表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日から悪魔(ルシファー)  作者: 流石挿入画
8/23

今日から悪魔(ルシファー)第七章

よろしくお願いします

 一時限目の体育の授業。

 飽きもせずバスケットボール。

 

 いまだに何が面白いのか解らない球技。

 いや、よくよく考えれば元々運動神経ゼロできた人生だからかスポーツ全般を楽しいと感じたことが無い。

 

 対面するのはバスケ部のエース。

 今や地味に運動神経を評価されてしまったせいか体育の授業ではこうしてライバル心を燃やされることも珍しくなくなった。

 

 鴇矢としては嬉しいような嬉しくないような気持ち。

 今となってしまえば相手を抜くのは簡単だ。

 だが抜いてしまうのはまずい。非常にまずい。

 

 ふと隣を見ると壁に寄り添うように座っている白河がこちらを睨みつけるように見ている。

 本人はその気は無いのかもしれないが間違いなく睨みつけている。監視状態だ。

 さてどう手を抜くか。

「天野本気でこいよ。お前結構やるみたいだけど俺はこれでもこの学校でエース張ってんだ。素人のお前なんかに負けるわけにはいかねえんだよ。お前と違って彼女に恥ずかしいとこ見せられないしな」

「彼女ね……」

 バスケ部のエース様だまあそりゃいるよねと大して驚かない。今となれば何故だか皮肉に感じない。いつだってこいつのことは抜ける。

 それだけの自信と力を持つ上に、こいつとは別世界で生きているという優越感がこいつの皮肉を遥かに勝っているからだ。

 

 だからするべきは一つ。

 

 チームメイトを落胆させないようにエース様に勝たせること。

 身体能力だけでなく動体視力も並みの人間とは比べ物にならない鴇矢には上手いこと相手にボールを取らせることだって容易い。

 白河の怒りを買うくらいならその方がマシだ。


 と思ったが彼女いる自慢はなんか癪に障ったので抜くことにした。


 プロのバスケット選手もビックリのキレだったかもしれない。それくらいのカットインでエースを抜いた鴇矢。言葉にもならない表情のエースは必死に食らいつこうとするが、

「悪いな、お前じゃ届かねえよ」

 鴇矢の悪い癖。

 いや、つまらないプライドが理屈の上を行った。

 軽く床を蹴る。

 それだけで一メートル以上飛躍した鴇矢は手の力を抜きつつゴールへとボールをダンクした。

 勢いでゴールが揺れる。

 自分でもできないようなダンクを目の前で見せられたエースは唖然とした表情を見せる。


「これが現実だ。悪いな俺とお前じゃ経験値が違うんだよ。くだらねえ。ほんとくだらねえよこんなもん。バスケなんざ俺からすりゃただの遊びってやつだ。本気出すのもアホらしいくらい退屈な運動。その程度にしか感じないんだわ。ほんと悪いな」

 白河の説教が待っていることも忘れてイカした台詞を吐いてしまう鴇矢。

 だが仕方ない。仕方ないだろう。

 先に煽ってきたのはあっちなのだから自分は悪くない。

 鴇矢はそう自分に言い聞かせる。

 ちなみにバスケ部のエースこと中村は同じクラスの生徒で、ちょくちょくムカついていたのでその後の授業でもついつい恥をかかせるような行動を取ってしまった。

 その度に視界の端で白河がひくついているのが見えたが中村を調子づかせるのはなんか気持ち的に癪に障ったので気にも留めずやってしまった。



「あんた死にたいの?」

 学校とも異空間内の中でよく見る笑顔ではなかった。

「血管浮き出てますよ」

 般若の顔を無理やり笑顔にしたような白河があまりに怖くて震えが襲う。

「そう? 怒りのあまり気づかなかったわ」

 現在ラグナロク支部ではなく校門を出て数分の場所にて異空間を発生させた白河に土下座させられているのはもちろん鴇矢。

「何度も言わせないで。脳みそ白子でできてんのかしら。一体何が詰まってるか見てみたいわ」

「多分脳みそです」

「だといいわね。もっともそうだとしてもインコの方がまだ利口そうだけど」

 

 呆れたといった様子であからさまな溜め息を吐く白河。

「あんたが下手に目立つようなことがあればユグドラシルから刺客が来ることだって当たり前のようにあるの。ましてやあの学校内には間違いなく天使の称号者や……そうね解放者がいるといってもいいの。いい加減理解しないと本当に勘づかれるって言ってるの。ったく、マモンの奴もまだ解放者の特定をできてないって状況なのに」

「仕方ないだろ。中村の奴が調子乗って喧嘩売ってくるから」

「そんなもんにいちいち乗るんじゃないわよって言ってんのよ殺すわよあんた」

「俺が死んだら困るんだろ」

「ええ困るわよ。だけど殺して新しいルシファーの転生者を探した方がいいんじゃないかと思えてきたところでもあるわ」

「それができないから俺を生かしてるんだろ」

「でなけりゃあんたなんてとっくに身捨ててるわ」

「ならさっさと魔術教えてくれよ。今日は簡易魔術だっけか。そんなもん無しにして上位魔術じゃなくて因果の扱い方教えてくれよ。固有能力。そこらの魔術なんぞよりそっち覚える方がよっぽど有能だろ」

 眉間にしわを寄せながら睨みつけてくる白河。

「簡単な魔力操作ができないようじゃ固有能力は使えないわ」

「意味が解らん」

「要するに理屈じゃ説明できないのよ。魔術の基本的な扱い方を理解していく内に自然と頭の中にイメージが湧いてくる感じね。魔力の扱いに慣れない内に使えるようなものじゃないの。私も空間を操る力を正確に認識して使用できるようになったのはかなり時間がかかったんだから。あんたみたいな肉体能力を抑えることもまともにできない馬鹿にできるもんじゃないのよ」

「できないんじゃない。しなかっただけだ」

「尚更性質が悪いじゃない」

「もう解ったよ。じゃあ魔術の使い方教えてくれ。約束だろ」

「……もういいわ。死んでほしいけどあんたには死んでもらっちゃ困るから教えるわ」

「なんか嫌な言い方だな」

「できるかどうかはともかくまず簡易魔術には呪文は必要ないと言ったのは覚えてるわよね」

「記憶の片隅に」

「その理由は意志や思念を魔力を使って伝えることによって影響を与えるからよ」

「解るようで解らんな」

「例えば相手の記憶を忘れさせて別の記憶を入れ替える催眠魔術は魔力を相手に伝えて情報操作するの」

 全く解らん。

「肉体強化は魔力を吸収して自信に伝えること。催眠魔術は魔力を吸収して対象の相手に伝えることって考えればいいわ」

「なんとなくだが解った」

 

 確かに肉体を高速で移動するとき魔力元素なるものを身体に伝えるというのは感覚で理解できているし相手に伝える方法さえ解れば容易いように思える。

「術式を詠唱もしくは術名に予め集約して放つ通常の魔術と違って、声や目線から魔力を伝達する技術。これが簡易魔術よ。とりあえずは基本の催眠魔術。それを私にかけてみなさい」

「え、お前効くのか?」

「効かないわ。ただ手応えは感じれるってとこかしら」

「なるほどそれじゃあやってみるか」

「因果の能力の扱い方は催眠の延長線上。イメージ、過程のイメージをを魔力で具現化させることなんだから」

「つまり因果の力を使うには催眠魔術をマスターしないとだめってことだな」

「…………まあ今はそれでいいんじゃないかしら」

「それじゃあさっそくコツを教えてくれ」

「気合はそこそこってとこかしら。いいわ。しっかり学びなさい」

 効果があるかは不明だがこれで魔術を使えるようになると思うと自然とやる気が湧く。

 肉体強化なんてのも飽きていたとこだから尚更だ。


 その後夜までその鍛練は続いた。

 ただ成果があったかといえば微妙なとこでもある。


ありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ