。
しかし、このジュースは美味しい。アルコールで割らない方が濃厚な味わいで幼児の舌には極上だ。ゴクゴクと飲み干して行くとお腹も膨れ、日中の疲れもあってか眠くなって来てしまった。
「モチ、大きくなれるか?セイを乗せてくれ」
ワフっ!といい巨大化スキルで大きくなりもふもふベッドの完成だ。
眠くなってグデグデになってしまった私をモチはそおっと背中に乗せてくれた。
…最高、至高
「すごいな!モチって言うのか?!カッコいいぞ!!」
バーレッド君は大きくなったモチに目をキラキラさせて釘付けだ。
「お母さんの従魔なんだ。そして俺たちの家族なんだよな〜モチっ!あ、バーレッド、触っていいよって言ってるぞ」
いいのか!?!と恐る恐る毛並みを触るバーレッド君。あまりにもフワフワで目が蕩けている。
お、顔をスリスリし始めた。こちら側の人間かな?
「モチも嬉しいってよ、良かったなバーレッド」
ふふふ、平和な光景だ。
至福な光景を見ながら私は微睡みにぃ…zzz
スヤァ
…
セイが寝た。フッやはり我が妹ながら可愛い。
よく1日中お昼寝なしでここまでもった。
「お、おい!寝てしまったぞ!セイ!…
なぁ、やっぱりセイって可愛いな。プクプクしてて」潜めながら話してくる。
バーレッドめ。可愛さに気づいてしまったか。
「やらんぞ。」
「なんだよゴウ、過保護だな。隠すなよ。」
くっ、コイツはいい奴だが、セイはやらんぞ。
過保護上等だコラ。
何にせよ今日はここまでだな、っと言う事で解散。
後日、黒龍の調査が終わった後またテイル邸へと招くとの事なのでまたその時に、と言うことになった。