誰でもショートショートが書けるという『田丸式メソッド』を改良しました
誰でもショートショートが書ける!
そんな触れ込みの『田丸式メソッド』をご存知ですか?
残念ながらその正体は、「書けたものを小説と言い張れば、それは全て小説」と教えて、ショートショートの書き方を教えましたよ、というもの。
必ずしも、まちがっちゃいないけれど…
あんまりなので、田丸式メソッドで、本当に、ショートショートが書けるように、改造を施します。
田丸式メソッドを簡単に説明しますと、無関係な二つの単語をくっつけて、意味の通らない一文、”不思議な言葉”を作り、それを起点にして物語を書く、というもので、発想は悪くありません。
例えば、こんな感じです。
『ジップロック人魚』
「サンマ、食べる?」
「一匹はいらないから、半分こにしようか。」
「それじゃあ、はい。」
僕に頭の方をくれる。
「あれ、残りをどうするの?」
「今はいらないから、とりあえず保存しておく。」
「あ、その袋、ちょっと貸して。」
マジックで二文字を書き込んでみた。
「ちょっ、趣味の悪い落書きをしないで!」
ただ、田丸式メソッドの欠点は、「落ち」が保証されないことです。
つまり、それをクリアーすれば良いわけです。
ぶっちゃけ、田丸式メソッドは、ちょっと特殊な三題噺(正確には、二題ばなし)ですね。
三題噺の一番の見せ場は、お題をいかにしてクリアーするのか、と言うところです。
ようは、”不思議な言葉”という無理難題をクリアーしました!って、ところを、読者に見せつけることができれば、それが見せ場となります。
従って、お話にタイトルをつけた、のではなく、まず、不思議な言葉と言う無理難題があって、それをクリアーして見せました、ということを、読者に理解してもらうことが、一番重要な課題となります。
読者に、「フーンだから何?」と、スルーされてしまわないように、ここが見せ場ですよ、とアピールして、気がついてもらわないといけないわけです。
【ポイント、その1】 小説のタイトルに、お題『○○な××』と明記します。
(”○○な××”の部分が、単語を組み合わせて作った、不思議な言葉になります)。
もうね、タイトルを利用して、これが”お題”ですよ、と宣言して、読者に真っ先に理解してもらうのです。
そうすれば、「えっ、なに、この意味不明な言葉、どうやってクリアーするの?」と、期待を込めて読んでくれます。
これで掴みはOK、下準備も整って、一石二鳥です。
やらない手はありません。
【ポイント、その2】 やたらとファンタジーにしてはいけません。
「そんなの、ファンタジーにすれば、なんだってありじゃん」と読者にがっかりされます。
ショートショートは、ミステリーに近いです。
ミステリーでがっかりされるようなことは、ショートショートでもがっかりされます。
ただし、絶対に、ファンタジーではいけない、ということはありません。
幻想的な描写で詩的にしたり、メルヘンチックな童話風にしたり、ファンタジー設定を利用した、あっといわせるような落ちを別に用意したりすれば、ファンタジーでもOKです。
まあ、基本、「お題」をクリアーするタイプの話での、ファンタジーは、お薦めはしません。
現実世界の縛りの中で、見事にお題をクリアーしてみせた方が、「おおっ、すげー!」と、思ってもらいやすいです。
では、厳しいリアル縛りの中で、意味不明な文章をどうやって実現させるのか?
まずは、やって見せます。
お題『トイレの無い京都』
「折角、京都まで来たんだからさ、観光しようよ。」
「ダメです、仕事で来たんですよ、京都にそんな時間はありません。」
「あ、俺、ちょっと、トイレに・・・」
「はいはい、京都にトイレなんてありません。」
どやぁ。
さて、どうやって実現させるのか、ピン!ときましたか?
【ポイント、その3】 ただ、セリフとしてしゃべるだけ、です。
たとえ、リアル縛りがあったとしても、口で言うだけなら、何でも言えますからね。
もちろん、ただ、セリフを言えばいい、というわけではありません。
【ポイント、その4】 伏線を張って、根回しをすませます。
「起承転結」は、ご存知ですよね。
でも、ショートショートは短いので、パートが4つも存在しなかったりすることも。
そんなとき、代わりにあるのが、「伏線」と「その回収」です。
(あ、起承転結が絶対に無いっていう訳じゃありませんよ、念のため。)
それだけ、伏線が大切って言う事です。
おかしな発言が、必然性をもって受け止められるように、シチュエーションを整えます。
って、いやいや、ちょっと待って、そもそも、どうやって、そんなシチュエーションを考えるの?
という疑問にたどり着きますね。
【ポイント、その5】 不思議な言葉は、元の二つの言葉に分割します。
「トイレがない」だけ、「京都」だけ、なら、シチュエーションは浮かびますよね。
それぞれ、別々に、連想して思いつくことを列挙していきます。
それも、できるだけたくさんです。
その中で、組み合わせられそうなものを探すというわけです。
京都 → 旅行、観光
トイレ → その場を抜け出すための口実
そして、合成!
めでたし、めでたし。
・・・なら、良いのですけれど。
もしも、上手く合成できなかったらどうするのか?
お題の、二つの言葉のうち、どちらか、もしくは、両方を、別の単語に交換しても良いのですけれど。
他の方法もあります。
お題『交際ステータス炎上』
仮に、人生をロールプレイングゲームに例えたら、今の僕のステータスには、きっと・・・
「すげーよ、お前、本当に玉砕するなんてな、身の程をわきまえなさい!だっけ?、盛大にやらかして、話題沸騰だぜ、本物の勇者の誕生だってな。」
やめて、僕のライフはもうゼロよ。
ステータス → RPG と連想して、その後は、ステータスと言う単語を置き去りにして、RPGから連想されることを主体に、お話を進めてしまいます。
元のお題の言葉は、一瞬でも使われていれば、OKです。
後は、多少つながりのある別の言葉と合成して、お話を作ってしまいます。
さて、ここまでは、お題をクリアーすることに、主眼を置いてきましたが、それは、シチュエーションが整えられたにすぎません。
厳密には、ショートショートの落ちが出来たわけではありません。
お題は、クリアー出来たけれど、落ちは、また別にいる、ということになると、難易度が上がります。
そこで。
【ポイント、その6】 構成をうまくいじって、ショートショートのラストに、お題のクリアーの瞬間を持ってきます。
お題『いびきがじゃらん』
「あんた、どれだけ私とのお出かけを楽しみにしてるの。」
「そ、そんなことないもん。」
「寝言でまで、じゃらん、とか言ってたよ。」
「寝言って、ちがうもん、それは、いびきだもん!」
こんな感じです。
ただ、必ずしも、ラストに使えるとは限りません。
そんなときは、どうするのか?
【ポイント、その7】 落ちはあきらめて、お題のクリアーだけに全力を注ぎます。
小説には、必ずしも、落ちが必要なわけではありません。
山場があり、静かに着地して、終わる、というのも、一般的な小説の流れです。
こちらを採用します。
三題噺の山場は、お題をクリアーした瞬間ですね。
お題『行列つまようじ』
「うわっ、また負けた!」
「もーお母さん、強すぎるよ。」
「あら、そうかしら。」
なんて言いつつも、しっかり、新たな爪楊枝を並べる。
うふふ。
夏休みの間は、洗い物をしなくて済みそうね。
子供たちが、楽し気にカードを並べている。
もちろん、不思議な言葉を分割せずとも、そのままで落ちが作れれば、それでもかまいません。
『絶滅したリア充』
23日 友達とクリスマスパーティ。
26日 バイト先で、クリスマス兼打ち上げ。
27日 帰省して、家族と少し遅めのクリスマス。
元旦 リア充は爆発した。
最後に、なかなか作れないのですけれど、きちんと落ちのあるショートショートを書く方法を説明します。
ダブルミーニングを使った話の作り方です。
「謎かけ」は、ご存知ですか?
○○とかけて、××ととく、その心は?
どちらも、△△でしょう。
って言う奴です。
二つに分割した、片方を、○○に、もう片方を、××にして、謎かけを作ることが出来たら、それは、ショートショートにすることが出来ます。
『人間ドックのボーナス』
「お父さん、人間ドックのほうはどうだったの?」
「ボーナスみたいなものだって言われたよ。」
太鼓腹をさすりながら、父が答えた。
「なにそれ、良いの、悪いの?」
「お医者さんが言うには。」
「うん。」
「少しは、あるかないか、だってさ。」
まとめ。
最初のお題で、面白い言葉が作れるかどうかが重要ですね。
私は、全部、人が用意したお題で話を作っただけですけれど、お題をクリアーするだけで、ショートショートが成立するかどうかは、お題の面白さと難易度が関係してきます。
これと言った、落ちのネタが無いときにも、お題をクリアーするだけでショートショートが作れるということで、一応、役に立つかもしれません。
一番のポイントは、タイトルに、”お題”と明記することですね。