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ルームメイト


 純白と別れた陽菜は早足で寮の廊下を駆け抜けた。たった数十メートルがもどかしい。どんな子だろう?何人だろう?ああでも、私は人見知りだからあまり打ち解けられないかも。はやる気持ちを抑えて301とかかれたプレート前にたつ。一度大きく深呼吸をしてから気合いを入れ、トントン、とノックをすると、カチャリと音がして扉が開かれる。

30センチほど開いた扉からは、艶のある黒髪と紅玉、そして眠たげな緑青の瞳が覗く。

 

「…陽菜?」

「憂季ちゃん!」

 

 驚くことに、ルームメイトは義妹…憂季であった。憂季も大きく目を見開き勢いよく扉を開ける。促されるままに入ると、そこは既に二人の部屋になっていた。

 靴を脱ぐとかわいらしい桃色の玄関マットが引かれ、ウサギ耳のついたスリッパがこちらを向いている。よくよく見れば憂季の足元にも猫耳スリッパがおさまっていた。部谷の床には憂季が計ったのかきっちり半分で段ボールとラグが引かれており、壁際の勉強机にはお気に入りのくまさんぬいぐるみ―名前はめんつゆ―が鎮座、木製の二段ベッドには元々家で使っていた桜柄の布団―憂季と色違い―がしかれている。

 おおお…と感動を露にする陽菜をみて嬉しそうにはにかんだ憂季はえっへんと自慢げに―ない―胸を張る。

 

「見覚えのある段ボールばかりだったからわかった。私と相部屋なのは陽菜だって。」

「そっか、荷詰めしてくれたの憂季ちゃんだもんね。それで準備してくれてたの?ありがとう!」

「うん、頑張った…。」

「えらいね、よしよし。」

「ん…これくらい当然。」

 

 頬を染めて上目遣いにチラチラと陽菜を見る憂季をなでくりまわす。もう…といいながらも嬉しそうにすり寄るところがまた愛らしい。先程の純白を思い出して、これからの予定も思い出した。

 時計を確認して鞄をベッドの上に置く。それから身に付けていたブレストプレートを外して壁にかける。憂季のブレストプレートの隣には家から持ってきた刀が一つ置いてあり、それらを横目に段ボールをガサガサとあさって部屋着を探し出してから、憂季に予定を伝えていないことを思い出した。

 

「憂季ちゃん、ご飯とかの予定ある?」

「特にない。」

「それじゃあ私の班の人たちと一緒に食べない?お友だちもできたの。あ、でも憂季ちゃんも班の人と食べたりする?」

 

 陽菜の言葉に憂季は眉をはばめる。そう言えば班決めのときに、先輩がいるのに一年でリーダーだと反感を買うことがあると言っていた。それを気にしているのだろうか?それとも…。

 

「私は別に…班員なんて、どうでもいい。私はただ…。」

「そんなこと言わないであげなよ憂季ちゃん…チームワークは大切だよ?」

「わかってる。不必要な馴れ合いは嫌いなだけ。」

「じゃあ私たちとも食べない?」

「…食べる。」

「よかった!じゃあ憂季ちゃんも部屋着に着替えて、19時に食堂に行こうね。」

「うん…。」

 

 憂季は複雑そうな顔をしながら反対の段ボールを漁る。陽菜は適当にTシャツ、スカートと薄手のパーカーを見繕って着替えると、また荷ほどきを始めた憂季に倣って自分の荷物に手をつけた。

 

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