新人女神は仕事初日で死亡
て
私は1年に1回開催される。国際女神試験への6回落ち、7回目にしてようやく念願かなって合格を果たした。
そして3ヶ月の女神研修の行い、本日から地球と言う星にある日本という国の一区画の担当を任された。
「えー、てすてす」
「・・・山田一郎さん。あなたは不幸にも死んでしまいましたが」
「・・・あなたは不幸にもお亡くなりになってしまいましたが」
「うーん、女神っぽさを出すにはやっぱりもうちょっと尊大なほうがいいのかしら?」
わたしは今、女神の初仕事として、転生の間にて死者の案内の練習をしている。
転生の間とはわたしが任された女神としての仕事であり、みんなが羨む花形事業。
死者の今までの善行や悪行を天秤にかけ、死後天国へ行くのか、地獄へ行くのか、はたまた転生をするのかを決定する。人間界で言う所の最高裁判官的なものである。それはみんなが羨む花形事業。(確認)
「あなたはお不幸にもお亡くなりになってしまいましてですわ・・・やっぱり普通にしよう」
わたしは女神としての初仕事を迎えるに辺り、わたしは練習に余念をかかさない。
~
「ふぅ、後30分くらいあるのよね?ちょっと休憩しましょうか」
まだ死者が来るまでに時間があるので、わたしは備え付けられた豪華絢爛なテーブルセットの椅子へと腰掛け、配布されたタッチパネル式の女神コンソールを取り出す。
「お茶のセットをっと、このお金も払わんでええってやっぱりすごいちゃね~、田舎じゃ考えられんもん」
タッチパネルを操作し、お茶を注文する。
「・・・ああ、いけない、いけない。訛ってちゃ女神としてふさわしくないわ。つい出ちゃうのよね。しっかりしないと!」
女神になって間もないわたしはつい方言が出てしまうが、女神として死者に舐められてはいけない。
注文したお茶セットは魔法のようにテーブルへと転送されてくる。早い。さすが1流女神企業。
お茶を嗜みながら、田舎じゃ味わったことの無い味に感動する。
死者を迎えるまで10分を過ぎていることを確認し、居住まいを正す。
「そろそろね・・・えーっと、マニュアルをもう一度読んでおこうかしら?ってマニュアルもデジタルなのよね」
最後の確認をするため、わたしは女神コンソールにてマニュアルを読むため、操作をする。
「えー、どれがマニュアルなのかしら?・・・こういう電子機器って初めてだから使い方がわからんちゃ。田舎じゃこげなもんありえんもんね~」
ピコピコとコンソールを動かしながら、四苦八苦をしてマニュアルを探す。
「うー、あっ!もうっ!どれがどれだかわからんようになったっちゃ!こんなもんうちようさわらん!でもマニュアルは確認しないと・・・」
一度画面が切り替わると何をやっていいかわからなくなるレベルの機械音痴。とりあえずと適当にボタンを押していく。
「・・・あっ、これかな?」
適当に意味のわからないボタンを押していくと、なんだか赤色のボタンが見つけた。女神英語で書かれた内容にちょっと戸惑いながらも、しかし女神TOEIC500点を誇るわたしはなんとか翻訳しながら意味を理解していく。
「えーっと、これをおしたら・・・なんやようわからんもん。とりあえず押してみるっちゃ」
女神TOEIC500点では太刀打ちができなかった。さすが本場の女神英語。
ピッと音を出し画面が切り替わり、なにやら膨大な女神英語が書かれた画面に切り替わる。適当にスクロールしたあとまた決定ボタンがあったのでそれも適当に押してみる。
「マニュアル出すのにも一苦労っちゃ、はやく慣れんと」
そうやってコンソールを操作していたら、急に当たりに魔方陣らしきものが展開されていく。
「えっ?えっ!?な、なにこれ!?」
緊急転生装置が起動されました。緊急転生装置が起動されました。対象である死者を転生させます。
周囲に展開された魔方陣は光を放ち、けたたまし地鳴りを出しながら消えていった。
「・・・ど、どういうことっちゃ!?な、なにがぁおきたやぁ!?」
先ほどの喧騒から急に静まりかえった現場に騒然としながら、わたしはもしかして結構やばいことをしてしまったのではと急にあせりだす。
「な、なんのボタンなんやぁ!こ、これぇ!な、なんあまずいことしてしもたっちゃか!?」
額に汗を書きながらコンソールに出ていた注意文を読もうと試みるが、いかんせん女神TOEIC500点では太刀打ちができない。
ちなみに女神TOEICは一問50点の最高点は9900点である。
「おーい、様子見に来たよー」
「ひぐぁっ!」
「どうしたの!?大丈夫!?」
「だ、大丈夫でありますっ!な、なにも異常はありませんっ!」
「お、おう、うちの職場ってそんな軍隊みたいじゃないからもうちょっとリラックスしてね?てかそんなしゃべり方だっけ?」
この先輩女神はわたしの研修をしてくれた方で、結構面倒見もいい、この日本の区画のほとんどを任されている偉大な先輩なのです。
以前からちょくちょくわたしを気にかけてくれていて、今もわたしの初仕事が心配で見に来てくれたのだろう。ただ今来られるのは非常にまずい。
「ていうか大丈夫?すごい汗よ?」
「だ、大丈夫・・・おえッ!」
「えずいてるじゃない!体調でも悪いの!?」
「い、いえっ!そ、そうだ!」
わたしは先輩女神に先ほどのコンソールを見せてみた。先輩は女神英語がペラペラなのだ。研修中しょっちゅう自慢してきた。うざかった。
「こ、ここここここの文章、読めますか?」
「ん?えーっとこれは・・・」
先輩が翻訳してる間、わたしはさっきの出来事に思いをはせる。あきらかに異常な光景だったが、もしかしたらただの宴会芸用のアプリだったのかもしれない。
忘年会かなんかで一発芸をするようなしょうもないアプリが世の中にはごまんとあると聞いたことがある。そうであれ!
「これは・・・もしかしてこれ押したの?」
「い、いえっ!た、たまたま画面に現れたので!先輩に聞こうと思ってそのままにしてました!」
「そう、ならよかった。これは死者を強制転生させる機能で。普通じゃ絶対に押すことはないやつね。」
「そ、そうなんですか!絶対にお、押さないんですかっ!?」
「ええ。そうね。もし押してたら女神がクビになる所じゃ済まないでしょうね。死者の強制転送なんて最高女神様くらいしか権限のないものだし。どうして新人女神の端末にこんなのがついてるのか不思議なんだけれど、後で違う端末を用意するようにお願いしておくわね?とりあえず今はこれを使って」
そこからの喪失感はすさまじいものだ。先輩の言葉が全て耳に入らない。
「そういえばもうすぐ死者がくるみたいね。わたしは行くから頑張ってね?」
「は、はぃ・・・」
すさまじい喪失感。動機息切れ。死の恐怖。
な、なんとかしなくてはッ!なんとかしなくてはッ!わたしの未来があぶないッ!