エピローグ
結婚式のその後の二人です!
凍える寒さに覆われた冬の夜、私たちは星の間からバルコニーに出て、中央にある長椅子へと向かう。
かつて冷たい大理石に座椅子と小さな絨毯が敷かれていたその場所は、今やクロード様が取り寄せてくれた可愛らしい小花柄の絨毯と、ふかふかとした座り心地のよい二つの長椅子が置かれている。
クロード様は片手を私の背中に添えて、もう片方の手を私たちの子ども、アダムと繋いでいる。
アダムは私に似た明るい茶色の髪と、クロード様の金色の瞳を持って生まれてきてくれた待望の第一子だ。
天使のような微笑みは幼い頃のクロード様を彷彿とさせて、リリーとジャスミンは「昔の旦那様にそっくり!」と口を揃えて言っている。
クロード様の魔力を受け継いだアダムは、三歳になる今年から星詠みの魔法を学んでおり、クロード様と一緒に星詠みをすることがある。
アダムも幼い頃のクロード様のように、星詠みをしているクロード様を見て怯えていた時期はあったのだけれど、私が「星詠みをしているお父様は綺麗で見惚れてしまうの」と言うと、アダムも挑戦するようになってくれた。
そして私のお腹には二人目の子どもがいることが分かり、私の隣ではいつもリリーとジャスミンが控えていて、私が転んでしまわないように見守ってくれている。
アシュバートン家の使用人たちは本当に心配性で、私が二人目の子どもを身籠ってからというものどこに行くのにも一緒で、以前はクロード様と二人でお茶をしている時も離れず付き添っているものだから、クロード様が不機嫌になってしまった事がある。
「アダム、今日はお父さんと一緒に星詠みの練習をしよう」
クロード様は向かい合わせになっている長椅子の片側に私を座らせると、アダムを抱き上げて差し向かいの長椅子に腰を下ろした。
「お母さんの手をギュッと握るんだよ」
アダムのちょこんとした小さな手を私の掌に載せて、その上から自分の掌を重ねる。私は二人の掌をギュッと握りしめた。
「母上、弟か妹が生まれてきたら、僕が星詠みの魔法を教えるね」
「ふふ、頼もしいお兄ちゃんがいてお母さんは嬉しいわ」
アダムの額に口づけを落とすと、間髪を入れずクロード様が私の唇を塞いだ。
「旦那様っ! みっともない嫉妬はお止しくださいませ」
「そうですわよ。坊ちゃんが唖然としていますわ」
リリーとジャスミンに咎められてもクロード様は素知らぬ顔で、アダムに魔法の授業を始めている。今では当たり前のようになった日常の一場面だ。
あと数カ月すればこの風景の中にお腹の中にいる子も加わるのだと思うと、自然と頬が緩んでしまう。
「二人とも、星詠みが終わったら一緒に星座の話をしましょうね」
私は二人の手を握る力を強め、この大切な人たちが無事にここに戻ってこられるよう、祈りを込めた。
最後までおつきあい頂きありがとうございました!
このお話はこれにて完結です。
『星詠み侯爵様』はこれまでの作品にはないタイプの登場人物を書きましたので、毎話ドキドキしながら投稿していました。
いつもですと逞しいヒロインや腹黒なヒーローを書いているので、健気なアデルや紳士的で穏やかで優しいクロードを考えるのは、初めて訪れる場所に旅行するような感覚があり楽しかったです。
今回はタグにあるようにざまぁ要素のあるお話でしたが、アデルのクロードの恋にきゅんとして頂けましたら嬉しいです。
また、よろしければ感想や評価★★★★★などいただけると幸いです。次作執筆の糧にします……!
(もちろん、マシュマロもお待ちしております!)
それでは、新しいお話の世界でお会いしましょう。




