第1話 不謹慎極まりないスローガン『働かざるして喰っていこう』を 掲げ、私の旅の始まりです。(2)
時間はほんの少し遡ります。スタッフ全員が希望を持ってネットカフェ経営を少なからず楽しめていた時間まで・・・
街の一角にネットカフェをオープンしてひと月程が経っていました。要約カフェの運営が落ち着き出したその時期。私は当初からの計画通りアパートを借りる準備を初めました。
上司のKさんの奥さん(彼女は、お察しの通りフィリピン人です。件の地であるジェネラルサントス出身)の実家での窮屈な居候生活に疲れ始めた頃でした。
物件は半日も待たずに決めてしまいました。所謂その物件が、呆れ返る程素晴らしかったのです。
絶海の孤島のような鄙びたこの港町に・・・
こんなリゾートチックな物件があるなんて・・・
(かなり近いイメージです)
その西洋館風なセンスに付いては、直ぐに納得ができました。
なぜならオーナーがオーストラリア人のNoah (ノア)さん。記憶力が乏しい私が、彼の名前を覚えている理由はNoah (ノア)の方舟のNoah 。
そして何より記憶に留める事が出来たのは、彼が半身麻痺の障害者
だったからです。
健常者だった頃アウトドアな暮らしを信条としていたノアさん。巨大なサンドバギーを駆って野山を駆け回っていたらしい。そんな出来事を私に、魅力あふれる笑顔で語ってくれた彼のフィリピン人の奥さん。彼女は更に語ります・・・ある日砂浜でバギーごと転倒し大怪我を負ったノアさん。松葉杖が欠かせない暮らしとなりました。
先ずは早急に必要な生活用品を買いそろえなければ・・・
問題は言葉です。タガログ語をまったく話せない私。これでは商店での交渉が成立しません。そこで思い付いたのは、ネットカフェに最近スタッフとして参加した女性。呼び名をジョイと言いました。日本に2年間の滞在経験を持つ日本語が達者な彼女に助けてもらおう。
その思い付きが後々私の流浪の旅のきっかけとなるのですが・・・
さて、
新居の間取りに付いて語りたいのです。素晴らしいの一言。日本ではあり得ない空間。感動の一言です。オーナーのノアさんが本物のアウトドアの感性の持ち主であるが故の空間です。ほぼ3畳程の寝室。そのエリアのみが、外界をモルタルで遮断された唯一の屋内空間。
それ以外は・・・
つまりはリビングやキッチンは外です。いわゆる屋外。風雨に晒された外界(とりあえず屋根は有ります)。
湿気と蚊の襲撃が半端ねぇなぁです。恐らくノアさん「実用的」と言うワードを知らない可能性が・・・!?
Noah (ノア)さんを描いてみました。当時、恐らく年齢は50代の後半。丸メガネと口ひげが似合いすぎな、笑顔が素晴らしい方でした。
<同作品をサイト「pixiv」でも同内容で掲載中>