豪快少年!バーレッド・テイル
私たちは今アーバン王国の辺境伯の納めるテイル領へと来た。
取った宿は、一泊一人大銀貨1枚(約1万円)の従魔小型可の少しお高めの宿を取った。
ちなみに私と兄はお子様料金で銀貨5枚分(5千円)だ。コスパがいいな。
今は部屋の中でくつろいでいる。
「この国はまだ物価が低いからな。ここの宿はかなり良いランクだと思うぞ。
一応1週間とったからその間休憩と観光だな。」
「おおお」「よし!おれまず冒険者ギルドに行ってみたい!」
兄よ。ハイテンションだな。
「落ち着きなさい。2人とも注意したことは忘れちゃだめよ。
まずこの後はお昼を食べるわ。そのあとは宿に帰って1、2時間お昼寝休憩しましょう。
セイちゃんとお兄ちゃんは必ず寝ること。お買い物も、観光も明日からよ。しっかり体を休めましょう。」
「そうだな。お前たち少しは休んだ方がいい。明日からでも時間はあるからな。」
「う…そうだな。疲れてるもんな。ちゃんと休むぞ!」
「もうねむいや…ごはんいらない…」
私はもうすでに限界がきているのだ。幼児は睡魔に抗えない!
「あらセイちゃん本当だわ。もう目がポヤポヤしてるじゃない。
すぐにお昼ごはん食べに行きましょう。セイちゃん!もうちょっと頑張ってね!」
あぁ悲しいかな。もう周りの音が心地よいBGMにしか聞こえない。
あぁ…おやすみなさい
…
セイがスヤスヤ眠った。
「お母さん、セイ寝ちゃったよ」
「ああ!一足遅かったわ!セイちゃんったらいつも眠くなるとすぐに落ちちゃうのよね。
せめてごはん食べてから寝てほしかったんだけど…疲れてたのね。」
「セイかわいいよな。ぷにぷにしてる」
ぷにぷにと頬を突っつく。前世でも小さい時よくこうしていた。
「あら。可愛いのは昔も今も変わらないけど今は特に幼児だから一層可愛いわね。」
「昼食は屋台で買ってくるか?セイを置いて行けないからな。ははっ幸せそうに寝てるな。
ゴウ一緒に屋台行くか?」
「うん」
「じゃあお願いね。私とモチは残るわ」
…
ぐうううううぅ
「お腹すいた…」
「おう!目が覚めたか!」と兄が元気にこっちを見ている。待っていたかのようだ。
「お、腹減っただろ。もう食うか?」と父
「うん。ぺこぺこ」
お父さんとお兄ちゃんが買ってきたものはジャンキーなオークの串焼きとキッシュっぽいもの。
「お肉は寝起きだと重いからキッシュだけでいいや。ごめ「じゃあ俺が食う!」
っとすぐ串焼きを兄がかっさらていった。これを狙ってたのか。モチも一緒に食べてる。
「あいつらオーク肉にはまったみたいだな。」
…
昼食を食べ終わり今は買い出しへの準備をしているところだ。
そこで必要なものをそれぞれ話し合っている。
私と兄はどちらもバックを買う事にした。アイテムボックスを使うときに誤魔化すためだ。
父はマジックバックも容量大を何個も持っているらしいが見た目が子供に不釣り合い。
サイズも私たちにとって大きいのだ。
「よし。今日はとりあえず2人のバッグを買って、そのあと軽く町を見て回ったら夕飯だな。今日は早く寝て体を休めよう。」
「注意事項忘れてはダメよ?2人共。モチはそのまま小さくなっていてね。」
「ラジャッ」兄
「わかりまちたっ!」私
『うん!』モチ
そうして町へ私たち2人のバッグを買いに来た。
「いらっしゃいませ~ゆっくり見ていってくださいね~」
優しそうなご婦人が店主みたいだ。店員も多い。大きいお店の様だ。
お店は子供用の服や小物を扱っているようだ。多くのお客さんがいる。
貴族っぽい人もちらほら…
「おかあしゃん。あのクマしゃんバッグがいい。」
「お父さん!俺あの剣のマークが入ってるやつがいい!」
『僕はこのうさ耳帽子がほしい…』
私はクマの顔の形の斜め掛けバッグ。兄は剣が2本クロスしているマークの入った肩掛けバッグを選んだ。
割と兄弟そろってノリノリなのだ。恥なんてその辺に捨ててるのだ。
モチは純粋にかわいい!あざとい!
「どう?かわいい?」目をきゅるん
「かっこいいだろ!目指せ!Sランク!」ドやぁ
『僕は?かわいい?』尻尾フリフリ 君が一番や
母も悶えている。口を押えてグーサインしている。かわいいもの大好きだもんね。
「お似合いですよ、お客様。未来の大冒険者様方にはこちらもサービスしますかね」
ニコニコで素敵なご婦人店主に渡されたのはクマと剣のストラップだ。
ふざけすぎてしまった。
「あ、ありがとうございます。」ペコリ私
「ありがとうございます。」ペコリ兄
2人一気に後ろめたい気持ちが勝り、改まり慣れ親しんだ社会人マナー「敬語」を展開してしまった。
「あらあら急にお行儀よくなって偉いわね」ご婦人は気にも留めていないが
後ろの両親は絶賛苦笑いである。
そうして、各自バッグとおまけのストラップを受け取り店を出ようとすると
「おい!お前!そこのちっこいのと剣のバッグのっ!!」
ん。私たちの事か?と兄も一緒に振り向くと、
そこにはいかにも良い所の坊ちゃんがこっちにズカズカ来た。年齢は兄と同年代くらいだろう。赤色の髪、赤色の瞳で元気で溢れてますって感じの子だ。
隣の執事っぽい人はやれやれ、とした顔。
なんだ?いちゃもんか?と思ったが
「お前!冒険者になるのか!?」
兄の手を握ってキラキラな目で訪ねている
「お、おう。将来な。」と兄はキラキラな目が眩しくてぎこちない返事をしている。
「どっちで戦うんだ?剣か?魔法か?!」
「まだ剣は習ってないが、剣も魔法もどっちもだ。」と兄も答えている。
「なんだそれ!かっこいいな!…よし!お前!俺と友達になれ!」
その子は兄の事が気に入ってしまったようだ。早急だ。
「お...いいぞ。俺はゴウだ。お前は?」
「ん?俺のこと知らないのか?やっぱお前…ゴウは面白いなっ」少年はニカッと笑い
「俺は、バーレッド・テイル!ここの領主の息子だ!よろしく!」
おう。やっちまったな兄。
「ご領主の息子様でしたか…これはとんだご無礼を」と兄が頭を下げようとする
面倒ごとは避けたい。トラブル回避には即座に対応する。
これまた社会人マナー「トラブル・クレーム対応」を展開したようだ。
「いや!いいんだ!お前が店内でSランク目指すって言った度胸に感銘を受けたんだ!なんてったってSランク冒険者は世界に5人しかいないからな!その内には勇者様だっているんだ!俺の憧れだっ!」拳を作り息巻いている。
私と兄はお父さんをじと目で見る。父、目をそらすな目を。
「まぁなんだ…いい目標を持ってるんじゃないか?」
「だろっ!?分かってくれるか!
そうだ!お前どこ出身なんだ?俺の事知らないんだもんな」
父よ、間接的に息子に「いい目標」と言われたからってニヤけるんじゃない。
母よ、涙ぐむな。なぜそこに今感動している。異世界来て親バカこじらせてるなぁ。
「俺は隣の国から来たんだ。これから大国に向かう予定だ。」
「ああ。戦争か、なるほどな。じゃあどれくらいここに滞在するんだ?」
「1週間だな。」
「そうか!じゃあ明後日!遊ばないか!?そこのチビも一緒に!俺が案内してやるよ!」
なんだこの野郎、チビチビと生意気な!とは思わない。
せっかくの練習相手。
「わたちセイ!3しゃい!」渾身の内3本指のサイン。指が付きにくい!親指と小指の距離っ!
「おう!セイっていうのか、かわいいな!明後日は大丈夫そうか?!」
おお君は世に言う天然タラシという者か?将来振り回されるお嬢様方が目に浮かぶ…
「いいぞ。遊んで来い」と父
「だってさ。じゃあ待ち合わせはどうする?」
「このお店の前はどうだ!?分かりやすいだろ!13時頃でどうだ?!」
「いいぞ。」
「んじゃ決まりだな!じゃあな!」「失礼いたします。」
元気に駆けていってしまった。隣の執事さんっぽいお付の人も優しい笑みで挨拶していった。
「なんだか強いキャラが登場したね。」
「あぁ。ま、これも旅の一興だな。出会いっていうのもさ。」
「ん。確かに。同年代の子なんて接したことも無かった。」
「お前らよかったな。ゴウも友達できて良かったじゃないか」
「おう。随分豪快な子だったけど悪い気はしない。もしあれが演技だったら悲しいわ」
「あらあら、また遊ぶのにそんなこと言わないの。今は子供なんだから深く勘繰る必要なんてないわ。」
…
強烈な出会いをした後、私たちは軽く町を散策した。
今日の夕飯はレストランに行ってみたいと兄の要望があり、レストランで夕食を取る事になった。
見て回って選んだお店は、町の一等地に構える敷居の高そうなレストラン。
すこし裏路地の人気のないところへ移動し服装と身なりを整えた。
母と私はワインレッドと黒のリボンのワンピースで上品に。クマさんバッグは忘れてはならない。
父と兄は白シャツに黒いパンツ。父は剣を、兄も剣のバッグを身に着けた。
モチには従魔が休める所にいてもらっている。
店内に入り、シェフのおすすめを聞いた。曰く、メインは魔物の肉を扱っているがコッコーの卵をふんだんに使ったオムレツの方がおすすめだそう。私も兄もそれを注文し、食後にココチという粒粒でプチプチとした触感の果物をモーモーのミルクと混ぜ合わせたデザートを頼んだ。
両親はオムレツと魔物のお肉を1皿頼みシェアするみたいだ。ワインも頼んでいる。…ロゼっぽいな。うまそうだ…じゅる(涎)
「お待たせしました。こちらのオムレツ4品はトメトのソースをかけてお召し上がりください。そしてこちら本日の魔物のステーキでございます。
お肉はマウントという有袋類の魔物お肉です。本日仕入れたので臭みもございません。お好みで赤ワインのソースをかけてお召し上がりください。」
ウェイトレスは説明が終わった後ワインを注いで戻っていった。
「…ずるい。」
「俺たちにひどい仕打ちだな。何をしたっていうんだ!」
兄弟二人は声を潜めて猛抗議。もちろん目線の先はロゼワインだ。
「あらごめんなさいね。でも仕方ないのよ。それとも鏡を見ながら食べる?」
母。文句も言わせない気だ。ぐぐぐ
「まあ食おうじゃないか。いただきます。」
父が話をぶった切った。チッ、この世界はいつから飲めるんだ!最低でも10年以上はお預けだろう…
「「むむむ…いただきます」」解せぬと言わんばかりにワインを睨みながら言う私たち。
まぁ食おうじゃないか。目の前にふわっふわのオムレツがあるのだから!
まずはソースをかけずに一口パクっt「!!!!!」
「こ、これはおいちい!甘さもいい!何より中に具沢山のキノコ類が入ってて味にコクがある!」
「このソースを掛けるとまた味が変わるな。酸味が甘味を引き立ててる。うまい!」
ついつい年齢を忘れて饒舌になってしまったが、やめられないとまらない。
ガッついてしまった。
「あらら。美味しいものには目がないわね相変わらず。はいあなた。乾杯」
「ああ、乾杯。うまいな。久々だ。肉分けて食ってみるか。」
父は肉を私たちに小さく切って渡してくれた。
これも一口食べてみる。
「じょうひん!このソース絶対かけたほうがいいよ!」と私
「そのソース、パンに付けてもうまそうだな…」兄、さすがだ。
そんなことを話しながら食事を終えると「お料理はいかがだったでしょうか。」とにこにこ笑顔でウェイトレスさんがデザートを運んできた。
「おいちかった!」「うまかったぞ!です!」
「ふふふ。それはよかったです。そしてこちらが食後のデザートにございます。
ココチの果実が下に溜まっていますので、下からすくってミルクと共にお召し上がりください。」では失礼します。と、お皿を下げていった。
「おいしそうね。飲み物みたいにグラスに入っているのね。素敵だわ。」
「ああ、食べてみよう」と父も目をキラキラさせている。
スプーンでココチの実を下からミルクと一緒にすくって食べる
すると冷えた甘いミルクがココチのぷちぷちした触感と相まって口の中が楽しい。
ミルクも甘ったるくなくすっきりとした味わいで、ココチをつぶしたときに出る甘酸っぱい果肉の味を邪魔しない上品なデザートだ。
「もうなくなっちゃった。」
「俺も…」
「私もだわ…」一斉に父を見る。
「わかったわかった。もう一杯頼もう。腹壊すなよ!」父も苦笑しながらもう一杯それぞれに頼みテイクアウトでモチの料理を頼んだ。
「「「ごちになりますっ」」」
こうしてアーバン王国入国日、終了