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今日から悪魔(ルシファー)  作者: 流石挿入画
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今日から悪魔(ルシファー)第十五章

よろしくお願いします

 町中にある西洋の古い屋敷のような巨大な建物。周りの家々に比べて明らかに浮いている。一体どんな金持ちが住んでいるのかと疑問に思うそれが完成したのは三年前。巨大な建物の割に建築時間は非常に短く、周囲の人間も不信感や疑問を持っていた。

 ラグナロク北関東支部から遠く離れた場所にあるそれはユグドラシル北関東支部。

 所属する解放者は元は三名。しかし今は二名。理由はその内の一人はレリエルの死亡。

 解放者一人と大多数の称号者が死亡したことによってラグナロク支部並みに閑散とする建物。

 その中で男は苛立ちを表すように机に肘をつき部下の称号者たちを睨みつけていた。


「レリエルに続きサリエルも失敗。送り込んでいた称号者もほぼ全滅。こんなことを上にどう報告すればいい」


 数人の称号者たちは今にも力を振るいそうなほど苛立つその男に怯えるように身体を震わせ、口を開く者はいない。

「敵はルシファー、マモン、そして死にかけのレヴィアタン……。悪魔どもの称号者はいないとみえる。さて諸君、俺たちはこれからどうしたらいいと思う」

「れ、レヴィアタンの抹殺を先に行うべきかと」

「そうだな。だがマモンが守っていたらどうする? ラグナロク支部の結界を破ろうとすれば必ず気づかれるだろう。当然マモンの分身が身を潜めているはずだ。迂闊には手を出せんさ」

「ぜ、全員でかかれば」

「それだけの戦力がこちらにまだ残っていると思っているのかな君は。ここに派遣された称号者はほぼ全滅状態。レリエルの死亡は確認されていないが空間消滅によって異空間で消滅したと判断している。残っているサリエルもほとんど力を行使できないまでに疲弊している。こんな…………こんなふざけたことがあるかあああ!!」

 力任せに机を叩き壊す男。

「あ、アズリエル様落ち着きください」

「これが落ち着いてなどいられるかああ。このままおめおめと本部に帰ってみろ。俺は間違いなく殺される。解っているだろうが貴様らの足りない頭でもなあ!!」

「それは……」

「せめてルシファーの始末という大義名分。これが重要だ」

 出現したルシファー。それを始末したとなればレヴィアタンを始末する以上の功績だ。

「もちろんルシファーの始末は考えております。ルシファーはまだ力を完全に発揮できていないとの報告があります」

「だが相手はあのルシファーだ。身体能力だけでも貴様ら称号者など勝負にもならんだろう。アズリエルの解放者の俺とて勝てるかは定かではない」

「それは……」

 戸惑いの色を隠せない称号者の一人は言葉を詰まらせる。

「命令だ。サリエル回復次第ルシファーだけでも始末する。サリエルには戦える状態になったらすぐに報告するように言うんだ。俺とサリエルでルシファーだけでも始末する。そうすれば本部から新たに増援も送ってもらえるはず」

「確かに」

「レヴィアタンはその後でいい。サリエルの復活後未覚醒のルシファーを殺す。決定事項だ」

「レヴィアタンの回復力は未知数です。サリエル様の回復が追い付くかどうか」

「はぁああ?」

「い、いえ、解りました。アズリエル様の意見をサリエル様に伝えておきます」

「解ったなら行けクソ蟲どもが」

「は、はい」

 我先と逃げるように部屋から退室する称号者たちを無視し外に目を向ける。

「ふざけるなよ……ようやく北関東の統括者の地位まで上り詰めたんだ。こんなところで落ちぶれてたまるか。必ず殺してやる……ルシファー」



「だ、そうです。伝えるのもめんどくさい」

 男子トイレの中。長瀬に注意を張りつつ位相をずらした空間。

「だ、そうですじゃねーよ」

 単調な言葉でアズリエルの言葉を伝えるマモンの模造品である谷崎。

 話を聞いていた中にマモンの分身がいてそれを本体が受信し、そのまま鴇矢に伝えた状態だ。

「どどどどどうすんだよ。完全に狙われてんじゃねえか俺」

「自業自得でしょう。レヴィアタンがいないことをいいことに能力を使いまくってたんですから。でもいいじゃないですかほらお友達も沢山できたみたいですし。今まではわたしと赤坂以外に友達がおらず、女友達ゼロの運動神経ゼロの知能ゼロの顔面偏差値普通の底辺男子高校生だったんですから。あと少しの命ですが頑張って生きてください」

「ちょっとお前見捨てる気満々じゃねえか」

「できる限りのことはしますよ、めんどくさいですが。ただ模造品といっても精度が高いものほど魔力と維持が大変なんですよ。この谷崎とラグナロク支部でレヴィアタンの防衛に当てている二人はかなり精度を上げていますから維持コストが高いんです」

「いや知らんがな」

「常に存在を維持し続けるのは魔力の消費と体力の消費が激しいんですよ。それも本物の力に近付ければ近付けるほど維持コストも高くなる。この谷崎だってコストの三十パーセントもの魔力で生成してるんです。めんどくさいけど特別品なんですよ。そこんとこ解ってますか」

「なんだマモンってやっぱ大したことないんだな」

 ピクリと目元が吊り上がる谷崎。

「頭に来る言い方ですが三十パーセントの力だけでも並みの称号者なら蹴散らせるんですよ。もちろん解放状態の天使を相手にすることもできる。七大罪を甘く見過ぎです」

「その言い方だと解放者が弱く思えてくるな」

「強いですよ。それ以上にマモンの私の強さが別格なだけです」

 妙に自分の力を誇示してくるマモンに渋い面を返す鴇矢。

「やっぱ固有能力って特別なんだな……」

「そうですね。その特別さゆえに七大罪などと天界側が勝手に名付けているだけですし。」

「それだけ天使にとって固有能力を持った悪魔は怖いってことか」

「そういうことです。まあとにかくサリエルが力を回復させる前になんとか手を打つ必要があるということです。めんどくさいですが」

「今の内に倒しちまえばいいんじゃね」

「レヴィアタンの守りを減らすわけにもいきませんし、この分身は本体の三十パーセントの力しか持っていないと言ったでしょうが。何を聞いていたんですかあなたは」

「三十パーセントでも戦えるって言ってたじゃねえか」

「ほんとにめんどくさい人ですね」

「何がだよ」

「三十パーセントの力でサリエルを倒せるか解らないし何よりまだ身ばれすることは避けたいんですよ。わざわざ相手にばれるよりもレヴィアタンの回復を待ってから確実に倒した方がいいというわけです」

「その前に俺が殺されたら」

「そこは自業自得と言ったはずです。もちろんできる限り守るとも言いました。あなたにできることは今まで通りの生活を行いつつ固有能力や身体能力を今以上に使えるようになる必要があること」

「今以上ね……」

 ならそもそもこんな煽ること教えないでほしいと鴇矢は思う。

「因果を操る力。結果を引き起こす為に、結果の原因を把握しなくては魔力による補完ができない。つまり瞬時に考える頭の回転力が必須になってきます。それに……胸を突き刺されたくらいで意識が遠のくようでは話にならないですから、その辺はこれから鍛えていきましょう」


 そう言うとずれた位相を元に戻した谷崎。

 何やら白河以上にスパルタになりそうな予感がしてくる。

「身体能力の強化か」

 長瀬に手刀で突き刺されただけで死ぬかと思うくらい痛かったし実際死ぬかと思った。

 攻撃されることに対する耐性。これもこれから必要となってくる項目なのだろう。

 白河が頼りにならず、マモンも模造品のポンコツ。

 ならば自分が強くならなければ自分の身を守ることもできない。


「あ、天野くん授業始まるよ」

 トイレを出ると友達となった女子生徒に話しかけられた。

適当に話を合わせながら教室へと向かっていく。女子生徒とだ。昔では考えられないが今ではこれが普通。

やるしかない。

このリア充生活を満喫する為にもやってやると鴇矢は心に誓うのであった。



 解ってしまう。どんな難問も能力を使うことで理解できてしまう。谷崎の言っていた通り瞬発力は無いができないことはないと思えるくらい物事を自在に行える。

 クソ退屈だった日常。カースト最下位で泥をすする生活。そんなもんは昔の日常で鴇矢には無関係なものとなっていた。

 赤坂とはいつも通り。谷崎とも表面上はいつも通りを演出して、それ以外の人間とも普通に接する。リア充の天野鴇矢として。

 しかしここで問題が浮上した。

 リア充ともなれば彼女が必要だ。当然のことだろう。彼女のいないリア充などリア充の皮を被った陰キャラだ。

 だがそこでさらに問題が浮上する。誰を彼女にするか、ということだ。

 最有力候補であった長瀬はサリエルという完全な敵。表面上は今まで通りの付き合いをしているが回復次第鴇矢は無数の天使の称号者に命を狙われるということになる。

 この時点で鴇矢に関わると不幸になるということなど鴇矢の頭にはなくとりあえず彼女が欲しいという感情が渦巻いていた。

 


あろがとうございました

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