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明治怪談  作者: 石田倫理
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第一話 消える乗客

「明治怪談」という実話系創作怪談コンテンツを「小説家になろう」に投稿するにあたり、まずは内容についてのご説明を読者の皆様へ致したく思い、筆を執ります。

 「明治怪談」というコンテンツは名の通り、「明治」にまつわる怪談を投稿するものとなります。明治時代に人々の間で語られた怪談や、明治時代発祥と思われる怪談、明治の文豪が書いた怪談小説など、また作者自身が大ファンである、愛知県の犬山市にある「博物館明治村」にまつわる怪談まで射程を広げ、短編集という形式をとって投稿を行っていきます。

1話1話の長さも短めで、読みやすい内容を心がけて投稿して参ります。多くの方にご覧いただければ幸いでございます。

それでは「明治怪談」をお楽しみくださいませ。


第一夜

消える乗客


「ある日の深夜、タクシー運転手が女性の乗客を乗せた。乗客は目的地だけ告げると、タクシー運転手の問いかけにも答えず、俯き、一言も話さなかった。不審に思いつつも乗客を乗せ目的地まで向かうタクシー運転手。目的地周辺になり、ふとバックミラーを見て乗客を確認しようとしたら、乗客は跡形もなく消えていたという」


現代でもよく語られる怪談のひとつである「消える乗客」の話。いろいろ派生型があり、目的地の場所が東京の青山霊園などの墓地であることもある。海外でも「消えるヒッチハイカー」という名前でこのような話があり、こちらは「都市伝説」の先駆けとなった話として有名である。

この話に似た怪談が明治12年4月25日の東京曙新聞で取り上げられている。


「雨の夜、東京麻布の人力車の車夫が、「狸穴」まで乗せてくれと女性に頼まれた。車夫は雨で夜分遅くの時間であったため、一度は断るが、いくらでもお金は払う、と女性がいい、また女性が美人であったこともあり、下心から人力車に乗せることにした。「狸穴」の近くの坂まで来ると女性は「もうここでよい」といい、車夫が料金を請求しようと後ろを振り向くと女性はすでに消えていたという」


現代に伝わる「消える乗客」の話の原型が明治時代にすでにあったことがわかる話である。ただ現代の話と違うのは、女性が「どのような存在であるか」という点である。現代の「消える乗客」の話では、乗客の女性は幽霊として描かれることが多いが、明治時代の「消える乗客」の話では、「狸穴」という地名から、女性の正体が狐狸の類であることがうかがえる。明治以前から幽霊画などあり、霊魂、幽霊などの概念は広く知れ渡っているものかと思われるが、明治時時代の「消える乗客」の話では乗客は幽霊として登場していないのである。

「人をたぶらかすのは狐狸の類」。そのような考えが明治時代の人には深く根付いていたのかもしれない。

明治時代から現代へと時代が変化するにつれ、産業技術は発展し、人力車はタクシーとなり、自然が少なくなり野生動物の住処が奪われ、なじみのなくなった狐狸は幽霊へと変化した。だが生き残った狐狸の一部も文明に適応し、今日も人や幽霊に紛れてにタクシーに乗っているのかもしれない。


参考文献:明治妖怪新聞 湯本豪一編 柏書房株式会社


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