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今日から悪魔(ルシファー)  作者: 流石挿入画
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今日から悪魔(ルシファー)第六章

よろしくお願いします

 いつもの通りの厳しさを見せる白河のいつもの特訓を終えた平凡な次の日の朝。

 いつものように学校へと向かう鴇矢に後ろから声がかかる。


「おはよう天野くん」

「ああおはよう長瀬」


 長瀬実莉だ。


 クラスのヒロイン的存在を白河が来るまでは独占していた存在。鴇矢にとっては俗に言うクラスメイトというだけの関係だが家が近くの為たまにだが登校時間が重なり一緒に歩いて登校することがある。

 クラスのカーストは最下位。なのにこうして一緒に登校してくれる辺り彼女の人徳というものだろうか。

 感謝感激で、今では腐れ縁みたいなものだ。

 鴇矢が徒歩通学を止めない理由がこれでお解りだろう。全てはこの為なのだ。

 もっともそんな風に考えているのは鴇矢だけで長瀬は鴇矢のことをご近所のクラスメイトくらいにしか思っていないだろう。


 ちなみにだが白河同様にそこそこの美人である彼女に好意を向けている男子は少なくなく、今では白河勢と長瀬勢の勢力に分かれているといってもいいくらいだ。

 友人の一人である赤坂は一年の頃から彼女に片思いしている生粋の長瀬勢であり、こうして一緒に登校してきた日を見た時は大抵憎たらしいしかめっ面を向けてくる。

 赤坂がどう思おうが知ったことではない。

美少女クラスメイトと一緒に登校できるというステータスを誰かに奪われるなんて神様が許しても鴇矢は許さない。


 文句あっか?

 鴇矢はルシファーだ。あの大悪魔だ。

 神だろうが天使だろうが命令される謂われはない。

 文句があるならかかってこい。いつだって反逆してやる。あと三年後くらいにな。

 三年もあれば鴇矢は正真正銘のルシファーとして能力を行使できるようになっているだろう。

 そういえばサタンとルシファーは同一人物と聞いたことがあるが七大罪という形で二枠取られている辺りこの世界のサタンとルシファーは別人ということなのだろう。

 なんにせよ最強無敵。完全無欠の計画だ。

 因果を司る力、いまだにどんなものかもさっぱりだが、固有能力。白河のような特異な力を早く使ってみたいと心から思う。


「天野くんなんかニヤニヤしてない?」

「え、いや別に」

「あーひょっとして白河さんのこと考えていたいんでしょ」

 なぜそこで白河の名前が出てくるのかが解らない。

 まさか白河との関係を疑われたとか? いやそれとも単なる嫉妬かな。

 なんて考えるのは自惚れし過ぎだろうか。

 そう考える度につい頬が緩む。


「白河のことなんてちっとも考えてないよ。なんで急に」

「だって天野くん白河さんの隣の席なのに全然話とかしないじゃない。もしかしたら何か仲悪くなるようなことでもしたんじゃないかと思って」

「いや全然。むしろどうやって仲良くなろうかって悩んでるくらいだよ。隣なのに全然話せないし」

「白河さん人気だもんね。あの可愛さならみんな放っとかないもん」

 もん、がやけに可愛い。

「人気なら長瀬だって似たようなもんだろ」

「私? 全然だよ」

 まあ十中八九謙遜でそう言ってるんだろう。

 そのくらいの心理戦なら鴇矢にだってできる。


「あー忘れてた」

 突然どうした。

「今日日直だったの。大変どうしよう」

「急ぐしかないだろ」

「そうだね。それじゃあ先行くね」

「ああ」

 終わりか……。

 女子と楽しい登下校。これにて終了。

 もう少しだけ一緒に登校したかった。

 周りの連中のあの羨みの視線がいつも気持ちいいのだ。

 下種だと言われようとそうなんだからしょうがないだろう。

 日直か…………。長い沈黙の後鴇矢は人知れず嘆息を吐く。

 そんなもん忘れていたといえばいいのに律儀なことだ。

 鴇矢ならそうするが長瀬はそんな身勝手なやつではない。

 良い意味で真面目なのだ。



 学校に着くと既に白河が鴇矢の隣の自分の席に座っていた。

 いつもそうだ。

ご苦労なことだと思いつつ気にしてないそぶりで教室に入る。

普段鴇矢の知らないところで天使の称号者、あの白マントみたいな連中と戦っているのかもしれない。なのに毎日こうしてしっかりとやってくる。

 

 おそらく白河の場合は真面目というより鴇矢のボディーガードの意味があってのことだろう。

 そう考えると登下校はいいのだろうか。

 空間を司る力を持っているからどこにいても鴇矢の状況を把握しているのかもしれない。

 だとするとこっそり魔力で俺ツエエすることも難しくなる。

 全くもってつまらん教官だ。

「あらおはよう天野くん」

「ああおはよう白河さん」

 いつもの挨拶。白河と話すきっかけはほとんど無い。

 学校が終わればあの厳しい教官になる白河。

 それでも学校ではいつもの誰にでも人気の白河。

 このギャップが地味に楽しいというか嬉しい。自分しか知らないという優越感というやつかもしれない。

 

 席に着くと、

「おはよう天野昨日の数学の授業の宿題やってきた~?」

 谷崎がいつものボケた調子で言ってきた。

 この調子の時がどんな時かはもう知り尽くしてる。高校入学からの友達。一年ちょっとの付き合いだが他人を知るには十分過ぎる時間だと思う。

 おそらくやってきてなくて写させてくれということなのだろうが、

「悪いなやってきてない。五時限目だし昼休み使ってっやるわ」

「そっかーじゃあ終わったら写させてね」

「なんでやねん。ちったあ自分でやれよ」

「そうなんだけどねぇ~…………数学の岡本性格に疑問だと思うんだよ~」

 谷崎の性格としゃべり方にも疑問符がつくが。

「あ、白河さんおはよう。今日も綺麗だね」

 鴇矢から視線を外しあっさりとナンパまがいに挨拶する谷崎。

 正直そういう部分は凄いと素直に感心する。

「ありがとう谷崎くん」

 どうやら谷崎の名前は覚えているようだ。

 無理もないか。いつもなんだかんだで挨拶してくるような奴だからな谷崎は。

 白河の性格上面倒だが仮面を外すわけにもいかずに友人関係のカテゴリーに入れることになったのだろうと推測。


「そう言えば一限目体育だけど天野って最近調子良いよね」

「なんだよ急に」

「だってこの前のバレーでもバレー部もびっくりのスパイク決めちゃってたし」

 それを聞いた白河のギラリとした視線が突き刺さる。

「い、いやまぐれだって」

「まぐれであれはないでしょ。一メートル以上飛んでたんじゃない?」

「そ、そうか?」

 魔力を無意識に吸収するため自然と超人的な身体能力を発揮するようになってしまった鴇矢は運動神経ゼロから運動神経を抑える練習も最近行うようになってきたのだがこれがなかなかに難しいのである。

 軽く飛んだ感じのはずがバスケでは軽々とダンクをしてしまったり、卓球では信じられない反応速度を見せて返してしまったりといった感じ。

 前に白河があれは自分の普通の身体能力的なことを言っていたがどうにも嘘くさい。

あくまで無意識に魔力で強化されているだけなのではないだろうか。

 要するにそれくらい体の制御が難しいということだ。

 もしボケとツッコミでツッコミ役をやるとして相方の頭を叩いたら飛んでいきそうな、そんな感覚。

「部活に誘われたりとかないの?」

「そういや一昨日卓球部に誘われたな」

「返事は?」

「断ったに決まってるだろ」

 バスケやバレーなら華があるが卓球には個人的に華があるとは思えない。

 鴇矢はルシファーなのだ。

 白河曰く、サタンルシファーベルゼブブの三大悪魔は別格の存在らしい。

 そんな三大悪魔の一柱である鴇矢が卓球などに身を置いてる暇はない。

 今日も学校が終われば白河の特訓が待っている。

 そういえば肉体強化はそろそろで、次は簡易的な魔術を教えると昨日言っていた。

 簡易的な魔術。つまり詠唱不要で魔力を調整して放出することで行えるもののこと。

 催眠魔術なんてのがそれらしい。

 白河が前に言っていた位相のずらしなどが該当するらしい。


「天野くん運動得意なの?」

 唐突に白河が乾いた笑みでこちらに話しかけてきた。

 その眼にはこれ以上余計なことしたら殺すと言っているようにもみえたので、

「い、いや全然。たまたまだよ。勘違いされないように気をつけないとね」

 お茶を濁すように。シラをきるように。

 すると、

「そっかあ、うん、人気者になったら大変だしほどほどにね」

 怖い。その微笑がが怖い。やめてくれ。

「そんなこと言わずに頑張ろうよ~。今日も期待してるよ」

 余計なことを言うな谷崎。

 そんな視線を向けると察したのか察していないのか解らないが首を縦に一度だけ振ると、

「じゃあね~」

谷崎はさっさと自分の席へと戻っていった。

 さあホームルームの始まりだ。


ありがとうございます

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